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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 552 「フェンリーVSハデス」

フェンリーが居なくなったことでゼロたちは更に暗くなってしまった。特にその原因を作ってしまったレイアは深く落ち込み、まともに笑顔を見せることがなくなってしまった。あそこでフェンリーを引き止めていればレイアにこんな思いをさせることは無かったかもしれない、そう思うゼロ。



(フェンリー、一体どこへ行ってしまったんだ)



探そうにもあてが無さすぎる。逃げようと言っていた以上、ゲートには向かっていないだろうが、自暴自棄になり、向かったとも考えられる。だが、仮にそうだとしてもゼロにゲートに飛び込むという選択肢は無い。レイアを一人にするわけにはいかないし、レイアを連れて魔族のねじろに向かう事もしたくはない。できれば来る決戦の日まで一緒にここで過ごしたかった。



その一緒にはもちろんフェンリーも含まれる。



(バカだな、俺は)



立ち上がり、悲しそうなレイアの頭をさするゼロ。



「すまなかった、お前にばかり辛い思いをさせて。探しにいこう、一緒に」


ゼロの言葉に一瞬困惑するも、笑顔を浮かべながら立ち上がるレイア。


「はい! 勿論です!」


レイアに笑顔が戻ったことで、ゼロはほっと胸を撫で下ろす。



「ケイト、ワルター、お前たちはここに残ってくれ。万が一フェンリーが戻ってきた場合、誰も居ないのは困るだろう」


ワルターは椅子に座りながら手を上げる。


「ああ、そうだね。俺は行っても足手まといになりそうだし、一人で待つのは寂しいからね。よろしく頼むよ」

「わたしも、行きたかったけど、待ってる。きっと見つけてね」


フェンリーを心配する二人に深く頷くゼロ。ゼロとレイアはフェンリーを探すために宿を出た。




その頃フェンリーは、あるいみゼロの予想通りゲートの前にいた。



「来ちまった」



自分でもどうしてここに来てしまったのかわからなかった。ただ、ゼロたちの言うとおり自分自身に対して負い目を感じていたのは事実だ。抜け駆けというのは趣味ではないが、自信が持てるほどの力を手に入れたかった。



「げ、やっぱまだ居るじゃねぇか」


ゲートはハデスが守っていた。正直あの神をどうにかしてゲートへ入ることは難しい。


(でもあいつらだって突破したんだ。俺だって……)


一歩ゲートに近づくフェンリー。






「それ以上進むのはやめておけ」

「いいっ!」



ハデスはこちらを見ずに声をかけてくる。思わず立ち止まるフェンリー。



「何かがおかしい。やはりアスラの懸念した通りだというのか……とにかくやめておけ」


昨日見た映像を思い出すハデス。あれがゲートの先の映像だとするならば、これ以上犠牲を増やすわけにはいかない。



「お、脅したって無駄だぜ! 俺は力を手に入れんだ! 神様だからって邪魔はさせねぇ!」

「自惚れるなよ、人間」



耐えられないほどの圧力がフェンリーにかかる。力を使う暇すらない。


「がっ!」

「どうした、邪魔はさせないのだろう?」



ハデスはただそこに居るだけだ。何かしらの攻撃を仕掛けたわけでもない。それなのにフェンリーは進むことすらできない。



「貴様ら人間の力は所詮我々の絞りカスだ。それが魔族の手を借りるという前提が間違っている」

「んなこたぁわかってんだよ!! 俺はもう逃げねぇ、できることがあるなら何でもする! あいつらが笑って暮らせる世界を目指して何が悪い!」



一歩、一歩、押し潰されそうになりながらも足を前へと出していくフェンリー。皮膚が耐えきれなくなり、切り裂かれて血が滲み出してもその歩みは止まらない。無理矢理皮膚を凍らせながら前へと進んでいく。



「魔女は我々で何とかする。お前たちでは足手まといだ」

「あんたらだって2000年前は人間だったんだろ? だったら俺らにだって何か戦える手段があるはずだ!」



気がつけばフェンリーはハデスの直ぐ近くまで来ていた。何がなんでも止めるつもりならここでフェンリーの体をつかみ、投げとばすなり突き飛ばすなりすればいい。死なない程度に負傷することにはなるだろうが、得たいの知れない空間に放り投げるくらいならその方がよっぽどマシだ。



だが、ハデスにはそれができなかった。目の前に居る男の目が、2000年前の自分達と重なってしまったからだ。



ハデスの力が急に弱まり、体が自由に動くようになるフェンリー。



「おっ、と! さんきゅ!」



ハデスが自分を認めてくれたと感じたフェンリーは一目散にゲートへと駈けていく。



(わりいなゼロ。だがよ、きっとお前たちを守れるくらい強くなって戻ってくるぜ!)


ゲートへと足をかけるフェンリー。そのフェンリーのコートを掴むハデス。



「待て」

「ぶぐっ」



急に掴まれたことで首がしまるフェンリー。転送されかけていた体が無理矢理引き戻される。



「な、なんなんだ! まだ何かようでもあるのよ!」

「覚悟はあるのか?」



慌てるフェンリーに対して真剣な眼差しで尋ねるハデス。


「覚悟? できてなきゃここまでこねぇよ! もういいだろ!」


再びゲートへ向かおうとするフェンリーを押さえつけるハデス。




「いてててて! なにすんだ!」

「魔族に頼る必要はない。覚悟があるというのなら、この俺が鍛え直してやろう」



思いがけない言葉に戸惑うフェンリーだったが、ハデスの押さえつけが思った以上に強くてそれどころではない。



「まじか! それは嬉しいけどよ、もう手ぇどかしてくれ! 死んじまう!」


内蔵が飛び出そうだ。それでもハデスは手をどかさない。



「俺はこれ以上の手出しをしない。まずはこの窮地を脱してみろ。できなければ死ぬ」

「はぁぁあ!? ふざけ……ごふっ!!」



ハデスは至って本気だ。それは彼の手から伝わってくる。命を懸けた特訓が始まった。






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