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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 540 「ダインスレイヴ」

ローズとリザベルトは自分たちでも驚くほど体がよく動いた。まるでアテナの加護を受けていた時のようだ。二人がかりではあるものの、ジャンヌの攻撃を受けきるほどだ。


「姉上……」

「ああ、これが加護か」



二人の体には力がみなぎる。気分も高揚し、ジャンヌに立ち向かうことに何の恐れもない。



「なぜあのものたちにまであれほどの力が……」


自分に追随するほどの力を発揮する二人の姿にアーノルトも目を奪われる。


マリンだけがその理由を知っていた。


「言った筈だ。ここは現世と冥界の狭間だと。彼女らに力を与えていた神が誰だか忘れたか?」

「なるほど……」


アーノルトも二人の強さの秘密を理解する。


彼女らに力を与えていたのは十闘神アテナだ。そしてそのアテナは今では冥界にその魂を置いている。その魂が二人に力を与えているのだろう。



だが、それは二人だけに適応される話ではない。もちろんその姉であるジャンヌもアテナの加護の恩恵を受ける。





「随分強くなったわね。これならもう少し本気になってもいいかしら」




一振り。それで大地は二つに割れる。超人的な肉体を手に入れたローズとリザベルトだが、それでもあの攻撃の直撃だけは避けなければならない。



「す、凄い……」


改めてジャンヌの強さを目の当たりにするリザベルト。


「気を抜くなリザベルト! 相手は姉上だ!」


へたりこむリザベルトの襟を掴んで立たせるローズ。今の姉はとても待ってはくれない、そんな予感がする。




「准将! 手を貸してください! 我々二人ではとても太刀打ちできない!」

「あ、ああ」



すっかり立場が逆転していることに困惑しながら立ち上がるガイア。だがそれは嬉しい誤算だった。


(確かに中将はかつてない強敵だ。だが、この二人と共に戦えば何とかなるかもしれない)


ガイアに希望が見え始める。だが、希望と絶望は表裏一体ということをすぐに思い知らされる。





「挟み撃ちだ! 三人で取り囲むぞ!」

「はい!」

「了解です!」



どれほど戦ったのだろうか。永遠とも刹那とも思える。ただ一つだけはっきりしているのは、その間こちらの攻撃がかすりもしないということだ。どれだけ息を合わせようとも、どれだけ隙を突こうとも、ジャンヌには届かない。



「その程度なのかしら? あなたたちの実力って」



三人の目から見たジャンヌはまさに神だった。



ガイアは覚悟を決める。



「ローズ、リザベルト」


ガイアがゆっくりとした口調で二人に話しかける。ローズとリザベルトはジャンヌから目線をガイアに移し、ジャンヌもまた剣をおさめて構えを解く。



「二人とも先に謝っておく。これから俺はもう一度ジャンヌ・ヴァルキリアを殺害する」


ガイアの宣言に顔を見合わせるローズとリザベルト。ジャンヌは興味ありげな顔でこちらの様子を伺っている。



「准将、姉上はもう死んでいます。あなたが殺した」


リザベルトの言葉がガイアの心を貫く。


「姉上を殺せるのはあなただけです」


リザベルトはガイアの腕を掴みながら付け加える。



「やってください。世界の為にも、あなたの為にも、私たちの為にも、姉上の為にも」


ローズはガイアのもとにひざまづきながら告げる。ガイアは二人の肩に手をのせ、一言「済まない」と呟く。




「なにか良い方法でも浮かんだ?」


ワクワクとした表情のジャンヌの方へ一人で近づいていくガイア。その顔は決意に満ちあふれている。



「方法は初めからありました。ただ、俺にそれをする勇気も度胸も覚悟も足りなかった」


ガイアの顔を見て、ジャンヌの表情も変わる。その顔から笑顔は消え、戦士の表情となる。そうさせるだけの気迫をガイアが放っていたからだ。



「先程の質問、本当のことを話します。本当は、あなたの顔を傷つけたくなかった……それだけです」



ガイアはダインスレイヴを構え、自らの腹に突き刺す。



「そう、ありがとう」



ジャンヌはそんなガイアの行動に驚きもせず、正面から斬りかかっていく。


ローズとリザベルトは今度は一切目をそらさず、勝負の行方を見届ける。




「すぐにまた会いましょう!」



ガイアの首めがけてジャンヌの剣が水平に襲いかかる。ガイアはまだ動かない。刃が首に食い込み、骨に到達しようとしたその時、ガイアの気配が大きく変わる。


「なに? これは……?」


ジャンヌも感じたことの無い気配だった。明らかにガイアのものではなく、それどころか人のものかどうかも怪しい。



「これが俺にできる最後の攻撃です」



ただでさえ黒いガイアの剣が、さらに黒さを増していく。剣に埋められた宝石が弾け飛び、その奥からは闇をはらんだ瞳が現れる。


「なんなの、その目は」


ジャンヌは戦慄した。かつて対峙したどの強敵よりも恐ろしかった。



「これがダインスレイヴの本体ですよ。そしてこれから放つ攻撃は今までこの剣が食らってきた魂の波動……」



ダインスレイヴだけではない。まるで五月闇を繰り出した時のように辺りが闇に包まれていく。



「さようなら中将」



攻撃はまるで見えなかった。そもそも攻撃などしたのだろうか。闇がジャンヌに届いた瞬間、すでに攻撃は終わっていた。ジャンヌの体には様々な魂が入り込み、彼女の肉体を求めて争う。その過程でジャンヌの体は内側から食い尽くされ、無惨な姿となって倒れる。



「痛い」



そう一言呟いてジャンヌは動かなくなる。



「あとは頼んだ」


ローズとリザベルトにそう告げてガイアも倒れ、動かなくなった。



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