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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 578 「現世への帰還」

ガイアとアーノルトの戦いが終わり、マリンとアーノルトの意志が固まった後、ハデスがどこからともなく姿を現した。




「随分と力が馴染んでいるではないか。そろそろ戻ったらどうだ? 外ではお前の仲間が錯乱しているぞ?」

「俺がここを離れればお前たちは冥界を抜け出せん。それでもいいというならすぐにでも戻ろう」


ハデスはマリンの横を通りすぎ、ガイアの前に立つ。



「な、何のよう……」

「二度と俺に逆らうな。わかったな?」



少々怯えを見せるガイアに言い聞かせるハデス。そしてマークとガイアの肩を掴むと、力一杯放り投げる。




「うわぁぁ!!」

「マーク!」




投げられた二人はそのまま冥界から外へと投げ出された。






「随分と品の無い方法だな。プルートとは大違いだ」



マリンが飛んでいくマークとガイアを見送りながら呟く。



「次はお前たちの番だ。残りたければ残るがいい。しかし、ここで残ればもう二度と現世へは還さんがな」



アーノルトに向かって告げるハデス。もうアーノルトがここに残る理由は一つもなかった。




「連れていってくれ」




アーノルトは自らハデスの前に出ていく。


「いい返事だ」


ハデスはアーノルトを掴み、投げ飛ばす。それを眺めるマリン。




「おい、お前まさかこの私までその方法で送り出すつもりでは無いだろうな?」

「無論だ。残りたいのならやめておくが?」



不適な笑みを見せるハデス。少し考えた後、観念したマリンはハデスの近くに寄る。そして体にまとわり付いている怠惰の力を一度解除する。



「私の肌に直接触れられるからといって、妙な気は興すなよ?」

「握りつぶしてやろうか?」



睨み合ったあと、マリンも宙を舞った。










「うわっ!」




初めに現世にたどり着いたのはマークだった。しかしマークが姿を現したのは上空数十メートル地点、このまま落下すれば命は無い。


(こ、このままでは……)



背中に刺しているウォーパルンに手を伸ばすが、そこにその剣は見当たらない。仇に使用したことを思いだし、血の気が引く。



(エクスカリバーでは衝撃を殺しきれない……くそ、どうすれば)



考える時間はほとんど残されていない。そうしている間にも体はどんどん地面に向かって突き進んでいく。そこで地上に居るシオンが目に映る。



「ナル……シオン!!」



シオンの名を力一杯叫ぶマーク。



「え、まーくん? どこどこ?」



辺りをキョロキョロ見渡し、ようやく落ちてくるマークを発見するシオン。後先のことなど考えもせず、地面を蹴って空中へと駆け上がる。そして見事マークの体をキャッチするが、その勢いに負け、シオンも一緒に落下していく。



「し、シオン!?」

「ど、どうしよ、まーくん!!」



地面はすぐそこまで迫っている。その窮地を救ったのはネスだった。



「もう、しょうがないね」



両手を地面へと付けるネス。するとマークとシオンの体が落下しなくなる。上を見上げると、ガイアやアーノルトもいつの間にかこちら側に飛ばされており、同様に空中に浮いている。ネスが重力を調整し、マークたちの体はゆっくりと地面に向かって落ちていく。




「助かりました」

「気にしなくていいよ。でもよくまた戻ってこれたね。それに……」



ネスは戻ってきたマークの変わりように驚いていた。まるで何百年も修行したかのようにマークの肉体は引き締まっており、また精神も何段階も成長していた。



「まーくん、何だかちょっと変わったね」


シオンもマークの変化に気がついたようだ。


「ああ、これで役目を果たせる」


マーク自身もまた、その力を感じていた。






「ふう。あきれたものだ。まさか誰一人として去っていないとはな。よっぽど死にたいらしい」



一人ネスの力を借りずに戻ってきたマリンが辺りを見渡しながら告げる。




「当たり前だろ! ここまで来たんだ、今さら引き下がれるかよ!」



レックスが元気よく叫ぶ。他の者も同意見のようだ。





「だがな、正直お前たちでは足手まといにしかならない 」

「は? 何言って……」



レックスが突っかかろうとするよりも速く、マリンの力が解放される。それは瞬く間に広がり、その場に居た全員を飲み込んでいく。



「かっ」


その力に当てられたレックスは直ぐに意識を失う。レックスだけではない、その場に居た殆どがバタバタと倒れていった。




「ふむ、やはり耐えきれなかったか。だが安心するといい。たとえ我々が敗北したとしてもお前たちならば惨めに生きていけるだろう」



マリンは倒れていった者たちを見つめ、そしてまだ立っている者たちに視線を移していく。




「そして残ったお前たち。先ずはさすがと言っておこう」



立っていたのは神々、いつの間にかハデスも意識を取り戻している。そしてアーノルト、ガイア、マーク。最後まで耐えていたが、ローズやリザベルト、シオンや殺し屋たちは意識を失った。




「さあ、行くとしようか。我が母のもとへ」



マリンの言葉に、そこに居た全員の意識が引き締まる。だが、アーノルトだけは別のことを考えていた。



(何故居ない……ゼロ)



そこにあると思っていたゼロの姿が見当たらない。冥界で会うことがなかったのだから、必ずここに居ると信じていた。しかし、ゼロはおろか、その仲間たちの姿さえ一人も見当たらない。



(それがお前の選択とでも言うつもりか?)



アーノルトはゼロを意識の中から消し、マリンと同じ方向を向いた。








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