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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 537 「ガイアの試練」

アーノルトがゲートに消えて数分、ガイアはゆっくりとゲートに近づいていった。


「兄上?」


心配そうに声をかけてくるマーク。


「心配するな。俺が様子を見てくる。お前は他の皆を頼む」


そう言いながらゲートに足を踏み入れるガイア。今度こそ置いていかれるわけにはいかないと、マークは急いでゲートへと進んでいく。兄を追いかけ、ゲートに飛び込んでいくマークだが、マークの体はゲートを通りすぎて向こう側へと行ってしまう。


「なぜ、なんだ」


何度繰り返せどマークの体はゲートの中へは入っていかない。


(俺には、試験を受ける資格も無いというのか!?)


また置いていかれてしまう。また、ガイアを一人にしてしまう。そばに居たい、そばに居て支えたい。しかし、何度繰り返しても自分にはそれができない。そのマークに近づく二つの影。



「レオグール中佐、ここは私たちに任せてくれ。行かなくてはならない、そんな気がするんだ」

「ヴァルキリア大佐……」



ローズはマークの肩に手をのせながらゲートに進んでいく。リザベルトもしっかりと姉の背中についていく。



(頼みます大佐、リザベルト……どうか兄上を)



二人の体はゲートに拒絶されること無く何処かへと転送されていく。マークは二人の背中を羨ましそうに見送った。




ガイアが辿り着いたのは例の草原だった。そこでは先程までアーノルトとイルベルトが激しい戦闘を繰り広げていたのだが、その痕跡は跡形もなくなっていた。


ガイアの後ろからローズとリザベルトが近づいてくる。ガイアは特に驚く様子もなく、二人の到着を待つ。



「来たか。何故かお前たちが来る気がしていたんだ」

「どうやら試練は私たちに関係のあることらしいですね」


ガイアに言葉を返すリザベルト。彼女自身も運命のようなものを感じていた。




「誰か居るな」


ガイアが小高い岡の上の人物を見つける。ローズとリザベルトも直ぐにその人物を発見し、警戒する。




「あの女は……」

「そう、あれが今回倒すべき相手だ」



いち早くその人物の正体に気が付いたアーノルトが悲痛な声を上げる。自他共に最強だと信じていた自分が初めて敵わなかった相手。結局倒すことのできなかったその相手が今、あそこに立っている。



「やつの死は非常に惜しかった。ヘルメスめ、全くもって余計なことをしてくれた」


言葉だけでなく、マリンは本当に悔しそうな顔で岡の上の女性を眺めている。




すこしずつ近づいていくガイアたち。まず初めに正体に気が付いたのはローズだった。


「そんな……」


明らかに表情の変わるローズ。希望と絶望が絡み合った表情で立ち止まる。どうした? そう声をかける前にガイアとリザベルトも正体に気が付く。


「バカな……確かに俺がこの手で」

「姉上……!!」



リザベルトは今にも泣き出しそうだ。飛び付きたい衝動を必死に押さえている。



岡の上の人物はいつものようにラフな格好で、手を振りながら近づいてくる。


ガイアから力が抜けていく。張りつめていた緊張が解きほぐされていく。




「あらガイア、敵を前にして随分と呆けた表情をしているわね」



ガイアの横をジャンヌが通りすぎる。ガイアは反応すらできない。首筋についた傷に気がつくにも数秒の時間を要した


「中将……」


首を押さえながら振り返るガイア。



「次はまっぷたつに分けるわ。その緩みきった手を握りなさい。その剣は何のために持っているのかしら?」



ジャンヌはそう言っているが、ガイアは剣を握ることができない。もう二度と、あの人に剣を向けられない。



(これは……報いなのか)


首から手を離すガイア。もう傷は消えていた。ローズとリザベルトは黙って二人の様子を見守っている。



「ローズ、リズ、元気そうでなにより。ガイアはきちんと約束を守ってくれていたのね」


リズ、その言葉に再び涙腺が緩むリザベルト。



「本当に、姉上なのですか?」


恐る恐る尋ねてみる。返ってきた笑顔を見て本物のジャンヌだと確信するリザベルト。



「ローズ、あなたもよく頑張ったわね。加護を失ってもあなたは戦えるって信じていたわ」

「私は加護を持っていたことすら知りませんでしたよ」



恥ずかしそうな笑顔で返すローズ。もちろん泣き出したいのはリザベルトだけではない。



「言わなくてもわかっているだろうけれど、一応伝えておくわ。試練の相手は私。私を倒さなければあなたたちは一生この中よ。ま、私はそれでもいいけれど!」



再びガイアに斬りかかるジャンヌ。その剣筋は生前と変わらずにしなやかで、力強く、そして眩しかった。



「私はローズとリズを傷つけたりはしないわ。そのかわりあなたは三人分私の攻撃を受けるけれど、構わないわね?」


笑顔で話しかけるジャンヌだったが、状況はとても笑えない。ただ、それでもやるしかない。自ら望んでここに来たのだから。








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