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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 558 「本当に恐れている者」

「てりゃぁぁぁぁ!」




岩石が群れをなして天空から降り注ぐ。地面をぼこぼこに破壊しながらハデスを潰そうと次から次へと落ちてくる。


「手を抜くなよ!」


ミカエルは背中の羽を使い、空へと舞い立つ。そしてモルガナが降らせている岩石に触れ、それを粉々に砕いてつぶてをハデスへと放つ。その一つ一つが弾丸を優に越える威力を有し、それが数千という数をなしてハデスを追い詰める。




「どわぁぁぁぁ!」



鋼の肉体を持つハデスにも流石にダメージが入る。威力は皮膚を少しへこませる程度のものではあったが、それが数千も重なれば威力は絶大だ。そしてその弾丸にかまけていれば、本命のメテオが容赦なく頭上から迫り来る。直径十メートルはあろうかというその隕石に直撃すれば、ハデスも無傷ではいられないだろう。




「がぁぁぁぁ!!」





ハデスは落ちてきた隕石に拳を突き出す。その間にも無数のつぶてがハデスの全身を襲うが、覚悟していれば耐えられないレベルではない。隕石の重みでハデスの足元が沈み、全身に衝撃が走る。



「モルガナ! 押さえられているぞ!」

「わかってる!」



モルガナはハデスが受け止めた隕石の上から更に隕石を落とす。更なる衝撃がハデスを襲う。たまらず両手で受け止めるが、その二重で落ちた隕石の更なる上からもうひとつ隕石を落とすモルガナ。




だが、それでもハデスは押し潰せない。





「うがぁぁぁぁ!!」




両手で受け止めた隕石に頭突きをするハデス。激しい衝撃音とともに、連なった三つの隕石は完全に砕け散る。そしてその破片がモルガナとミカエルに向けて返ってくる。


迎え撃とうとするミカエルだったが、そのあまりにも速いつぶてに対処しきれず、肩を撃ち抜かれてしまう。



「う……」

「ミカエル! きゃ!」




防護壁を張るモルガナだったが、ミカエルの負傷により集中力が途切れてしまったのか、ハデスの破片に防護壁を突破されてしまう。モルガナの耐久力ではあれを一発でも食らえば致命傷だ。しかし、もうモルガナにあれを退ける力は残っていない。



「もうっ! やめてよ!」



モルガナが泣きべそをかきながら叫んだその時、目の前まで迫っていた破片が突如猛スピードで地面に落下した。それだけではない、辺りに散らばっていた全ての破片も同様に地面へと落ちる。そしてそれを放ったハデス自身も膝をついている。






「ごめん、遅くなったね」

「よくぞ二人でもちこたえたぞよ」





包帯で全身をぐるぐる巻きにした少年、ネス。そして何重にも重ねた着物と目を覆い隠す前髪が特徴的な女性、ルナ。二人の神がモルガナとミカエルの前に姿を現した。



「ルナ! ミカエルを!」


モルガナは地面に降り、傷をおさえているミカエルを指差しながらルナに叫びかける。



「無茶をしおって……」



ルナはヒラヒラと飛びながらミカエルのもとへとやって来る。


「すまんな」

「お主はいつになったらハデスに勝てるのかえ?」


ミカエルの体の傷を治療しながら心の傷をえぐるルナ。渋い顔をしながらルナを睨み付けるミカエル。



「そうは言うが、ハデスの力は今も増している。正直仲間でありながら怖いくらいだ」



治っていく肩の傷を眺めながら呟くミカエル。そんなミカエルを見て、ルナは小さくため息をつく。



「ふう、だから主は駄目だと言うのじゃ。今一番恐れているのはハデスであろう?」

「……!」



ハデスはネスに重力で押さえつけられながらモルガナから絶えず攻撃を受けている。



「あやつは一番魔女から影響を受けている。言ってしまえばハデスは人間よりも魔族に近い。故に常に怯えているのじゃ、本当の意味で人間でなくなってしまう日が来るのではないかとな」



ハデスはもがき苦しんでいた。抑えられない力、そしてその力のせいで仲間を、世界を破壊してしまう恐怖。そう、誰よりもハデスを恐れていたのはハデス自身だった。



「ならばそのハデスを救ってやれるのは誰か、無論我らであろう?」

「ああ、その通りだ」




傷が完治したミカエルが立ち上がる。もうハデスに対する恐れは微塵もない。



「行くのじゃ。案ずるでない、また何度でも治してやるわい」



ミカエルはルナに向かって頷くと、再びハデスの方向へと飛んでいった。






「すごいね……ハデス。コレだけの負荷をかけてもまだ這っていないなんて」



膝を付けてはいるものの、ハデスはネスの攻撃を耐え続けていた。それどころか少しずつ立ち上がろうとさえしている。


(100倍にも適応してきた、でもこれ以上は周囲への影響が……)



2000年前に滅ぼされたこの星の重力を維持しているのはネスだ。ネスがいなければ重力は滅茶苦茶になり、とても人がすめる環境では無くなってしまうだろう。そのためネスは力のすべてを解放することはできない。今のネスにできる限界値でハデスを攻撃しているが、克服されてしまうのは時間の問題だった。


「はぁ、はぁ、もう無理だよ!」


モルガナも体力をすり減らしてしまい、もう宙に浮く魔力すら残っていない。




「諦めるのは早い。我らが諦めることはあってはならない。それに……来たようだ」



完全回復したミカエルがモルガナたちの前に現れる。するとモルガナたちは気配を感じとる。一番に信頼をおいているあの男の気配を。


「アスラ……」



もう限界に来ていたネスが安堵の声を漏らす。





「ハデス、いま救ってやる」






神王アスラ。神の中の神。アスラはネスに重力を解くように伝えると、ハデスに向かって突っ込んだ。








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