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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
598/621

episode 581 「はじめまして」

アスラの鼓動が高鳴る。忘れもしない、2000年前のあの日。あれから自分たちは大きく変わっていった。しかし、目の前の魔女はあの日と変わらない姿でそこに居た。



「モルガナ、すぐ全員に知らせろ。マリンにもだ」

「うん!」



モルガナは力を振り絞り、この事態を説明するため飛んでいく。



「zpjoplb? pnbfijupsjefxbubtjupubublbfsvoplb?」

(良いのか? お前一人で私と戦えるのか?)


「相変わらず気持ちの悪い存在だな。あの時とは違うぞ。もうあんな犠牲を払わなくても済むように、鍛え続けてきたのだからな」




魔女が臨戦体勢に入るよりも速く、魔女の肉体に拳を突き出すアスラ。見事その攻撃は魔女の肩に命中し、左腕もろとも魔女の体が弾け飛ぶ。なんの反応も示さない魔女に違和感を感じながらも、攻撃の手を緩めるわけにはいかない。続けざまに攻撃を繰り出し、魔女の体は瞬く間に消し飛んでいく。




「ljibtvoeblb?」

(気は済んだか?)




姿はないが、魔女の声が響く。散り散りになった魔女の体の破片が集まり、再び形を成していく。



「メイザースの力」

「それは違うな」



魔女の言葉が聞き取れるようになる。



「本来これは私自身の力だよ」



瞬く間に魔女の姿は元通りになる。



「しかし先ほどの童子といい、お前といい、よく2000年程度でここまで成長したものだな」


魔女は素直に感心した表情を見せる。


「ああ、貴様が再び現れても世界を守らなければならないからな」


アスラは言葉を発しながらも、攻撃に専念する。たとえ魔女がメイザースの力を持っていたとしても、その回復は完全ではない。回復力を上回る攻撃力で粉砕すればいいだけの話だ。





「そういえばあの小僧はどうした? たしかアレスとか名乗っていたな?」





魔女のその言葉でアスラの中の何かが弾ける。直後、魔女の頭も弾け飛ぶ。




「貴様がその名を口にするな」



吹き飛んだ頭のうち、口元だけを再生魔女。



「いやいやすまなかった。そういえばあの小僧は死んだんだったなぁ?」



ニヤリと嗤う口元を握りつぶすアスラ。





「黙れ」





完全に頭に血が昇るアスラ。魔女の右手が忍び寄っていることにも気がつかない。その右腕に左腕が掴まれた瞬間、とてつもない違和感がアスラを襲う。


(なっ! しまった、これはヘルメスの……!)



「もらったぞ、その左腕!」


慌てて右腕で紋章が光輝く魔女の右腕をへし折るが、もう遅い。アスラの左腕は完全に停止し、所有権は魔女へと移る。



「どうだ? ヘルメスとは違い、ピクリとも動かないだろう。根性や精神力といった曖昧なものでは決して逃れられないぞ?」



魔女の言うとおりアスラの左腕は、まるでそこに無いように動かなかった。が、勿論無くなってしまったわけではない。魔女が少し念じると、アスラの腕は元々の所有者めがけて爪を立てる。


「くっ!」


アスラは仕方なく左腕の腱を切るが、それでも腕の動きは止まらない。



「何だと!?」

「だから言っただろう。ヘルメス程度の力と一緒にするな!!」



アスラの左腕はアスラの首を掠める。少し切っただけだというのに、その傷口からはおびただしい量の血が流れ始める。




「さあ、お前はどれだけ血を流せば死ぬのかな?」




魔女はそれ以上アスラに手を出さず、体を霧状に変化させる。魔女の姿が見えなくなってもアスラの体の自由は利かない。仕方なくアスラ左腕を真っ二つに折る。



「くっ」



アスラは漂っている魔女を睨み付ける。攻撃を通すことは可能だろうが、メイザースの力がある限りほぼ無意味だろう。



(倒すことは考えなくていい。ここは時間を稼ぎ、これ以上人間たちを巻き込まないようにするのが先決だ。皆が集まれば勝てない相手ではない……マリンもこちらに付いているわけだしな)



今となってマリンが敵でなくて本当によかったと感じるアスラ。もし今の状態の魔女にマリンの怠惰の力も加わってしまえば、それこそ太刀打ちできなくなってしまう。





「そういえば人間、我が愛しの娘はどこにいる? 大切なものを返してもらわねばならないのだがね」



アスラの心を見透かしたかのように問いかけてくる魔女。



「残念だな。マリンはお前の言いなりにはならない」

「そうか、それはそれで構わない。初めての反抗期だな。まあ、少しきゅうを据えてやればおとなしく力を差し出すだろう。なぁ、マリン!」



魔女はアスラの背後に声を投げ掛ける。アスラが振り返ると、そこには複雑な表情をしたマリンが立っていた。




「はじめまして、我が母」

「ああ、我が娘」




魔女とマリンは見つめ合う。その二人の表情からはなんの感情も読み取れない。



「マリン、やはりこいつは化け物だ。遠距離からの攻撃では対処不可能、かといって迂闊に近づけば一瞬でやられかねない。ここは慎重に……」



マリンに声をかけるアスラ。しかしマリンには一つも言葉が届かない。ただそこに立ち尽くし、魔女の目を見つめている。その姿はまるで人形のようだった。








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