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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 575 「魂の在処」

ミカエルとルナが戦場に戻ったとき、既に戦いは終結していた。


「とうやら決着はついたようじゃの」



ルナはほっと息をつく。正直ハデスに勝てる算段はなかった。覚悟を決めていたミカエルだったが、戦いを避けられるに越したことはない。



「お、ようやく戻ってきたか。ちょっと看てやってくれよ」


ルインがルナを見つけて声をかけてくる。その足元にはハデスがぐったりと横たわっていた。



「ほう、やはりルインが無力化したか」


ミカエルが感心して声を上げる。しかしルインは首を横に振る。



「アタシじゃない。こいつが勝手にぶっ倒れた」


折れた腕でハデスを指差すルイン。自らの手柄を隠すような性格ではないため、ルインの言っていることは本当なのだろう。



「ハデスも流石に連戦での疲れが溜まっていたのだろう。ルナ、頼む」


アスラも体を引きずりながらルナに懇願する。ルナに断る理由は見当たらない。直ぐにハデスの体を調べ始める。



「……妙じゃな」

「どうしたの?」



ハデスを看て直ぐに首をかしげるルナ。不安そうにモルガナが近寄ってくる。



「体はいたって健康じゃ。あれほどの攻撃を受けながらこれは驚異的じゃな。じゃが、こやつが目を覚ますことはないじゃろう……」


ルナの言葉を聞いて身を乗り出すルイン。



「はぁ!? じゃあ死んでるってのか!?」


声が裏返りそうなほど動揺したルインの言葉に、ルナは首を横に振る。



「死んではおらん。じゃが無いのじゃ、魂が」



ハデスの心臓を指差しながら答えるルナ。今度はアスラがやって来る。




「魂だと?」

「うむ。こやつは生きておる。じゃが、それだけじゃ」




アスラはハデスの心臓に手を当てる。確かに鼓動はある。



「ルナ、お前の力ではどうにもなら無いのか?」

「ならん。わらわの力で対処できるのはからだの傷だけだからの」



歯を食いしばり、うつむくルナ。仲間を救えないのは誰しも悲しいが、一番その力を持っているルナが一番悔しかった。



「とにかくゲートのところまで戻るとしよう。無駄かもしれないが一応ハデスは拘束して連れていくとしよう」



皆がうつ向くなか、ホルスが告げる。



「そうだね。僕が拘束するよ」



だいぶ回復したネスが自らの包帯をほどき、ハデスに結びつけていく。巨大なハデスの体を結べるほど包帯をほどいたというのに、ネスの体は全く外へ晒されない。



「この布には僕の力が染み込んでる。ある程度の拘束力はあるよ」



長年着用しているネスの包帯には重力を制御する力が宿っている。その力のおかげでネスは空中に浮かび続けることが可能なのだ。そして勿論重力を軽くすることができるだけではなく、重くすることができる。並大抵の人間ではこの包帯に巻き付けられたら身動きひとつ取れないだろう。




「では行こう。また人間どもが集まっているかもしれ……」




途中で言葉がでなくなるアスラ。他の神々の顔色も変わる。




「なぜ今まで気がつかなかったんだ……この気配は紛れもなくマリン……」



ハデスとの戦いに気をとられてしまっていたため、マリンの気配に気がつく事が出来なかったが、ようやくその気配を察知するアスラたち。全員で顔を合わせた後、全速力でゲートへと向かう。






「ようやく肩が付いたか」


神々が向かってくる気配を感じとるマリン。机と椅子と紅茶を片付け、到着を待つ。




「人間たち、また死にたくなければ離れていろ」

「え? 何……?」




シオンが聞き返す間もなく、神々が到着する。その衝撃でシオンたちは吹き飛ばされてしまう。




「きゃっ!」

「捕まるのだリラ!」



飛ばされるリラの手をつかもうとパーシアスが手を伸ばすが、その手は届かない。が、代わりに別の手がリラを掴む。



「大丈夫かよ?」

「え、ええ。ありがとう 」



その手を握ったのはレックスだった。レックスは軽い身のこなしで地面に着地する。パーシアス以外の全員が着地に成功する中、リラをとられたことに動揺したパーシアスだけが地面に激突する。



「ふぐ!」

「おい、大丈夫か!?」


リラから手を離し、パーシアスを助けに向かうレックス。手をさしのべるが、パーシアスはその手を払いのける。


「だ、大丈夫だ!!」

「そ、そうか」


パーシアスがレックスに対抗意識を燃やしている中、神々とマリンは一触即発の雰囲気だった。




「よう、魔族。ようやく戻ってきやがったか。てめぇに聞きたいんだけどよ、うちのこいつが目ぇ覚まさないんだわ、てめぇなんか知ってんだろ」



ルインが治った腕をボキボキと鳴らしながらマリンに近づく。




「ああ、勿論知っている。その木偶の坊は今冥界に居るだろう」



「冥界」という言葉が出た瞬間、ルインはマリンに殴りかかる。勿論マリンには届かないが、ルインの怒りだけはマリンにも届く。



「冥界だぁ? 寝ぼけてんじゃねーぞ!」

「やれやれ。言葉も通じないとはな」



ルインが戦闘態勢に入ったことで、他の神々も身構える。



「ルイン、近くに人間の気配が多数ある。あまり派手に暴れれば……」

「わかってる!」



アスラの忠告をかきけすルイン。その戦意に満ちた顔は、とてもわかっているようには見えなかった。




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