表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
601/621

episode 584 「黒体の恐怖」

「下らない。実に下らない芸当だ。2000年前の方がまだましなくらいだ」



当然のように復活を果たした魔女がルインとハデスとマリンに対して口を開く。




「少し緊張感が足りないな。そこで懐かしいものを見せてやる」




魔女は体の内側からあるものを取り出す。それを目にしたとたん、神々の表情が大きく変化する。誰もが息を飲み、その物体を見つめている。2000年ぶりに目にしたそれは、あの時と何も変わっていない。禍々しく、どす黒い。




「黒体……」




ハデスが言葉を漏らす。





「そう、黒体だ。お前を、お前たちを導いた私の可愛い眷属さ」





そう言いながら魔女は黒体をいくつも生み出す。一つ二つではない。数えきれないほどの黒体が魔女の周りに出現し、辺りを埋め尽くしている。


「感動の再開だろう? 遠慮せずにたっぷりと戯れるがいい」



それらを一斉に飛ばす魔女。あの物体の恐ろしさは誰もが理解している。




「ど、どどどうするのアスラ! あのボール当たったら大変だよ!」


魔女の魔力について一番理解しているモルガナは、黒体が放つ恐ろしいエネルギーに身震いしながらアスラの裾を引っ張る。


アスラもあの時を鮮明に思い出していた。あれに触れたハデスがどうなったのかを。そして、その当人であるハデスは身震いしていた。恐れていたわけではない、嬉しくてしょうがないのだ。魔女の力を正面から打ち崩せる力を手に入れ、それを発揮できるのだから。




「神ども、あれは母の力の塊だ。私に対してはノーダメージだが、お前たちがまともに食らえば精神が崩壊する」

「わかっている。何度も食らってきたからな」



ハデスは一歩前に出る。



「だが、母があれを出すということは、多少なりとも焦っている証拠だな。ストックが尽きかけているのかもしれない」



マリンの推測の通り、魔女の限界は見えてきた。無限とも思える魔女のエネルギーだが、神々の攻撃によって少しずつだが削ってきている。魔女としては早いところ誰かを戦闘不能にし、エネルギーの充電を行いたいところだ。




「モルガナ、力はあとどのくらい残っている?」

「大きな魔術はもう無理……小さいのならあと数発……」



アスラの問いかけに答えるモルガナ。正直小さな魔術でさえ打つ気力は残っていなかったが、ここで出来ないとは言えない。




「そうか、なら俺の腕を回復してくれ」


アスラは左腕をモルガナに差し出す。


「で、でも、私回復は得意じゃ……それに回復したとしてもまた魔女に操られちゃうんじゃ」

「その心配はない」



首をかしげるモルガナ。差し出されたアスラの腕からは魔女の紋章がきれいさっぱりなくなっていた。


「どうやらこちらに力を回している余裕は無くなったらしい」

「そうなんだ!……でも期待はしないでね」



モルガナは慣れない手つきでアスラの左腕に触れ、そして力を込める。




「ぐ、ああ!」

「アスラ!」





アスラの左腕を激痛が襲う。



「ご、ごめん、私が下手くそだから……」

「いや、痛みが戻ったということは」



アスラは左手を握りしめる。とてもきれいに治ったとは言えないが、それでも動く。



「助かった、行ってくる」




その左手でモルガナの頭を撫で、魔女のもとに駆けるアスラ。





「ルイン、バトンタッチだ」

「ああ、助かるよ。このままじゃ味方に殺されちまう……」



うらみったらしくハデスを睨み付け、舌を突き出すルイン。マリンの力によってモルガナのそばまで飛ばされる。




「マリン、俺たち三人でかかった場合の勝率は?」


期待せずにマリンに尋ねるアスラ。



「限りなくゼロに近いと言ったらお前は諦めるか?」



マリンの返答に拳を握りしめるアスラ。





「いいや、ゼロでないのなら戦える」



アスラとハデスが魔女に向かって突っ込む。魔女まで到達するのには百近い黒体を切り抜ける必要があり、それらすべてを避けきることは不可能だ。



「正面突破でもしてみるか? お前たち人間の命ではいくら有っても足りんぞ?」



魔女は余裕を保っていた。まさかアスラとハデスが黒体をきり抜けられるとは思ってもいなかったからだ。



しかし、二人は黒体を突破した。避けたわけではない、魔女の言葉の通り、正面からぶつかって行ったのだ。




「うおぉぉぉぉぉ!!」


「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」




雄叫びを上げながら次々と黒体を破壊していく二人。さすがの魔女も驚きが隠せない。残された魔力をフルに使い、巨大な黒体を生み出す。




「正直驚いたが、これを越えることはできまい……虚空の彼方へと消えるがいい!」



直径100メートルはありそうな巨大な黒体を前に、二人は足を止める。



「ハデス、いけそうか?」

「無理だな。破壊はできても生き残れるとは思えん」



動きを止めた二人を見て、魔女は勝利を確信する。




「クハハ! 死ねぇぇぇい!!」




しかし、二人の顔には敗北の二文字は浮かんでいない。その二人の背中を見ながらマリンはやれやれと首を横に振る。




「もはや顎ですら使わんとはな。いいだろう、この私の力、お前たちに預けよう」



ゲートを開くマリン。小さなゲートだったが、それは黒体を飲み込み、どこかへと吹き飛ばす。



最大の攻撃をマリンに無効化され、力も大きく削られてしまった魔女は怒りを露にする。





「おのれぇぇぇ! マリィィィィィン!!」

「すまないな母よ。私はあなたが嫌いでね」




魔女は最後の力を振り絞り、巨大化する。




「この星などもう要らぬわ! もろとも破壊し尽くしてくれる!!」




巨大化した魔女の足が大地を蹴り飛ばす。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ