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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 568 「妹と姉」

鍛え上げてきた剣の腕。休まず握りしめてきたこの剣を、無防備な人間に対して振り続けるガイア。



どれだけ無意味な時間が流れただろう。もうガイアの感覚も無くなってきた。ただただ決められた動作を行い続ける人形みたいだ。そんなガイアに近づく足音が。



「邪魔だ!!」



その足音の正体にも気がつかないまま、背後に向かって剣を投げるガイア。剣はブスリとその人物に突き刺さる。そしてそこで初めて気が付く。その足音の正体が大切な弟であるマークだということに。


「ま、マーク!」


急いで駆け寄るガイアだったが、剣はマークの腹に深々と突き刺さっており、おびただしい量の血がそこから流れ出している。剣を抜き、応急手当をするも、意味はない。マークの体はみるみるうちに冷たくなっていき、一言も言葉を発すること無く目を閉じる。







「兄上!」


しばらくして目を覚ますマーク。すぐさま兄を呼ぶが、返事は返ってこない。ガイアはすぐ近くに居たが、座り込んで顔面を手で覆っている。完全に心を閉ざしわうずくまっている。


「俺は、俺は何を……俺は」


ぶつぶつと呟くガイアに抱きつくマーク。



「兄上、俺は無事です。痛くも痒くもありません」

「そういう問題じゃない!」


マークを振りはらうガイア。顔は涙でぐじゅぐじゅになっていた。




「俺はお前に剣を向けたんだ! 命を懸けて守ると決めたお前を傷つけたんだ! いくら体の傷が治ろうとも、その事実は変わらない! 俺は……俺は!」




あれほど頼もしかった兄がとても小さく見える。マークは拒絶されようとも、もう一度ガイアに歩み寄る。そして優しく抱き締める。



「兄上、兄上は今でも俺の大切な兄上です。兄上が苦しんでいるのなら俺も一緒に苦しみます。兄上が悩んでいるのなら俺も一緒に悩みます。だから、教えて下さい。兄上を苦しめるその原因を」



ガイアは再び膝をつき、泣き崩れる。マークは確信する、この原因は間違いなくマリンの言っていた兄の妹の事だと。



「教えて下さい。兄上の妹について」



マークからその言葉が発せられた瞬間、ガイアは硬直する。叫びも涙も瞬時に止まり、呼吸さえも止まってしまう。




「どこで聞いた?」




その兄の言葉はとても重く、ずっしりとのしかかる。


「魔族、マリンからです。兄上はずっと俺に隠して……いや、隠していてくれていたんですね」



ガイアは目をつぶり、涙を拭き、立ち上がる。そしてマークに全てを話すことを決心する。




「マーク。これからお前に全てを話す。両親のこと、そして俺の妹、お前の姉であるセレーネについて」




ガイアの言葉にマークは耳を傾ける。途中何度も嗚咽しながらマークは話を聞き続ける。



「そう、ですか」


マークの中のもやもやが全て取り払われる。失っていた記憶も戻ってくる。両親との暖かい想い出、そして大好きだったセレーネのことも。





「そしてそこで呆けている男、あれが俺たちの仇だ」



ガイアは左腕に傷のある男を指差す。マークは息をのみ、その男を見つめている。


「なるほど」


マークはエクスカリバーを取り出し、男の体に触れる。そしてすぐさまウォーパルンを取り出し、男の体に突きつける。



「がっ! ごぼっ!」



すると今まで何の反応も示していなかった男が突如苦しみだした。


「な、どういうことだ?」

「おそらくこの男は何らかの力で感覚を遮断していたのでしょう。その力をエクスカリバーで浄化しました。これでこの男は痛みも苦しみも取り戻した」



淡々と語るマーク。突き刺したウォーパルンは男を水の檻の中へと閉じ込めていく。男はもがき苦しみ、体に突き刺さった剣を抜こうとするが、刀身が水のため触れることができない。しばらくもがいたあと、男は動かなくなった。が、まだ地獄は終わらない。死ぬことのできない冥界では地獄は何回でも繰り返される。何か言おうと口を動かすも、その中には容赦なく水が入り込んでいく。



マークはそれをただただ見つめる。



「謝罪しろ。そうすれば助けてやる。できればの話だがな」



水に閉じ込められた男に向かって冷徹に言い放つマーク。その姿はガイアでも恐怖を覚えるほどだった。




「行きましょう兄上。ここから出る方法を探さないと」

「あ、ああ。そうだな」



ガイアの怒りや憎しみは簡単に解消されてしまった。剣が突き刺さった男をそこに残し、マークとガイアは去っていった。






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