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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 567 「生きる糧」

マークは懐かしい暖かさに包まれながら目を覚ました。




「う、う……」



良くみたことのある風景だった。ゲートをくぐる前、神々が居たあの広場だ。


「戻って、これたのか?」


周りには一緒に戦った仲間たちが倒れている。一番近くに倒れていたシオンに咄嗟に手を伸ばすマーク。体を揺らすと、シオンはすぐに目を覚ました。



「う、あれ、まーくん?」

「良かった」



シオンも現実世界へ戻ってきたのだと実感する。


「でも、マリンは確かに私たちは死んだって言ってたよね?」

「ああ、確かに俺たちは死んでいた。だが、今は生を実感する。それに……」



マークは体の底から沸き上がる力を感じていた。


「私も感じる。何だが自分が自分じゃ無いみたい」


生まれ変わった、そう思えるほどの変化。二人の潜在的力は比べ物にならないほど向上していた。






「兄上」





マークはキョロキョロと辺りを見渡す。しかしそこに兄であるガイアの姿は見当たらない。


(間違いなくあの場に居たはず……くそ、まだゲートの中か!)


再びゲートの中へと飛び込もうとするマークだったが、そこには既にゲートは無く、代わりにマリンが立っていた。




「貴様……一体俺たちに何をした! 兄上はどこだ!?」



訳がわからず、マリンに怒鳴り散らすマーク。不安と恐怖を怒りで塗りつぶす。



「言っただろう、お前たちは死んだ。そして生きながらでは決して到達できない地点までパワーアップしたのだ」

「兄上はどこだ!」



自分がどんな目にあったかなど正直どうでも良かった。問題なのはガイアが無事なのかどうかということだ。




「ガイア・レオグールは戻らない」




その言葉を聞いて気が動転するマーク。剣を抜き、無防備なマリンに襲い掛かる。



「ほう、やはりスピードはかなりの成長を遂げているな」

「ふざけるな! 兄上に何をした!?」



マークの成長ぶりに喜ぶマリン。しかし当のマークはそんなことを気にしていられない。



「私が何かしたのではない。あの男自身が決めたことだ。妹を殺した犯人を見つけたと言ってな」

「妹? 何の話だ」



マークの返答を受けて、マリンはわざとらしく口に手を当てる。


「おっと、これは失言だったな」

「何だ? 一体何を隠している!?」


マリンに詰め寄るマーク。剣を捨て、胸ぐらを掴む。何故かマリンに触れられたが、そんなことは今頭に入らない。自分の知らない自分の事をマリンが何故か知っている、その可能性に耐えられない。



「聞く相手を間違っているのでは無いのか? お前の最愛の兄上とやらに聞けばいいではないか」

「貴様が兄上を語るな!!」



剣を拾い、激情に任せてマリンに突き立てるが、今度は弾かれてしまう。



「直接聞くといい。道は開いてやる。ただし帰り道は存在しないぞ?」

「さっさとゲートを開き、その口を閉じろ!」



マークが叫び終えると、ゲートが開く。マークは迷わずその中へと進んでいく。



「俺はお前の存在を許さない」



マークはそう言い残し、消えていった。



「許さない? ならば私を殺してくれるとでもいうのか?」



意味深な顔を残し、マリン何処かへ消えていった。








遡ること数分前、ハデスが冥王の力を手にした頃、ガイアはある男の前に辿り着いていた。


「ようやく見つけたぞ!!」



忘れもしない、あの日目に刻んだ左腕の傷。その傷を持った男は、ただボーと立ち尽くしていた。ガイアは駆け寄り、躊躇無く男の首をはねる。男は何の抵抗もせず、黙って首をはねられる。しかしここは冥界。そんなことをしてもすぐに男は蘇り、また何事もなかったかのように立ち尽くす。まるで心がここに無いみたいだ。




「ッ!!」



ガイアの顔に苦痛が浮かび上がる。あの時と同じ、いやそれ以上の苦しみを傷の男にも味わわせてやりたかった。男への復讐、それだけを糧にして生きてきた。いくら切り刻んでも男は無反応だ。虚しさと怒りだけがガイアを支配する。



「ふざけるな! 泣き叫べ! 許しを請いてひざまづけ! 貴様のやったことは、そう簡単に許されていいものではないぞ!」



脳に、喉に、胸に、腹に、順に剣を突き刺していく。悲鳴は聞こえてこず、代わりに耳障りな肉を刺す音が耳を刺激する。感触も非常に悪く、ただただ苛立ちがつのる。




「死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね!」




普段使わない言葉を連呼し、己の怒りを沈めるために剣を振り続ける。剣を振りながら体がどこかに引っ張られそうな感覚に襲われながらも、それに必死に抗うガイア。



「まだつれていくな! 俺はまだ……!」



ハデスの力を完全に拒絶し、その場へと留まるガイア。




「いいさ、貴様がそのつもりなら、思い出させてやる。死を懇願するほどの痛みと苦しみを」



ガイアは見せたことの無い歪んだ笑顔を浮かべながら、再び血に染まった剣を握りしめる。








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