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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
555/621

episode 544 「ルナ」

全身全霊のアスラとマーク、シオンが激突する。そもそもの生物としての作りが違う両者がぶつかれば、それだけでマークとシオンは消滅してしまうだろう。それほどの実力差があり、それについてはマークもシオンも理解していた。


だが、それでも止まれない。マークはガイアのために、シオンはマークのために。それが自分だと信じ、自分を貫くために命を懸ける。




(お前たちはここで死ぬ。だが、俺がお前たちを忘れることはないだろう。認める、2000年間でお前たちがもっとも厄介な人間たちだとな)




殺意の塊となるアスラ。世界をも滅ぼせる力で二人の人間にぶつかる。




「待つのじゃ」

「待ってよ」




その両者の間に割って入るルナとネス。二人も力を解放し、全力でアスラの攻撃を止める。他の神々も協力し、戦いの被害が周りへ広がらないように全力で受け止める。



「かっ! たくもうなんちゅう威力だよ!」

「ここまで本気で人間を殺しにかかるとはな」



肉体に自信のあるルインとハデスでさえアスラの発したエネルギーに驚愕している。アスラの攻撃を直接受けたルナとネスの驚きはそれ以上だ。



「受け止め……きれない」

「諦めるでない。お主の力なら可能な外じゃ。でなければ飛び出したりせんじゃろう」



ネスは重力を操り、アスラの攻撃を遮り続ける。ルナはそのネスの体力を回復し続ける。アスラの攻撃を消滅させることはできないが、受け続けることなら可能。あとはアスラとネスの我慢比べだ。




「そこをどけ。消滅したいのか?」



アスラがネスに告げる。アスラにはまだまだ余裕がみられる。


「したくないし、させたくないよ! 友達が人を殺すところなんて見たいわけないじゃん!」



必死の抵抗を見せるネス。余裕はあまり感じられないが、気迫と根性で乗り切る。



「そこまでして何故人間を庇う!」

「僕たちが何故ここに居るか忘れたの!?」


ネスはアスラに食いつく。


「我々が守るのは個人ではない、秩序だ! 秩序を乱す不穏分子は排除しなければならない!」

「だったら今、僕もその不穏分子だ! 僕ごと排除してごらんよ!」



ネスの体がダメージを受け始める。ルナの回復量をアスラの破壊力が上回ってきたのだ。このままではネスの言うとおりネスとルナもろともアスラに消し炭にされてしまう。



「アスラぁ!!」



ネスの悲痛な叫びがこだまする。



「おいおいどうすんだよ!」

「たすけなきゃ、でも……」


ルインもモルガナも被害を食い止めようと必死だ。とてもルナとネスを助けに行ける余裕は無い。




まず始めに限界が来たのはルナだった。そもそも瀕死のマークとシオンを助けた直後だったということもあり、体力はそれほど残されてはいなかった。常に限界を越えてくるアスラの攻撃から身を守り続けた結果、ルナのルナの体力は底をつく。



「ネス、済まぬが限界じゃ……」

「ありがとう、ルナ。後は僕がやる!」



ネスの頼もしい背中から目を離し、マークたちの方へ振り返るルナ。



「なんで俺たちを助けるんだ?」


困惑した表情でルナを見つめるマーク。



「当然じゃろう? 人を助けるのが神じゃ」



ふっと糸が切れたように意識を失くすルナ。慌ててルナを受け止めるシオン。その体を持って驚いた表情を見せる。


「どうしたんだシオン?」

「軽い……すごく。普通の女の子みたい」


神という超次元の存在が今手の中にある。しかし抱いた感情は恐怖や感動などではなく、感謝だった。



「ありがとうルナ。こんな小さな体で私たちを守ってくれたんだね」



二人のようすを背中越しに感じるネス。少し微笑む。



「二人とも! ルナを連れて離れて! 僕ももう限界だ!」

「だ、だが……」



ネスが限界なのはよく伝わってくる。衣服がバラバラに分解され、こちらに流れてくる空気や衝撃が赤く染まり始めたからだ。だからこそ、ここで逃げればネスがどうなるのかよく分かる。



「心配しなくていい。僕は神様だから」



包帯でぐるぐる巻きにされた顔面から少年の笑顔が漏れる。それを見たマークはシオンの手を引いてゲートへと走っていく。



「待て! 人間!」


走り去っていくマークに向けてエネルギー弾を放つアスラ。


(行かせるわけにはいかない……あのゲートは何かがおかしいっ!)


しかしアスラの弾はネスの重力操作によって地面へと飲み込まれていく。



「ネス、もうやめろ! これ以上やればお前の体が……!」

「よくわかってるね」



ネスはそれでも抵抗をやめない。



「ルナは置いてけよ、試練を受けんのはお前らだ」


ゲートへ向かうマークに告げるルイン。シオンはこくりお頷き、ルナをそっと手放す。



「ありがとうって伝えてください! 皆さんありがとう!」


手を振りながらゲートへ飛び込んでいくシオン。マークもすぐ後ろから追いかける。



「待て! そのゲートは……!!」



アスラの声が届くよりも先にマークとシオンの姿はゲートの向こうへと吸い込まれていった。





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