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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 535 「信じようと信じまいと」

ハデスの攻撃はこの世界に存在する如何なる衝撃をも凌駕する。それだけではない、その攻撃力に耐えうるだけの肉体を有している。並大抵の攻撃ではその体に傷ひとつ付けることは叶わない。ただでさえ丈夫な神々の体の中でも、ハデスは頭一つ以上抜けている。


そんなハデスに剣一本で立ち向かうワルター。ワルターは決して弱いというわけではない。人類の基準で計れば、間違いなくトップクラスだ。だが、トップではない。現に剣術だけに絞っても、この場にいるガイアには遠く及ばない。素早さでもゼロの足元にも届かない。それでもワルターは立ち向かう。この場にいる誰もが立ち向かえない神に対して剣を振るう。



「そう、それこそがお前の強さだ」



剣と拳が触れ合おうとしたその時、その間にマリンが割り込む。マリンはそのまま二人の攻撃に合わせて両手の平を突き出す。まだ完全とまではいかないが、怠惰の力を使って攻撃を止める算段だ。マリンが現れたというのにハデスとワルターはまるで目線に入っていないように攻撃を続行する。




肉体が弾け飛ぶ音。水風船を割ったかのように撒き散らされる血液。それを浴びて初めて二人は正気に戻る。



「さぁ、気は済んだか?」



二人の間に挟まれたマリンはとても無事とは言えなかった。ワルター側は手が弾け飛び、ハデス側は半身が吹き飛んでいた。



「マリン、貴様……」


ハデスは倒れるマリンの体を支える。しゃべっているのが不思議なくらい体が損傷している。


「この程度で死にはしない。それよりもこれで思い知っただろう。神々1の攻撃力を持つ貴様でも私さえ殺すことはできないのだ。母に勝つことなど到底不可能。貴様一人ではな……」



マリンの損傷した部分が少しずつ回復していく。自立できるようになるとハデスの手の中から脱し、力を出し尽くしたワルターへと歩み寄る。



「はは、俺はここで死んでいたね。手が震えているよ」



ワルターの手が激しく痙攣している。今になってようやく死の実感がわいてきたのだろう。



「それで? お前はどうするつもりか? ここで震えて世界の崩壊を待つか?」


マリンの言葉でワルターの震えは止まる。



「それはないさ」



立ち上がるワルター。震えは止まっているが、その体はまた別の意味で震えていた。



「見てくれ、武者震いが止まらない」

「たいした男だ。私の姉弟たちもそれだけの度胸が有ればな」



マリンはワルターに背を向けて歩いていく。




「さて諸君、まだ疑問が有るのならいくらでもこの男に立ち向かって行くがいい。無論この男が死にそうになれば私が助ける。遠慮はいらない」



神々に告げるマリン。ワルターもやる気満々だ。だがもうどの神々も動こうとはしない。



「よろしい。では……」



マリンの言葉を遮るようにその頬をゼロの弾が通過する。怠惰の力は発動していないようで、その頬には赤い線がくっきりと付く。




「何を企んでいる?」

「いきなり撃ってくるとはな。相変わらず血の気の多い男だ」



マリンは傷をぬぐいながらゼロの方を見る。もう傷は残っていない。



「わからないのか? 神を召集し、貴様ら人間をかき集め、これから私が、私たちが何をしようとしているのか?」



マリンがゼロに質問する。



「知らんな。俺には関係ない」


ゼロはマリンの眉間に照準を合わせ続ける。



「ふ、それはどうかな。お前はなにか勘違いをしている。お前は知らんだろうが、残りの魔族は私一人だ」

「ならば貴様さえ殺せば世界に平和が訪れる」



ゼロは発砲する。しかしマリンはゼロの攻撃に対応し、怠惰の力で弾をガードする。



「それがそうではない。我々魔族は魔女の器でしかないのだ。私たちを滅ぼしたところで魔女の復活は止められん」

「何を……言っている?」



理解が追い付かない。魔女? 確かに魔女が存在していてもおかしくはない。いや、存在していなければおかしいと言った方が正確かもしれない。




「私は、私たちは魔女を滅ぼす。お前たちにはそれを手伝ってもらう」



ゼロの耳には何も入ってこない。魔女を滅ぼす、それはゼロとて望むところだ。そうしなければ平穏が訪れないというなら、何を差し置いてでもそうする。しかし、何故マリンがそんなことを言うのかが理解できない。




「理解する必要はない。お前たちは私に従い、私の母を殺せばいい。私の言葉を信じようと信じまいとそうするしか無いのだから」



マリンの言うとおりだ。神々以外は誰しもがマリンの言うことを理解できていない。だが、それでもやらなければならない。



「ゼロ、こりゃ絶対に罠だ。断言するぜ」


フェンリーが攻撃の準備を整えながら告げる。



「罠だというのならばお前はついてこなくても構わない。中途半端は足手まといと同義だからな」



マリンはそういいながらゲートを開く。



「覚悟が決まったものはついてこい。最後の試練を与える」



マリンはそう言い残してゲートの向こうへと消えた。




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