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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 588 「ゼロVS魔女」

魔女は苦しみながら一人の青年を目に焼き付けていた。





特別な力は何も持っておらず、その身体能力は人間としての到達点までも達していない。神や魔族と比べればまるでその辺りの石ころのような存在だ。だが、その青年の視線に、魔女は確かに恐怖していた。




(なんだというのだ……この男から溢れる負の怨念は。魔の原点であるこの私をも震え上がらせるほどの邪悪な気配は。本当にただの人間から発せられる気配なのか!?)




ゼロは無言で発砲する。周りに神々やマリンが居ることなど一切気にしていない。



ゼロの弾は魔女の体に命中し、突き抜ける。ほぼほぼ肉体を保てなくなっている魔女に対してそのような物理的極まりない攻撃は意味をなさないが、それでも魔女は確かな痛みを感じた。







「あの男は……」



マリンはゼロを見つめながら呟く。そしてゼロの体にまとわり付いて離れない殺気に着目する。




「マリン、ゲートから現れたあの青年、何度か見たことがあるが……なぜ彼の攻撃が魔女に効いている?」



アスラが不思議そうに尋ねる。



「いや、実際には母にダメージはないだろう。母のあの肉体にダメージを与えることは不可能だ。肉体にはな」



意味深な答えを告げるマリン。


ハデスもゼロの行動を見つめている。


「あの男が魔女に対して何らかの適正を持っているのなら様子を見るべきだ。現にこちらに打つ手は無いのだからな」


ルインやモルガナもその意見に賛成する。そもそもモルガナは魔女の力を抑え込めるのに必死でそれどころではない。



「何でも良いからなんとかしてぇ!」








ゼロは次々に弾丸を撃ち込んでいく。弾は直ぐに底をつき、今度はナイフ片手に魔女へと突っ込んでいく。



(ぐふっ、確かに強烈な殺気だが、奴とて人間には変わりない。その魂、存分にくらってやるわ)




魔女はなんとか意識を保ちながら、虎視眈々とゼロの魂を狙う。




魔女が人間から魂を抜く方法は実に簡単だ。ただ、触れれば良い。そうするだけで簡単にその命を奪える。


(極上の人間……この私にとって負の力はこの上ないわ。その上身動きがとれない私のために自ら乗り込んでくるとはな。本当に人間とはおろかな生きものよ!)



ぐわっとゼロに手を伸ばす魔女。怒りに支配されているゼロには避けるという選択肢は無い。伸ばしてくる手を切り刻もうとナイフを構える。







「やあ、随分と楽しそうなことをしているね。俺も混ぜてくれないか?」




ゼロの横を何かが通りすぎる。それは魔女がゼロに触れる前に魔女の体を貫き、駆け巡る。



「hzbbbbbbbbbb!!」



魔女の悲鳴が水の中で響き渡る。攻撃の正体を確かめようと振り返るゼロ。そこに居たのは巨大な剣を持ったワルターの姿だった。



「もう起きたのか」

「やあ、ゼロ。それにしてもすごいねこの剣」


ワルターは身の丈以上の剣を高々と掲げながら歓喜する。その後ろではアスラたちが信じられないといった様子でそれを見つめている。



「以前の立ち振舞いから雷の力に適正があるとは思っていたが、まさかここまでとはな」


ハデスがワルターとの戦いを思い出しながら呟く。


「ああ、雷電丸を使いこなせるとは思っていなかった」



アスラの表情にも嬉しい動揺が見える。




スサノオ亡き後、神々は七聖剣である雷電丸の継承者を探していた。神の力を操れる人間などそうそう居らず、現にスサノオは自らその剣を使っていた。だが、ついに現れたのだ。神の力を発揮できる人間が。



水の檻に閉じ込められた魔女の体をスサノオの雷が駆け巡る。体の隅々まで侵食され、近付くだけで感電しそうだ。ゼロもやむなく魔女から距離をとり、急いで倒れているレイアのもとに戻る。




「心臓が止まっている……」


ゼロはレイアの胸に耳を押しあてながら呟く。


「おい神! 以前俺とレイアを治療してくれたあの女性はどこだ!?」


アスラに向かって叫びかけるゼロ。



「ルナのことか。ここへ向かっている最中だ。だが、いくらルナとて死人を蘇らせる力は無い」

「レイアは死んでなどいない!」




ゼロはレイアの口に自らの口を押しあて、必死に空気を送り込む。



(死ぬな、死ぬな、死なないでくれ! 俺を置いていくな!)



迫り来る恐怖と戦いながら胸に衝撃を与えつつ、人工呼吸を続けるゼロ。しかし、いくら続けてもあの笑顔は戻ってこない。レイアの体は冷たく、心の芯まで凍っているようだ。そして、ゼロの心もだんだんと堕ちていく。




魔女は体が分離しながらも、まだその命を残していた。ワルターの攻撃を受けながらも、その力を吸収していたのだ。


「しぶといね。どうも」


ワルターは雷電丸を抱えながら魔女に向かって突っ込むも、途中で転んでしまう。



「わっ」



いくら雷電丸の電撃を使いこなせたとしても、その大きさにまで対応できたわけではない。まして振り回して攻撃するなどしばらくは無理だろう。




「よくやった人間。ここからは俺たちに任せろ」



アスラが転ぶワルターに手をさしのべながら告げる。その手をとり、空を見上げるワルター。そこには四つの影があった。




「ごめんアスラ。遅くなって」

「ふむ、あれが魔女かえ?」

「2000年前とは少々形が異なっているようだが」

「あれはスサノオの雷電丸……そうか、継承者を見つけたか」



ネス、ルナ、ミカエル、ホルス。ここに再び神が集結した。




最終決戦が始まる。




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