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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 579 「滅亡の始まり」

ゼロはレイアの手を取り、ゲートとは別の方向に向かって歩いていた。



「ゼロさん、わたくしたちは本当にこれで良いのですか?」



レイアが隣で歩いているゼロに声をかける。ゼロにここに居て欲しいのは確かだ。だが、ローズやリザベルトたちは世界を救うため、世界共通の敵である魔女に戦いを挑んでいる。



「嫌なのか?」



ゼロが聞き返す。正直ゼロにとって世界などどうでもいい。魔女がこの地を支配し、世界が滅亡したとしても、レイアが隣にさえ居ればそれでいい。



「嫌じゃないです……ですが、やはり罪悪感はあります」



今こうして歩いている間にも大切な人が死んでいるかもしれない。考えないようにできればどれ程楽だろう。胸が締め付けられる。



「まぁ、そんなに深く考える必要無いんじゃねーか? お前はゼロと居たいんだろ? それともゼロに戦って欲しいのか?」



フェンリーの問いかけを激しく否定するレイア。一番嫌なのはゼロが傷つくことだ。



「なら、わたしはそれでいいと思う」



レイアの隣からにゅっとケイトが首を出してくる。二人から助けられ、少し気持ちが落ち着くレイア。





「うう……」



そんな中、ただ一人ワルターだけが体を小刻みに震わせている。落ち着かないようだ。


「おまえなぁ、戦いたいのはわかるけどよ、もう諦めろよ」


今にも爆発しそうなワルターの肩を叩くフェンリー。


「そうは言ってもね、体が治ってからうずきが止まらないんだ。近くにあんなに強い人たちが居るって言うのに戦えないなんて……生殺しだよ」


ワルターの剣はフェンリーが預かっている。そうでもしないと直ぐに飛び出してしまうだろう。さすがのワルターも剣がなければ戦いにいこうとはしない。




「ですが、これからどこへ向かうのですか?」


ゼロに尋ねるレイア。不安に満ちた顔だ。正直ゼロにも行く宛てなど無い。この世界が滅んでしまえば逃げ場などは無いのだ。戦いに背中を向けたその時点で、それはわかっていた。



「探そう。俺たち皆で」

「はい!」



レイアは精一杯の笑顔をゼロに向ける。レイアの不安は何一つ解消されてはいないが、それでも笑顔を作った。残された時間は決して多くは無いのかもしれない。ならば笑えるだけ笑っておこう、この瞬間を楽しもう、レイアはそう決めた。











「何をしている? アーノルト」


キョロキョロとゼロを探しているアーノルトに声をかけるマリン。マリンは既にメイザース大神殿へ向かうためのゲートを展開している。



「何でもない……」


明らかに様子がおかしいが、マリンはそれ以上突っ込もうとはしない。


「ならば行くぞ」



ゲートの近くに全員を集めるマリン。そのゲートを不審そうに触るマーク。



「今度はきちんと目的地に着くのか?」

「ふん、警戒するのはいいことだが、いい加減私を信用してもらいたいものだな」



そういうとマリンは我先にとゲートへと足を踏み入れる。



「心配するな。この先に冥界の気配はない」


マリンに続くハデス。


「あ、おい! めいかいってなんだよ!」


また疑問が復活するルイン。ハデスを追いかけるようにしてゲートに飛び込む。二人の神がゲートに消えると、続々と他の神々も後に続く。




「ここで去っても我々は一切気にしない。マリンにも何も言わせはしない。それでも来るというのなら、力を貸してくれ。この世界の平和のために」



最後にゲートの向こうへと消えていったアスラが言い残す。アーノルトは一切迷わずに後に続く。



「お前たちは残れ。この先は人間の踏み込む領域ではない」

「心配するな。俺もマークも自分の身は自分で守ろう」



きっぱりとアーノルトに告げるガイア。そしてマークと一緒にその先へと進んだ。






「ふむ、メイザースの土地も今では人間たちの避難所とはな」




マリンはゆっくりと神殿に近づいていく。そしてドアを開けると、そこに居たアカネやカズマに宣言する。



「おはよう、人間ども。今からここは戦場と化す。直ぐに出ていってもらおう」



あまりに突然の出来事で、理解が追い付かないアカネたち。だが、直ぐに恐怖が全身を駆け巡る。



「な、なんなんだお前は! またアカネを狙いに来たのかよ!?」

「アカネ? そんなものに興味ないな」



つまらなそうな顔でカズマを睨み付け、指を鳴らすマリン。するとそこに居た全員の足元にゲートが出現し、全員揃って何処かへと転送される。



「マリン、貴様……人間をどこへ飛ばした?」


アスラがマリンに詰め寄る。


「そんな恐ろしい顔をするな。私の別荘へ飛ばしただけだ。戦場となるここよりは遥かに安全だと思うがね」



マリンが本当にアカネたちを安全な場所へ転送したかどうかをこの場で確かめる術はない。アスラは苦い顔をしながらも後ろへ下がる。



「それでいい。では向か……」










マリンの表情が激変する。見せたこともない焦りを見せ、似合わず全速力で駆け出す。神々も直ぐにその理由に気がつき、マリンの後を追いかける。



「何だ? 何があった?」

「分かりません」


理由のわからないガイアとマークは首を傾げる。だが、隣のアーノルトは何か気がついたようだ。



「いや、まさか……」





魔女の封印されている祭壇に到着するマリン。勢いよくその扉を開ける。すると、マリンの表情は更に大きく崩れる。





「……ありえん」





そこはもぬけの殻だった。


魔女が封印されていた祭壇には魔女の残り香すら残っていない。




世界を滅亡させる力を持った存在、魔女。それは突如姿を消した。











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