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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 559 「鋼の拳」

星を破壊するほどの重力から解放されたハデスは、自分に向かってくるアスラを見つめていた。彼がアスラということは認識できる。大切な仲間だということも理解している。だがそれでも、衝動は抑えられない。手足が勝手に動いてしまう。自分の中の魔女の部分が暴れ続ける。


「ウガァァァァァァァ!!」


アスラを威嚇するかのように叫ぶハデス。言葉になどなっていないが、それは「近づくな」そう言っている気がした。





「なんてこった……」


慌てて駆けつけたフェンリーが最初に目撃したのは地面に横たわるレイアの姿だった。服は擦りきれ、白い肌が所々赤くなっている。


(ゼロは何やってんだ!?)


その答えはすぐに見つかった。ゼロは目と鼻の先でレイア以上の損傷を受けて倒れていた。レイアを庇ったのか、両手は完全に折れている。



「ゼロ、レイア……」



フェンリーの顔が黒く堕ちていく。





トントン。


「はい」


ノックの音で扉に向かうケイト。ゼロたちが戻ってきたのかと急ぐが、扉の先にいたのは違う人物だった。



「フェンリー! 一体どこに……」



再開を喜びたいところだったが、フェンリーの顔とその後ろにいる二人を見て、とてもそんな気分にはなれなかった。



「二人を頼む」



フェンリーは動揺するケイトにそう告げ、もと来た道を戻っていく。ケイトはあたふたしていたが、今にも死にそうな二人の様子を見て覚悟を決める。


「フェンリーかい?」

「うん、でももう、行っちゃった」


ゼロとレイアを運ぶケイトに声をかけるワルター。ケイトは二人を寝かせると、例の薬を用意する。



「君は二人を助けてくれ。フェンリーは俺が助けてくるよ」


ワルターはケイトの頭を撫でると、宿の外へと飛び出す。怪我はすっかり治ったようで、動きは快適だった。





「フェンリー!」


先を走るフェンリーに叫びかけるワルター。フェンリーはワルターをちらりと見るが、構わず走り続ける。ワルターは速度を上げ、フェンリーの隣に並ぶ。


「何だよ、もういいのか?」

「おかげさまでね。それよりどこに行くんだい? 楽しそうなことをしそうな顔だ」


フェンリーの顔を覗きこみながら笑うワルター。


「ああ、楽しいぜ。調子に乗った連中に思い知らせてやる」



二人は一番激しい音のする方へと駆けていく。




そこでは地上最大の殴り合いが繰り広げられていた。拳と拳が交差し、肉と肉がぶつかり合う。だというのに聞こえてくるのは金属音のような物を打ち付ける音だ。とてま生身の肉体同士が奏でられる音ではない。


パワーと肉体はハデスが上。だがアスラには直撃を避け、直撃を与えるだけのテクニックがある。勝負はほぼ互角だった。



「うぉぉぉぉぉぉ!」

「ウガァァァァァ!」



二人の叫びがぶつかり合う。ルナ、ミカエル、ネス、モルガナは黙ってそれを見つめている。戦いに割り込む余地が無いことは勿論だが、それ以上に信じているのだ。アスラと、そしてハデスの強さを。



二人の戦いを見続けながら、ルナはある気配を感じ取っていた。無論、フェンリーとワルターだ。



「まだ懲りておらぬのか。ミカエル、病み上がりですまんが、追い払ってもらえぬか?」

「承知」



ミカエルは気配のする方へと走っていく。するとまるで待ち構えていたかのようにフェンリーとワルターが立っていた。その顔は覚悟と殺意に満ちており、とても先程までの二人とは思えなかった。


「何があったかは知らんが、覚悟だけはできているようだな」


ミカエルもそれ相応の敵意で二人の前に立つが、二人に変化は全く無い。恐れているわけではない、それ以上の怒りに満ちている。




「ゼロとレイアを傷つけたのはお前か?」




フェンリーが殺意のこもった声でミカエルに告げる。ワルターからはさほど殺意は感じないが、それ以上の敵意を感じる。



「黒い服を着た男と金髪の少女の話をしているのなら、それをやったのはハデスだ」


ミカエルの言葉を聞いたとたん走り出すフェンリー。ミカエルは先回りし、フェンリーの前に立つ。



「どけ! あのやろう、ぶっとばしてやる!!」

「落ち着け、行ったところで殺されるだけだ。今のハデスは手加減が出来ないからな」



その言葉を聞くと、今度はワルターが走り出す。



「たまらないね! 本気の神と戦えるなんて!」



フェンリーとワルターは口で言っても止まらないだろう。ミカエルは諦めることにした。




「先程の言葉は偽りだ。あの二人をやったのは我だ」




走り始めていたフェンリーの動きが止まる。



「そうか、なら後悔させてやる!」



くるりと体を回転させ、ミカエルに飛びかかるフェンリー。それを見るとワルターも剣を抜く。



「二人ならもっと楽しめそうだ!」



雷撃を放ちながら剣を振り下ろす。ミカエルはそれを避けもせず、正面から受ける。





「殺しはしない。ただし、死の淵までは連れていってやろう」




電撃を浴びたばかりだというのにミカエルは眉ひとつ動かしていない。



「ワルター、手加減するんじゃねぇぞ。俺は殺すつもりでいく」

「勿論さ。神を殺せたともなれば俺の強さが証明できるからね」



二人は全く臆せず、目の前の化け物に戦いを挑む。









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