表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
578/621

episode 561 「ルインVSハデス」

この世で最も力の強い存在がハデスならば、二位は誰か。それはミカエルでもアスラでもなく、ルインだ。その華奢な体からは想像できない身体能力を有しており、芸術的な格闘センスも兼ね備えている。ハデスと正面から激突して無事でいられるのはおそらくこの世でルイン一人だけだろう。ハデスは脳と体を魔に支配されながらもそれを理解する。だがらこそ少しでも戦いを有利に進めるため、ルインの油断を誘う。



「なんて考えてんだろオラ!」


わざと怒り狂ったようにみせ、実は冷静なハデスの顔面に容赦なく蹴りを繰り出すルイン。ハデスの顔面はグニャリと曲がり、耳からは血が流れ出す。


「ウガァァァァァァァ!」


見事に不意をつかれたハデスはルインから距離をとるが、ルインは逃すまいとくっついてくる。スピードでは圧倒的にルインが上なため、ハデスがルインから逃れることは出来ない。



「バレバレなんだよ、このダイコン野郎!!」

「ガガガガガガ!」


ルインは猛烈なラッシュを繰り出す。ハデスの体にはいくつものクレーターが出来上がり、鈍い音と共に口から血と悲鳴があふれる。


しかし、当然ハデスも黙ってやられているわけではない。胸筋に力を集中させ、ルインの矢のような拳を受け止める。


「なっ、きもちわりぃ!」


ルインは胸筋に挟まれた腕を抜こうとするが、ガッチリと挟まれて抜ける様子は無い。



「にぃぃい」



ハデスは見た相手を恐怖のドン底に突き落とす笑顔を見せると、両手を組み、その挟んだルインの関節めがけて頭上から拳を振り下ろす。



「おいおいおいおい!! てめぇ、ざけんな!」



抵抗するもルインの腕は抜けない。そして「ゴキッ」という音を境にしてルインのわめき声はうめき声へと変化する。



「やりやがったな……」



ルインはぶらぶらと右腕を垂れさせながらハデスを睨み付ける。腕は完全に折れてしまったようで、早くも紫色に濁り始めている。


ズキズキとした痛みがルインを襲う。自己再生できなくもないが、そちらに集中してしまえば攻撃は疎かになり、そうなればハデスに一方的に蹂躙されてしまう。




「ルイン、ちょっとやばいんじゃない?」

「うん、いくらルインでも片手じゃハデスに対抗できない」



離れた場所でモルガナとネスが心配そうにルインを見ている。しかし、手を貸すことはできない。ネスの体力の消耗は激しく、ここでまた力を使えばこの世界のどこかの重力に問題が生じる。モルガナも力の加減が出来るほど体調に余裕はない。ハデスはまだしも本気のモルガナの攻撃をルインが受け止めきれる保証はない。



「ミカエルめ、何を手こずっておるのじゃ……」


ルナが爪を噛みながら呟く。あの戦闘に立ち入ることが出来るのはミカエルくらいのものだが、今現在ミカエルはフェンリーたちのもとへと出向いている。だが、いくらなんでも時間がかかりすぎている。




「行ってくれ、ルナ」


顔をこわばらせるルナに告げるアスラ。


「じゃが、お主の回復がまだ終わってはおらぬ」

「本来なら俺が何とかしなければならないんだ。ハデスのことも、ミカエルのことも。だがこれでは俺は役にたたない。せめて自分のことぐらいは自分で解決してみせる」




アスラははですとの戦いで打ち砕かれた拳を見つめながらルナに告げる。ルナはそれ以上何も言わず、ただ頷く。そしてミカエルの向かった方向へと飛んでいった。








「な、何じゃ」



到着したルナが目撃したのはまさかの光景だった。人間二人を止めに行ったはずのミカエルが押されている。自慢の羽は黒こげになり、体のあちこちから黒煙が立ち込めている。その顔つきからしてもとても余裕そうには見えなかった。




「ち、もう一人来やがったか!」


ルナの登場に舌打ちするフェンリー。ワルターは攻撃の反動でほとんど意識がなく、もうろうとしている。



「ルナ、手を出すな。これは我と人間との戦いだ」


ミカエルは自分を治療しようと近づいてくるルナを拒み、真っ直ぐとフェンリーとワルターを睨み付けている。



「じゃが……」


ルナは二人の人間に目線を移す。サングラスをかけている男の方はまだ体力に余裕がありそうだが、もう一人の金髪の男は限界だった。なぜ立っていられるのかさえ理解できない。



「おいあんた。あんたに恨みはねぇ、あんたも俺たちに用がある訳じゃないんだろ?」


フェンリーがルナに尋ねる。


「無論主らに個人的な恨みなぞは存在せぬ。しかしわらわらはそこの男の仲間じゃ。主らがミカエルと戦うと言うのなら黙って見ているわけにもいかぬ」


ルナの言葉に顔をしかめるフェンリー。



「へっ! あんたらは俺の仲間を傷つけといてよく言うぜ! そこの天使様にはきっちりと落とし前をつけさせてやる!」

「お主……まさか」



フェンリーの言葉を受けてミカエルを見るルナ。



「言うな、何も」



ミカエルは力を解放する。黒こげだった肉体は完全回復し、ボロボロだった翼も元通りになる。その衝撃でワルターは吹き飛ばされ、そのまま意識を失ってしまう。



「上等だオラ!」




フェンリーは怒りを全開にし、力を完全解放したミカエルに向けて氷の槍を飛ばした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ