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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
597/621

episode 580 「2000年ぶり」

マリンは魔女の居なくなった祭壇をせわしなく歩き回っている。口に爪を噛みながら、表情を曇らせる。昔からマリンと接してきたアーノルトはおろか、2000年前から存在を知っている神々ですらマリンのこんな苦痛な表情は見たことがなかった。



「ねぇ、マリン。これからどうするの?」


不安に耐えきれなくなったモルガナがマリンに声をかける。2000年前魔女と戦った時、まだ小さかったモルガナだけがその時の記憶が薄い。他の神々は何も言葉を発さず、ただただ頭を抱えている。



「黙っていろ。集中できん」



声色がいつもと違う。冷や汗もだらだらと垂らしている。




ガイア、マーク、アーノルトの三人はいまいちこの事態にピンとこない。何か大変なことが起きているのは理解できるのだが、それだけだ。どれ程甚大なことなのかはわからない。




「……何故復活したのかはわからない。考えられるとすれば私の愚弟どもの欠片がまだ体内に残っており、母がそれを引き寄せた、その辺りか。私自身の欠片を持っては居ないから完全な復活とは言えないが、それでも緊急事態に変わりはない」



マリンは目の前に様々なゲートを展開する。




「神ども。お前たちは直ぐに国へ帰り、事の収束にあたれ。どこに母が現れたにせよ力の回復のため、大量に人間の生気を吸収するはずだ。ただ母を見つけたからと言ってむやみに手を出したりはするな。お前たちは神の力を吸収されでもしたら非常に厄介だからな」



マリンの提案に反対する者は誰も居なかった。神たちもどうすればいいのかと不安なのだ。




2000年前が繰り返される、そう想像するだけで背筋が凍る。





「人間、残念だがお前たちの出る幕は無い。そこでおとなしくしていろ」



ガイアとマークに告げるマリン。マリンはアーノルトを連れ、ゲートの一つに飛び込んでいく。神々もそれぞれゲートに飛び込み、魔女の探索にあたる。






一気に静まり返る神殿。


「兄上、本当に魔女は居たのでしょうか」

「あの神とマリンの顔を見ただろう。魔女は実在したんだ、間違いなくここに」



二人は祭壇を見つめる。なんの変哲もない祭壇だ。だが、確かにここに世界を滅ぼす魔女が居た。そして、今もどこかに必ず居る。





「とにかく気絶したローズたちのもとに戻ろう。もしかしたらもう目を覚ましているかもしれない」

「はい!」



二人はもと居た場所まで引き返す。











「cjnjcjnjcjnj。2000ofonbfuptflbjibobosblbxbsjobj」

(美味美味美味。2000年前と世界は何ら変わり無い)



とある地で逃げまとう人々の魂を吸い上げていく黒い影。人の姿すら保ててはいないが、間違いなくそれは魔女だった。



そのようすを怯えながら伺う一つの影。



(な、なんなの……あれ……)



影の正体はモルガナだった。モルガナは被っている帽子を更に深々と被る。得たいの知れない存在、モルガナは一目見てそれを魔女だと理解する。


正直目の当たりにするまでは一人でも何とか戦えると考えていた。実際モルガナは2000年前とは比べ物になら無いほど成長しており、マリン以外の魔族ならば圧倒できる自信があった。いくら魔女がマリンより強いとはいえ、戦うことくらいはできると考えていたのだ。だが、実際に目で見て確信する。自分ではどうあがいても敵わない存在だと。






「ebsfeb。njufjsvob?」

(誰だ。見ているな?)






影の中から声がする。モルガナは必死に口を手で覆うが、そんなことをしても意味はない 。モルガナの発する気配を過敏に察知し、魔女はこちらへと近づいてくる。



「こ、こないで!!」



モルガナは魔女に向かって思い切り杖を降る。杖の先端からは強烈な光が放たれ、魔女の体を貫く。手加減している余裕などはまるでなく、魔女を貫いた光はそのまま突き進んでいき、背後に存在していた山を木っ端微塵に破壊する。




「はぁはぁ」


最大出力の攻撃をしたモルガナを激しい疲労が襲う。


(ちょっと、やりすぎちゃった。けどこれなら少しは効いたはず……)



そんなモルガナの淡い希望は直ぐに打ちのめされる。





「ivnv。ebsflbuppnpfcbbopupljopxbqqblb。avjcvoupnbszplvxpuvlbjlpobtfsvzpvojobuubefibobjlb」

(ふむ。誰かと思えばあの時の童子か。随分と魔力を使いこなせるようになったではないか)


「そん……な」



黒い影が形を作っていく。人の形へと変貌したその影は、全くの無傷だった。




(まずい、体が……)



モルガナは逃げ出そうとするが、攻撃の反動でうまく体が動かない。そうしているうちにも魔女はどんどんと近づいてくる。マリンのいっていた通り、モルガナの生気を吸うつもりなのだろう。


「みんな……ごめん! 足手まといに……」



涙を浮かべながら呟くモルガナ。そのモルガナの肩に手がかかる。しかし、それは魔女のものではなかった。




「アスラ!!」




手の主が誰だかわかると、モルガナはぐちゃぐちゃに泣きじゃくった顔で叫んだ。






「久しぶりだな……」



魔女を睨み付けるアスラ。



「ipv、ftbhbtpujsblbsbzbuuflvsvupib」

(ほう、餌がそちらからやって来るとは)



魔女は邪悪な顔でほくそ笑んだ。




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