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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 545 「黄泉へと続く門」

マークとシオンが去ったことによりアスラが戦う理由も無くなった。アスラは力なく座り込む。ネスはそれ以上の疲労感に襲われ、気絶寸前で倒れる。



ゴツン! とアスラの後頭部を殴るモルガナ。


「アスラ! あなたの気持ちもわかるけど、仲間を傷つけるのは違うでしょ!」


涙をたっぷりと浮かべながら訴えかけるモルガナ。アスラは立ち上がり、全員に謝罪する。



「すまなかった。立てるか? ネス」



ネスに手を貸すアスラ。ネスは一瞬ムスっとした表情を見せたが、素直にその手をとる。


「少しは手加減してよ」

「すまない。だがわかってほしい、得体の知れないあのゲートに不用意に近づけさせるわけにはいかないんだ」



ルナとネスを傷付けた挙げ句、マークとシオンを行かせてしまったことを深く後悔するアスラ。



「考えすぎだよアスラ。僕たちはマリンのことを誤解していたんじゃないかな? きっと今ごろは人間たちの特訓に勤しんでいるよ!」


暗く落ち込むアスラを励まそうと、わざと明るく振る舞うネス。それをわかっていながらも素直に嬉しいアスラ。



「ありがとう、ネス。とにかく今はルナの回復を待とう。謝らなければならないからな」








ゲートの中ではローズとリザベルトが力の限りマリンに斬りかかっていた。


「貴様……私たちを騙したのか!」

「騙した? 人聞きの悪い言い方をするな」



マリンはローズの攻撃をひらりとかわす。リザベルトはまるで見当違いの場所を攻撃している。自分たちは既に死んだと聞かされ、正気を保てなくなってしまったのだ。



「死人と会えたのだ。感謝してもらいたいところだな」

「黙れ!」



考えてみれば当然なのかもしれない。死人を蘇らせることはできない。ならば死人に会うためにはこちらが死ぬしかない。


アーノルトはどうすればいいのか解らなくなっていた。マリンを信じたい。信じている。アーノルトは死について考える。



(死、死とはなんだ? 俺は今死んでいるのか?)


何の実感もない。確かに傷はすぐに回復するし、痛みもさほど感じない。だが、それは生きていた頃と格段に違うというわけでもない。



(死とは耐え難い苦痛、或いは永遠の無だと考えていた。だが、案外そういうわけでもない)


苦痛は無い。今こうして思考を巡らせることもできている。ならば生きている頃と大差無い、或いはこちらの方がいいのではないかと考えてしまう。


(そう、苦しくない。生きる、生き抜くための苦痛が無い)



アーノルトは、死を実感する。






「そう、死ねばすべてが解決する。永遠の逃走だ。もう二度と追い詰められることもない」



アーノルトの心を読んだマリンが呟く。しかし、誰もがそう納得できるものではない。



「ふざけるな! 私にはまだやらなければならないことが……姉上と約束したんだぞ!!」



アテナの加護を宿した力でマリンに襲いかかるローズ。マリンはその攻撃をいとも簡単に片手で受け止める。



「確かに素晴らしい力だ。だが私にも、勿論母にも勝てない。ならばどうするか?」

「勝てるまで挑み続ける! 何度でもだ!」



マリンはつまらなそうにローズを睨み付ける。





「答えは簡単だ、逃げればいい。母はここまでは追ってこれない。そもそも私がいなければ神々の鎖から逃れることもできないのだ。母の復活は未来永劫訪れない。これはいわば戦わずして私は勝ったということではないか?」






背筋が凍る。圧倒的な威圧感がローズを襲う。



「なんて……怠惰なんだ」

「そう、それこそが私の本質だ」



ローズは抵抗する意思をなくし、その場にへたりこむ。









「ゼロさん、皆さん戻ってきませんね」


レイアが寂しそうにゼロに話しかける。


「ああ」


ゼロの顔も曇っている。


マークとシオンが飛び出してから既に一週間が経過していた。未だに誰一人として戻ってこない。



「やっぱ行くべきじゃねぇかな?」

「うん、そうだよ!」



レックスとロミーはゲートへ向かうべきだと主張する。



「だけど神が守ってんだろ?」

「けれどあの二人が突破できたなら私たち全員で向かえば余裕じゃない?」


ジャックの言葉を否定するクイーン。どちらかと言えばクイーンもゲートへ向かう派のようだ。それよりもシオンやマークに遅れをとった事が気にくわないのかもしれない。



「セシルたちはどうしたのですか?」


姿の見えないセシルとリラとパーシアスを心配して尋ねるレイア。


「ああ、近くの町まで買い物に行ったみたいだぜ。まったく緊張感のない連中だよ」


少しあきれた様子で答えるジャック。しかしそれは勘違いだった。





「ねぇ、本当に行くつもりなの?」

「ええ、わたくしだけいつまでも足手まといは嫌ですわ。それにあの男もあの先に居るのでしょう?」


リラの質問に答えるセシル。三人は神々のいる広場のすぐ近くまで来ていた。



「お前が行こうと行くまいと俺には関係ないが、リラが行くと言うならば当然俺も行く」



試練など何の興味も無いパーシアスだが、リラに対しての興味は大いにある。



「そうね。このまま待っていても解決しないし、こっちにいるよりも向こうの方が安全かも知れないわね」



三人はゲートを目指して歩き出す。それが黄泉へと続く門だとは思いもせずに。








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