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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 546 「向かう者、向かわない者」

「神よ、我々を通してもらおう」



半ばリラに押される形でアスラの前に出るパーシアス。恐れの数値がもう既に振りきっており、一切の恐怖を感じない。


アスラはため息をついて立ち上がる。


「貴様が何者だかは知らんが、もはや止めはしない」



目は覚めたものの、全快とは程遠いルナをちらりと見ながら告げるアスラ。もちろん人類のことは大切だが、それ以上に仲間が大切だ。もうこれ以上傷つけるわけにはいかない。



「それは助かる。止めるのなら戦わなくてはならんからな。そうなれば俺はどうなっていたか……」



弱気な発言に頭を抱えるリラ。


「とにかく行きましょう」

「はい」



神々に警戒しながら進んでいく三人。パーシアスがゲートに足をかけた瞬間、アスラが背後から声をかけてくる。




「忠告だけはしておく。そのゲートは魔族の作り出したものだ。つまりその先に通じているのは魔族のもとか、その縁の地だ。その意味がわかるな?」


アスラの話を理解しながらも、パーシアスは躊躇せずに進む。



「魔族はあの女以外死んでいるのだろう? ならば恐れることはない。それにアーノルトやガイア・レオグールが先に行っている、これ程心強い味方は居ない」



勝ち誇った笑顔を見せながらパーシアスの姿は消えていく。



「そういうこと。忠告どうもありがとう」


リラも続いていく。



「ご心配なく。すぐに戻りますわ」


二人の後をセシルも追いかける。



三人の姿が消えると、再びアスラは腰を下ろす。


(あの男の言うとおり、魔族はマリン以外消滅した。だとするならあの先は何らかの魔族に関係する土地ということになる……)


パーシアスの発言を受けてゲートの通じている場所を考察するアスラ。その場所がわかれば、ゲートを通らずともそこに向かうことが可能になる。



(魔女の封印されている神殿か? いや、あそこに飛べば封印が解けてしまう恐れもある。我々が居ない段階でそれは無いだろう……いやまてよ)



アスラは再び立ち上がり、声を荒げる。


「マリンの裏切り者視野に入れなければならない。モルガナ、ミカエル、お前たちは至急メイザース大神殿に向かってくれ。何が問題があればすぐに知らせろ」


アスラの言葉を受けて二人は迷いなく立ち上がる。



「りょーかい! なるほどね、マリンが私たちを騙して魔女を復活させるんじゃ無いかって思ってるんだね」

「まだ魔女の気配は感じられないが、用心に越したことは無いだろう」



二人は全速力で神殿に向かっていった。




「で、あたしらはどうすんだ? マリンが帰るまでずっとここでだべってるわけにもいかないんだろ?」

「いい加減体も鈍ってきたところだ」



ルインとハデスがおもむろに立ち上がる。暇潰しに手合わせでもしようという考えらしい。


「やめておけ。いつマリンが帰ってくるかわからない以上、体力は温存しておくべきだ」



それをお前が言うか、という視線がアスラに集まる。



「とにかく、相手は2000年間敵対してきた魔族だ。あらゆる事態を想定し、対処しなければならない。それこそが俺たちの役目、そしてアレスとの約束でもある」


ちゃかした目線を送っていたルインも真剣な眼差しになる。



「わかってるよ。約束だもんな」



それから神々は交代でゲートの見張りをしながら、魔族に関係のありそうな地をまわることにした。







「やっぱりおかしいよね。結局セシルたちも戻ってこないし」


ロミーが椅子に座り、足をぶらつかせながら呟く。セシルたちが行方をくらましてから3日が経過していた。



勢いよくドアが開き、ジャックとクイーンが姿を現す。息を切らしており、そうとう走り回ったことが伺える。



「駄目だ。30キロ圏内の町や村を探したけどどこにもいねぇよ!」

「そもそもほとんど住民が避難していて機能してないわ。買い物なんて嘘だったのよ」



レイアから水を受けとり、一気に飲み干す二人。



「だとするならば考えられる線はひとつ」


ゼロの言葉に皆が反応する。



「マリンのゲート、だな?」


レックスの言葉に全員が頷く。



「もう行くしかねぇだろ。このままじゃ俺たちだけ取り残されちまうぞ?」


ジャックが焦った様子で叫ぶ。マリンにも魔族にもたいして興味はないが、パーシアスたちに置いていかれるのは嫌なようだ。



「確かにな。せっかくここまで来たんだ、やれるところまでやってやろうぜ!」

「うん、なんだか私、ワクワクしてきたよ!」


レックスとロミーはもう止めても行ってしまうだろう。



「そうね、サンのためにも世界を救わなくちゃね」


もともと行く気だったクイーンも三人を止める理由はない。




ただ一人、ゼロだけは行くとは言わなかった。レイアを危険な目にあわせたくないのもそうだが、何よりもマリンのことを信用していなかった。



「行くのなら止めはしない。だが、俺は行かない」



ゼロは断固として意見を通す。レイアもゼロのとなりに寄り添い、その意見を尊重する。



「皆さんで行ってきてください。私もここに残ります」

「レイア……すまない」



レイアが残ってくれることに心から感謝するゼロ。無論四人もゼロとレイアの意志が硬いことは重々承知している。無理に誘うことはせず、四人だけでゲートに向かうことにした。



「じゃあ、強くなって戻ってくるぜ!」


元気良く手を振るジャック。



「ちゃんと戻って来るから安心してね。まだレックスにおごらせて無いもん」

「げ、そうだった」


したなめずりするロミーと、顔を暗くするレックス。



「ワルターにもよろしく言っておいて。ま、あいつなら起きたらすぐに追いかけてくるだろうけど」



ワルターは目を覚ました後、幾度となく神に勝負を挑み、その度に気を失っていた。それを心配しながら行ってしまうクイーン。





そして当然、四人はもう戻っては来なかった。




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