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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 534 「ハデスの怒り」

普段は冷静沈着なゼロ。そのゼロはゲートを越えた先の光景に度肝を抜かれていた。マリン、そしてワルターが居ることは想定していた。マリンの口ぶりからして神が居ることも念頭には入れていた。すぐさま戦いになるかもしれないということも危惧していた。最悪の場合、ワルターが既に死んでいるかもしれないということも想定していた。



そこに居たのはガイア、アーノルト、そしてまさかのレックスとロミー。直ぐに声をかけたいところだったが、目の前に揃った神々の圧力で前に進むことができない。


ゼロにできるのはレイアの方に手を伸ばし、神々の目に当てないようにすることだけだった。




「ぞろぞろと、そいつらがお前のいう連中なのか?」


アスラはゼロたちに一瞬目線をちらつかせ、マリンに尋ねる。ゼロの体に緊張が走る。わからないことだらけだが、ここで下手に動けば殺される、そんな予感が頭を駆け巡る。かといってこのまま硬直していても何も解決しない。いっそのこと引き返してしまおうか、そう考えてゲートの方に目をやるとそこから出てきたマークと目が合う。



「ゼロ、一体ここは……」



マークもそこで言葉に詰まる。神々に対して驚いたのだろう、ゼロはそう考えていた。しかし実際はそうではなかった。マークは何かを目指して走り出す。




「兄上!!」

「……マーク!?」



マークはガイアを発見するとその足元にひざまづく。



「一体何しに来たんだ!?」

「兄上、よくぞご無事で」


マークはこぼれ落ちそうな涙を必死に引っ込めながら、無事な兄の姿を目に焼き付ける。その横でにやにやしているシオンの視線に気がつく様子もない。



「まーくん」


あだ名を呼ばれてようやくシオンの存在に気がつくマーク。



「な、ナルス少佐……」


潤んだ瞳を見せまいととっさに顔を隠すマーク。せっかくの兄との再開が台無しだ。



「ふざけている場合ではないです、少佐、中佐」


リザベルトが緊張感の欠片もないマークとシオンをとがめる。しゅんとしたシオンたちのもとにローズが駆け寄ってくる。



「准将、一体何が……?」

「俺たちは……とんでもないことに巻き込まれてしまったのかもしれない」










「大丈夫か?」



硬直したゼロの体をレックスが小突く。同様にロミーはレイアとケイトの体をつついている。


「やっほー! 私はロミー!」

「え、あ」


突然の事にレイアは困った表情を浮かべる。



「レイア、大丈夫だ。彼らは俺の……友人だ」


緊張のほぐれたゼロを見てにっこりと笑うレックスとロミー。




「よかったぜ。やっぱり生きてたんだな」

「それはこっちの台詞だ。しかしあのマリンからどうやって……」




話に浸る一同を再び現実に引き戻すかのように辺りを尋常ではない振動が襲う。それを巻き起こしたハデスは地面からゆっくりと拳をあげる。



「いい加減にしてもらおうか。この人間どもが魔女を倒すために必要だと? 束になっても俺一人にすら敵わない小粒が」



ハデスの体から殺気がほとばしっている。



「兄上、あれが神ですか?」

「ああ、魔族よりも更に上位の存在だ」


ガイアは唾を飲み込む。確かにハデスの言うとおり、ここにいる全員が一斉にかかったとしともハデスを倒せるビジョンが浮かばない。





「では試してみるかい? お前の言う小粒の力とやらを」


むくりと起き上がるワルター。その視線はしっかりとハデスを見据えている。先ほどルインにこっぴどくやられたことなど一切気にしていない。


「アイツ……」

「ルイン、手加減が過ぎるぞ」


驚愕するルイン。もちろん死なないように手加減はした。だがそう簡単に起き上がることはできないはずだ。



「ハハ!」


ワルターはハデスに向かって突撃していく。作戦など何もない。ただもてる自分の力を全てハデスにぶつけるだけだ。




「向かってくるのなら相手をしてやる。ただ、俺はルインのように手加減はできんぞ」




ハデスは拳を突き出す。ただそれだけだった。それだけで空間が割れ、突風が吹き荒れ、ワルターの体を軽く持ち上げる。


「うわ! やるね!」


空中に巻き上げられながらも剣を振り下ろすワルター。雷のような雷撃がハデスに命中する。



「さて、どうかな?」



地面に華麗に着地するワルター。そのままハデスに直進していく。



「死んでも文句は言わせんぞ」


ハデスはゆっくりと拳を引いていく。ワルターの雷撃など微塵もダメージを受けていない。



「ハデス! もう止めろ!」



アスラが叫ぶ。ハデスが今から繰り出す攻撃をまともに浴びれば、ワルターの体など木っ端微塵に吹き飛んでしまうだろう。


ハデスは攻撃の動作を止めようとはしない。ゼロたちもその危険性を肌に感じ始める。



「止まれワルター! 死ぬぞ!」


フェンリーは氷のつぶてでハデスに攻撃を仕掛けるが、ハデスはフェンリーに見向きもしない。


「退くんだ!」


ガイアがダインスレイヴを握りしめ、ハデスに斬りかかる。



『五月闇!』


ハデスを闇が包む……筈だった。しかしガイアの攻撃はハデスの圧力だけで跳ね返され、ダインスレイヴごとガイアの体も吹き飛ばされる。急いでマークが駆けつけるも、ガイアは既に意識を失っていた。



「くっ、ナルス少佐! 力を貸してくれ!」

「うん、まーくん!」



シオンとマークの二人もハデスを止めようとするも、近づくことすらままならない。



「みんな、手を出さないでくれ!」

「いい度胸だ、こい!」



ワルターの視界からハデス以外の全てが消える。同様にハデスの視界からもワルター以外の全てが消える。



「ワルター!!」


フェンリーは攻撃をやめない。他の一同も同様にハデスへの攻撃を続ける。ハデスは防御も回避もすることなく、その攻撃を全て受け止める。動きを止める様子もなく、溜めに溜めた拳を突き出す。



その瞬間、ワルターは感じた。ああ、この為に、この瞬間のために生まれてきたのだと。



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