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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
552/621

episode 541 「再びの別れ」

最初に目を覚ましたのはジャンヌだった。




「あー負けたのか、私。悔しいものだね、結構」

「姉上!」


倒れたまま呟くジャンヌに駆け寄るリザベルト。



「良かった……生きてて本当に!」

「だから死んでるって」


泣きじゃくるリザベルトの頭を撫でながら体を起こすジャンヌ。



「ガイアは?」


自分を倒した相手を探すジャンヌ。ガイアは少し離れた場所でローズの膝の上にいた。


ガイアピクリとも動かず、息もしていない。僅かに心臓は動いているようだが、いつ止まってもおかしくない状況だ。



「大丈夫。そんな顔しないでローズ。ここでは人は死なないから」


リザベルトの頭をなで、ローズに微笑みかけ、ジャンヌは立ち上がる。



「私の役目は終わり。それじゃあお別れね」

「姉上……」



ジャンヌに抱きつくリザベルト。顔を必死で押し付ける。もうどこにも行かせたくない。このままずっと一緒に居たい。駄々をこねる子供のように体を震わせながら叫ぶ。



「リズ、私も寂しいわ」


ジャンヌはリザベルトの行動を咎めるでもなく、優しく抱き寄せる。



「ローズ、あなたも来る?」

「いえ、私は……」



羨ましそうにしているローズに声をかけるジャンヌ。



「いいのよ。一応今、誰も見ていないから」



ジャンヌの優しい言葉が耳に届いた頃、ローズは既に走り出していた。大好きな妹と姉に抱きつくローズ。普段は決して見せない涙を大量に零す。





「魔族の手の上で転がされるのは癪だけれど、あなたたちとこうしてまた会えたのだから文句は言えないわね。ガイアによろしく」





そう言い残してジャンヌは消えていった。







二人は暫くジャンヌの温もりの余韻に浸ったあと、涙を拭いて立ち上がった。


「いくぞリザベルト。私たちの役目を果たしに」

「はい、姉上。ですが、どうすればもとの世界に戻れるのでしょうか?」


ジャンヌの話しによれば彼女を倒せばもとの世界に戻ることができる筈だ。しかし、そんなようすはまるでない。



「確かに、とりあえず准将が目覚めるのを待とう」



しかし、待てど待てどガイアの目は覚めない。確かに生きてはいるようだが、一向に意識は戻らない。


理由は明白だ。ガイアの握っているダインスレイヴが命を吸い続けている。死ねないことを良いことに、ここぞと言わんばかりに吸っている。先程ガイアが吐き出した魂の波動を取り戻そうとしているのかもしれない。


きっとガイア自身もこうなることが解っていたのだろう。だがらこそ最後の最後までとっておいた。



「姉上、このまま准将も目を覚まさず、私たちも戻ることができないなら、何のために姉上を……」


不安で押し潰されそうになるリザベルト。それはローズも同じだった。世界を魔女から守るため、一番大切な姉に剣を向けたのだ。それが意味をなくすことなどあってはならない。





不安を感じていたのは二人だけではない。マリンの隣に居るアーノルトも疑問だらけだった。


「マリン、何故彼女らは戻らない? 戻るための条件は満たしたのではないのか?」

「条件? 何のことだ?」



マリンは真顔でアーノルトに聞き返す。




「彼女らは戻らないのではない、戻れないのだ。そもそも戻る手段など存在しないのだから」

「……何?」





マリンは困惑するアーノルトを置いて地上へと降りていく。



「よくやった。お前たちには永遠の安息を約束しよう」


そしてこちらに対して敵意を向けているローズとリザベルトに告げる。



「安息? それは魔女を倒してからの話だろう。早く私たちを戻せ」


剣を構えるローズ。まだアテナの加護は残っている。



「その必要はない。ここにいればもう戦う必要はないのだから」



マリンが指をならすと辺りの風景が一変していく。そこは気持ちのいい風が吹いている草原などではなく、何もない無の空間だった。



「まさか……」


冷や汗をかくローズ。不安が止めどなく押し寄せてくる。













「ここはもうあの世だ。お前たちは既に死んでいる」
















アスラが重たい腰を上げる。


「いくらなんでも遅すぎる。もう3日も過ぎたと言うのに誰一人戻っては来ない」



既にそこには神以外は居らず、他の面々は近くの村の宿屋で待機していた。もっともその村は神々の戦いで村民が全員避難しており、もぬけの殻となっていたが。



「兄上はまだ戻ってこないのか!!」


マークの限界は近かった。せっかく兄のもとにたどり着いたというのに何の役にもたっていない。腹が立って仕方がなかった。



「落ち着いてよまーくん」

「これが落ち着いて居られるか! 俺は行く!」


シオンを振り切り、宿屋を飛び出すマーク。



「待ってよ! 今ゲートは神様たちが抑えているんでしょう? 行っても無駄だよ!」



ガイアたちがゲートに消えてから1日が過ぎた頃、アスラはゼロたちを追い出し、ゲートを封鎖していた。



「ならば力ずくでも突破してやる!」

「まーくん!」



マークは背中の鞘にウォーパルンとエクスカリバーを差し、神の居る広場へと向かっていった。






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