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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 574 「ガイアの怒り」

グサリ。





いくら動けるようになったとはいえ、アーノルトの攻撃を避けることはできない。胸に深々と剣を突き刺され、ガイアはまた動かなくなる。



「充分理解した。お前に拷問は意味をなさないようだ」



既にガイアの耳には入っていないが、それでもアーノルトは続ける。


「ならば殺し続ける。幸いここは冥界だ。時間の概念も死の概念もない。これは単純に俺とお前の根比べ。お前のその狂った考え、俺が矯正してやろう」




ガイアが起き上がる。その瞬間、またしてもアーノルトがガイアの胸に剣を突き刺す。再び倒れるガイア。言葉を一言も発さないまま死に至る。




「何度でも繰り返す」




目を開けた瞬間、手が動いた瞬間、呼吸を始めた瞬間、その一瞬に合わせて攻撃をし続けるアーノルト。ガイアにそれを回避する術はなく、何のリアクションも起こせぬまま繰り返し死に続ける。



「う……」


ここでマークが目を覚ます。マークが目覚めてから最初に目にしたのは、兄が突き刺されて絶命する瞬間だった。




「な、何をしている!!」

「黙れ」



簡単にマークの首をはねるアーノルト。頭がコロコロとガイアのもとに転がっていく。死の間際にそれを横目でちらりと見るガイア。


「か……ま……く」



絶命する。また起き上がる。そしてアーノルトが突き刺す。同じことの繰り返し。しかし今回は違った。



「……」



突き刺したことの感触が違うことに気がつくアーノルト。ガイアは少し体を捻らせ、急所を外していた。




「貴様、マークに……何をしたァァァァァァ!!」




アーノルトの右腕が宙を舞う。


「ちっ!」


右腕を押さえ、後ろへ飛び退くアーノルト。直ぐに腕の再生が始まるが、それよりも速くガイアが近づいてくる。心臓付近に剣が突き刺さっているにも関わらず、ガイアの動きは一切衰えていない。それどころか増しているようだった。



「アーノルトォォォ!!」


名前を叫びながら剣を振り下ろすガイア。魔の力を手にいれたアーノルトのクナイを軽々と砕き、胸に一撃を受けるアーノルト。よろめいた隙に再度胸を切りつけ、アーノルトの胸にはバッテンの傷がつく。




「止めだ!」



そのバッテンの中心に剣を突き刺そうとするガイア。完全に虚を突かれたアーノルトに避けることは出来ず、ただ刺されるためにそこに居た。




「兄上!」




復活したマークの呼び声で動きが止まるガイア。アーノルトに剣を突き刺す寸前で正気を取り戻す。


「……二度とするな」


剣に付いた血を払い、マークのもとへ と駆けていく。



「兄上、落ち着いてください。俺たちはここでは死にません。そもそもアーノルトに戦いを挑んだのは俺です。たとえ殺されたとしてもそれは仕方の無いことです」

「あ、ああ。わかっている。わかっているが……」



目の前でマークが殺されると、どうしてもセレーネを思い出してしまう。また、助けられなかったのかと思い込んでしまう。一人になってしまったのではないかと……





「く、くくく」




アーノルトが不気味な笑みを浮かべる。





「くはははは!」

「何おかしい!」



堪らなく声を上げるガイア。






「何がおかしい? 何もかもがだ! あれほど大層な御託を並べておきながら、弟が殺されただけでその様だ! お前の台詞には何の説得力も感じられん!!」




大声を出しながら叫ぶアーノルト。自分の考えが正しかったのだと主張する。




「マリンがそう言っていたのだから当然だが、やはり理想はここにある!!」








「ふむ、少し拗らせてしまっているな」


マリンは水晶を眺めながら呟く。


「何の話?」


シオンが興味ありげに水晶を覗き込むが、そこには反射した自分の顔しか写っていない。




「たいした話じゃない。それよりもお前はマーク・レオグールの帰還に祈りを捧げていろ」



マリンの言葉にはっとするシオン。



「そうだった! お願い神様、まーくんを救ってください」


神に祈りを捧げるシオンの姿を見て、笑みがこぼれるマリン。



「クク、その祈りは神には届かんぞ?」

「え? 何か言った?」



小声で呟くマリンに尋ねるシオン。



「いいや、何でもない」







その頃神であるミカエルとルナは二人きりでハデスの居た地点まで引き返していた。



「なんじゃ? えらく簡単に引き下がるではないか」

「奴らの意思は硬い。我らがいくら説得したところで無駄だろう。無駄な時間は無い方がいい」


ルナの問いかけにそっけなく答えるミカエル。ゼロたちは結局ハデスとの戦いを避けたのだった。





「お前がレイアを傷つけた奴を野放しにするなんて珍しいじゃねーか」



フェンリーがからかいぎみにゼロをいじる。



「野放しにする気はない。だがここでレイアのもとを離れるのは得策ではないと考えた。それだけのことだ」


ゼロはレイアの顔を見ながらそう答える。



「ゼロさん……」



レイアのその顔は、ゼロが見たいままでの中で一番嬉しそうだった。







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