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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
558/621

episode 547 「四人」

四人が去った後、となりの部屋からフェンリーとケイトが顔を出す。二人は気を失っているワルターの世話をしていた。



「行っちまったか」

「ずいぶん、静かになった」


二人はそうとう疲れているようだ。付きっきりで看病し、目が覚めたと思ったらまた死にかけて戻ってくる、そんなことを繰り返されては看病する側の身が持たない。



「リースはこいつを20年世話してたんだろ? まったく信じられねぇぜ」


リースの辛抱強さと包容力に感服するフェンリー。椅子に腰掛け、タバコに火をつける。いつもは煙たがるケイトだが、フェンリーの苦労を察して今回は何の文句も言わない。



「いっそ氷付けにしちまうか?」

「それがいい。私のロープで、巻き付けてからにすると、なおいい」



そうとう疲れがたまっているのか、二人は物騒な事も言い始める。レイアの笑い声が響く。



「俺たち四人だけってのも久しぶりだよな」


しみじみと語るフェンリー。


「うん、なつかしい」


しばらくゼロたちと離れていたケイトは、目に涙を浮かべながら答える。


「ずっと一緒に居られたら、どれだけ嬉しいでしょうか」

「俺はいつまでもそばにいる。何があっても」



レイアの手を握るゼロ。顔から火が出るほど恥ずかしがるレイア。そのレイアの背後から、目覚めたワルターが茶化してくる。



「酷いじゃないか、俺だけ仲間はずれにするなんて」



扉に体をもたれかけさせながらにやにやとレイアの表情を観察しているワルター。ゼロはわざと大袈裟に立ち上がり、ワルターの前へと移動する。



「元気そうで何よりだ」

「そうでもないさ。正直もう限界でね、立っているのでやっとなんだ」



そう言うワルターの体は確かにあちこち傷が出来ており、巻かれた包帯も赤くにじんでいる。連戦に次ぐ連戦で体はとっくに限界だった。



「よかったぜまったく、手当てする方の見にもなれってんだ」

「そうそう」


勢いよく副流煙を撒き散らしながら声を上げるフェンリー。ケイトも大きく頷いている。



「ありがとう、君たちには本当に感謝しているよ。君たちと出逢えて俺は本当に幸せ者だ」


屈託の無い笑顔を見ると何故か許せてしまう。まったくワルターの本心が読めない。



「調子狂うぜ」


フェンリーは外へ出ていく。煙を撒き散らしている自分が嫌になったらしい。



ゼロたちを一通りからかうと、ワルターは再びベッドへと戻っていく。思っている以上に重体のようだ。



「レイア、俺たちも少し休もう。気を張りすぎた」


息を深くつき、椅子に腰掛けるゼロ。ここ数日、心の休まる時など一時もなかった。



「はい、では暖かい紅茶でもいれますね」

「わたしも、手伝う」


台所へと向かうレイアにてくてくとついていくケイト。小さな手で一生懸命紅茶をいれようとしている。



ゼロは些か苦い紅茶を口に運びながら想いにふける。



(マリンの思惑……やつはあのゲートの先で何をしている? そもそも俺たちは本当に必要なのか? あれほどの神々が存在し、魔女と戦うというのなら俺たちは邪魔でしかない。いくら強化しようとも所詮は非力な人間だ、神のようになれるわけもない。それともそのような方法が存在するとでもいうのか?)



「ど、どう?」


自分のいれた紅茶の感想を尋ねるケイト。



「ああ、いくら考えてもわからない」

「わからないのはおかしい! うまいか、まずいかで言ってよ!」


曖昧な返事をするゼロを怒鳴るケイト。



「……? 状況は良くない。まずいと言う他ない」



ケイトの質問の意味がまるで理解できていないゼロ。不味いという言葉を聞いて、ケイトは深く落ち込んでしまう。


「そう……がんばったのに」

「いったい何の話を……」


下を向くケイトに手を伸ばすゼロ。その手をケイトは振り払う。



「もういいよ! レイアと、いちゃついてれば!」



トアを勢いよく開けて飛び出していくケイト。窓の外からフェンリーに慰められているのが見える。



「何を怒っている?」

「ふふ」





ゼロがケイトが怒っている理由を必死に考えていた頃、ガイアたちはマリンの足下に転がっていた。



「く……そ」



ダインスレイヴを杖がわりに立ち上がるガイア。



「まだ立てるのか。死んでいるというのに生きのいいやつだ」



マリンは何度倒しても向かってくるガイアに嫌気がさしはじめる。



「諦めろ。お前たちはもう死んでいると言ったはずだ。私に八つ当たりをしても仕方の無いことだ。仮に私を殺せたとしても生き返ることはできんぞ?」



怠惰の力を完全に取り戻したマリンには傷一つつけられない。仮につけられたとしても嫉妬の力によってすぐに回復されてしまうだろう。ガイアになすすべは無かった。



「ここで、死ぬわけにはいかないんだ!」

「そうか、それは残念だったな」



マリンの手のひらから闇が溢れる。傲慢の力だ。その闇はガイアを包んでいき、その体内に侵入していく。


「かっ!」


呼吸ができなくなり、その場に倒れるガイア。


「残念だよ、本当に。お前が2000年早く生まれていれば私は産まれずに済んだかもしれない」



マリンは悶え苦しむガイアを置いてその場を去る。儚げな表情を残して。












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