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スティールスマイル  作者: ガブ
第二章 モルガント帝国
55/621

episode 55 「打倒元帥」

ケイトは憂鬱だった。また船に乗らないといけないのもそうだが、これから相手にするであろうアーノルトの事が頭から離れなかった。


アーノルト・レバー

かつてのゼロと双璧をなす組織最強の殺し屋。得意とする殺害方法は暗殺。その殺害方法から、アーノルトの姿を見たものはほとんどいない。ケイトもその一人だった。


「あんたは、アーノルトの姿を、見たの?」

「ああ、ちらりとだけどな。やつだとわかったのはやられてからの話だ。」


圧倒的。正にその一言だった。フェンリーの仲間は決して雑兵の集まりではない。その仲間たちをまるで子供扱い、いや、人としてすら扱っていなかった。多くの仲間たちはアーノルトの姿すら認識できていなかっただろう。認識できたもの達も次の瞬間にはなにも感じなくなっていた。フェンリーの攻撃も当たる気配すらなかった。触れたと思ったら次の瞬間そこには空気しかなく、代わりに自分の体に傷がつく。


「はっきり言って俺には勝てない。触れなけりゃ俺は力を使えない。スピードはジャック並だなありゃ。」


半笑いしながら地獄を振り返るフェンリー。


「あなたは先程からそのアーノルトの話ばかりしていますが、そもそも元帥に勝てると思っているのですか?」



軍を小バカにされたようで少し腹が立っているリースが尋ねる。はだかを見られたことに対しても、まだ怒りはおさまっていないようだ。


「ん?ああ。言っとくが俺は強いぞ?アーノルトには負けたが、あいつ並みのやつなんてそう存在してたまるかよ。」


フェンリーは自分の腕に自信があった。物心ついた頃から周りから恐れられ、彼に立ち向かうものはほとんどいなかった。たまに現れる難癖つけてくる連中は徹底的に痛め付けた。海賊になってからも周りの海賊から一目置かれる存在となり、それに伴う実力もつけた。組織にスカウトされ、エージェントとして暗躍するようになってもそれは変わらず、任務はすべてこなしてきた。だから今回アーノルトに完膚なきまでに叩きのめされたのは、はじめて味わう完全なる敗北だった。だが、フェンリーはここで落ち込んだりはしなかった。もう二度と誰かに負けるつもりもなかったし、アーノルトにも必ず勝つ気でいたからだ。


だからイシュタルに自分が劣っているなど考えもしなかった。その姿を見るまでは。



「ここが帝都モルガントか、思ってたより栄えてんな。タバコ屋どこかな。」


辺りを見渡すフェンリー。


「当然です。ここは世界一の都市ですよ。タバコ屋はあちらです。ちなみに歩きタバコは法律に触れるのでご遠慮ください。」


リースの言葉に肩を落とすフェンリー。


「ち、まあいいか。早いとこ済ましちまおうぜ。」

「ちょっと待ってください!準備もせずに乗り込むのですか?」

「あ?要らねぇよ準備なんか。行って、凍らせて、奪って、逃げる。それだけだろ?」


楽観的なフェンリーに困惑するレイア。


「いけません!とりあえずローズのところへ向かいましょう。」


めんどくさそうなフェンリーを無理やりヴァルキリア邸まで連れていく。


ローズはまだ戻っていないようだ。使用人たちは見たことないフェンリーと自分達を縛り上げたケイトに警戒し屋敷のなかに入れようとしなかったが、レイアとリースの説得で何とか中に入ることができた。



「さすがは四大貴族と言われるだけはある屋敷だな。俺んちよりここの便所の方がでけぇんじゃねぇか?」


フェンリーはソファーに腰掛け、スパスパとタバコを吸い始める。不機嫌な顔のケイトとリース。



「副流煙を撒き散らさないでください!社会人の常識ですよ!」


リースはかんかんだ。


「うるせぇな。これから死ぬかもしれないんだ。別に構わねぇだろ。」

「構います!」


ケイトはそそくさと部屋を後にする。レイアもついていく。



リースがうるさいのでタバコを凍らせて吸うのをやめるフェンリー。


「改めてみるとすごい力ですね。これで私も・・・」


思い出しただけで背筋が凍りそうになるリース。


「だから悪かったって。何度も言わせるなよ。」

「何度でも言ってくださいよ。そんなことよりもあなたはどの十闘神の加護を受けているのですか?」


フェンリーは首を傾げる。どうやらフェンリーも十闘神についてはなにも知らないようだ。



「なんだそりゃ。」



リースはフェンリーに説明する。



「ふーん。つまり俺もそのイシュタルとかいうじーさんも神に力を与えられたってのか。不思議なこともあるもんだな。」

「今までその力を疑問に思ったりなどはしなかったのですか?」


リースの質問に少し考えるフェンリー。


「ねぇな。この力も含めて俺だ。神の加護とかそんなのかんけえねぇ。これはおれ自身の

力だ。」


自信満々に答えるフェンリー。リースもその答えを聞いて質問をやめる。



「とにかく今日は休んで明日に備えましょう。期待していますよ。」

「なんだ?急に。一緒に寝て欲しいのか?」

「何でそうなるんですか!」


バタンと扉を閉めて出ていくリース。フェンリーは再びタバコに火をつける。



「待ってろよお前たち。仇は必ずとってやるからな。」


フェンリーは心の炎を灯すのであった。









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