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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 548 「死の実感」

ガイアが目を覚ました頃、周りでは既に戦いが始まっていた。そこにはマークとシオン、そしてリラやパーシアス、レックスにロミー、ジャックやクイーン、おまけにセシルまでもが集まっていた。



(なんだ? 試練は終わったのか? 中将は?)


顔、顔、顔、様々な顔があるが、ジャンヌの顔はどこにもない。もとの世界に戻ったのか? そう思うガイアだったが、どうやらそうではないらしい。先程までいた草原とも思えない。まるで語られてきた地獄のような風景だ。



「兄上!」


目を覚ましたガイアに駆け寄ってくるマーク。



「なんで私たちを殺したの!?」


何があった? そう聞くよりも先にシオンが叫ぶ。その言葉の先にはマリンの姿が。




「何の不満がある? どのみちお前たちは死ぬのだ。ならばせめて苦しまないようにと計らったのだが?」



マリンにとって死とは理解しがたいものだった。いくら死んでも死にきれないのだから。死と苦しみはイコール、マリンは生まれた頃からそう考えていた。そのマリンからしたら苦しみもなく死ねるということはこの上無い幸福なことだった。



「たかだか100年足らずの人生……最後は腐りながら死んでいく、その方がいいとでも?」


マリンの言葉に対して誰も反論しようとはしない。この目の前の魔族に何を言ったところで無駄だと悟ったからだ。



「しかしよ、本当に俺たちは死んでんのか!? 全くそんな実感わかないぜ?」


ほっぺをつねりながら疑問を口にするジャック。マリンの言うとおり苦痛はまるでない。夢の中のようだ。



「そうか、確かにそれを証明することは難しいな。体験してもらうとしよう」

「へ?」


そう言うと、マリンは指先からエネルギーの塊を撃ち出す。それは誰も反応できないスピードでジャックに向かって進んでいき、ジャックの脳天を撃ち抜く。



「え?」



ジャックの隣に居たクイーンは何が起きたかわからないまま、倒れていくジャックを見つめる。脳天が撃ち抜かれていることに気がつくと、弓を構えてマリンに矢を放つ。



「よくも、よくもやってくれたわね!!」



歯を食い縛りながら連続で矢を放つクイーン。その全てがマリンの手前で減速し、地面に落ちていく。



「そう焦るな。その男はもう死んでいる。もう一度死ぬことは無い」

「黙れ! この化物!」


無駄だとわかっていながらも攻撃を止めないクイーン。指先を血で湿らせるほど攻撃を続ける。



「愚かだな、後ろを見てみろ」

「そんな話に誰が……!」


一度はマリンの話を無視するクイーンだったが、背後から感じる気配に思わず振り返る。そこには何事も無かったようにこちらを見ているジャックの姿があった。



「あれ、俺今確かに……」



全員の視線がジャックに集まる。


「おい、あいつ確かに頭を撃ち抜かれてたよな!?」


レックスが慌てながらジャックの頭を指差すが、そこには何の傷もない。


「何かのトリック?」


不思議そうにロミーが首をかしげる。




「いいえ……死んでいるのかはともかく、ここが私たちの知る世界とは切り離された空間ということは確かなようよ」


震えながら口を開くリラ。


「ん? どういうことだリラ。俺にはさっぱりわからないぞ」


怯えるリラの顔を覗きこむパーシアス。



「使えないのよ、加護が」



リラは指先を動かす。いつもは何も考えてなくても自由に扱える筈の力がまるで反応しない。


「加護は神から力を分けてもらって初めて使える……きっと神と切り離されたから使えなくなってしまったんだわ」



力が使えなくなったとわかったら、とたんに怖くなる。体の一部を奪われたような消失感にも襲われる。



「しかし、俺のダインスレイヴは加護が使える」

「あ、私も私も!」


ガイアとシオンが名乗りを上げる。



「残念だがお前たちのはそこの女の話とはわけが違う。七聖剣は加護を受けた剣ではなく、加護を封じ込めた剣だ。神々がおらずとも、それ単体で機能する。そこの氷牙の娘もそれは加護ではなく、連中の体質だ」


マリンが理由を説明する。



「じゃあ、本当にここは切り離された世界……」


青ざめてくレックス。そのレックスの肩をぽんっと叩き、頼もしい笑顔を見せるロミー。



「大丈夫だよ! こういう時は敵を倒せば解決するのがお決まりでしょ?」

「ロミー、そうだな!」



二人はマリンの前に出る。



「下らない。私は万能に近い存在だが、万能ではない。死人を蘇らせることなど不可能だ」

「やってみなきゃわかんねぇだろが!」


何の策もなくトビコンデクルレックスに対して首を横に振るマリン。



「残念だ。お前は見込みがあると思っていたのだが……」


指をならす。すると一瞬で倒れるレックス。レックスだけではない、その場にいる全員がバタバタと倒れていく。


「兄……上……」

「マーク!」



ガイアの隣に居たマークも声を漏らしながら倒れる。気がつけば、立っているのはガイアだけだった。



「ほう、私の気にあてられてまだ立っていられるか。それもその聖剣のおかげか?」



何もない空間から机と椅子と紅茶を取り出すマリン。椅子に腰掛け、優雅に紅茶をすする。


「諦めろ。そしてこの永遠を楽しむがいい」



ガイアは何度も何度もマリンに剣を向ける。しかしマリンにその刃は届かい。








その後、マリンの闇から解放されたガイアが目を覚ますと、周りには誰もいなかった。






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