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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 532 「ゲートのその先に」

「ハハハハハハハ!」



ワルターは高笑いをしながら神々に突っ込んでいく。その顔は喜びに満ちあふれている。



「夢のようだよ! この世界で最強の神々と戦えるなんて!」



ワルターは先頭に居たルインに一直線に進んでいく。ルインも自分が狙われていると感じ取ったが、特に何の反応も示さない。それは他の神々も同様で、仲間が命を狙われているのに一切気にしようとはしていない。


もちろん、それはワルターも感じ取っていた。



「俺なんてふりかかる火の粉ですら無いってことかい? なめられたものだ……ね!」



ルインに到達する前に剣を振るワルター。すると剣先から雷撃が放たれ、目にも止まらない速さでルインの体を貫く。


「あが!」


僅かに声が漏れるルイン。


「できれば君みたいな美人さんに手をあげたくはなかったけれど、仕方ないさ」


硬直するルインに向かって剣を振り下ろすワルター。



(タイミングも完璧! 敵はまだ動けない、殺すとまではいかなくても深手は負わせた!)


更にテンションが上がるワルター。だが、直ぐにそのテンションはドン底に叩き落とされる。




「調子に乗るなよ、羽虫が!」




ルインはワルターの攻撃に合わせて中指を弾く。いわゆるデコピンだ。たったそれだけでワルターの攻撃はかきけされ、ワルターの体も大きく吹き飛ばされる。




「がぁぁぁぁぁあ!!」



地平線の彼方まで吹き飛ばされそうな勢いのワルターを、同じくゲートから現れたマリンが受け止める。


「満足か?」

「ああ! 勝てたらもっと良かったんだけれどね」



受け止められたワルターはとても満たされた笑顔を残して気絶する。



「どうだ? 今の人間の力は」



苛立つ顔のルインに尋ねるマリン。


「てめぇ、アタシで実験しやがったのか」

「そういう思惑が無かったわけではないが、それを決めたのは私ではなくこれ自身だ」



気に入らない笑顔を浮かべるマリン。


「確かに人間の限界は越えていた。だけどよ、この程度で戦力になるのか?」

「するのさ。そうしなければ母には勝てない」



ワルターを乱雑に地面に置くと、マリンは再びゲートの中に消えていった。






今から数分前、話はマリンがワルターの前に現れた時に遡る。


それは突然だった。最初に異変を感じ取ったゼロは慌てて宿の外に飛び出す。そこに居たのはあのマリンだった。



「貴様……」

「久しぶり……と言うほどではないか」



マリンは以前会った時よりも更に力を増していた。今闇雲に戦ったところで、万に一つも勝利はあり得ない。


マリンからも敵意は見られない。まずは何のために現れたのかを探ることを第一に考えるゼロ。



「何故ここに……」

「ハァァァァァ!!」



ゼロの横を何かが通りすぎる。考えるまでもない、ワルターだ。



「嬉しいよ! こんなにも早く再戦できるなんてね!」



周りの事などもう一切目に入っていないワルターが目の前のマリンに突っ込んでいく。



「ワルター! 落ち着け!」


自分で言っていても無駄だとよく分かるゼロ。強敵を前にしてワルターが止まることなどできるわけもない。



「威勢がいいな。とても前回こてんぱんにやられたとは思えないな」



ワルターの攻撃を簡単に避け、その頭を鷲掴みにするマリン。とても女性のものとは思えない力で押さえつけられる。


「っ、ワルターから手を離せ!」


拳銃を構えるゼロだが、マリンに効くとは思えず、またワルターが暴れていて狙いも定まらない。



「安心しろ、お前たちの死に場所はここではない。もっと醜悪な舞台を用意してある」

「そうかい、でも俺は今死んでも構わないさ。あなたと戦えるならね!」



ワルターは必死に暴れ続け、ついにマリンの手から逃れる。そして剣先を自分の体にあてる。



「はぁぁぁ!!」


剣から放たれた雷撃がワルターの体を包んでいく。ワルター自身にダメージが無いわけでも無いようで、体の至るところから血飛沫が上がっている。



「ワルター、本当に死ぬぞ!」

「本望!!」



もうゼロに止める事はできなかった。無理矢理止めれば確実に巻き沿いをくらってしまう。




そんなワルターは救ったのはマリンの言葉だった。




「本望? 果たして本当にそうなのか?」

「え?」




ワルターの動きが止まる。



「そこのゲートをくぐれ。その先にお前の求めるものがある」



マリンは自分が通ってきたゲートを指差す。さすがにワルターも躊躇しているのか、なかなか近づこうとはしない。だが既に自殺行為は止めており、意識は完全にマリンに持っていかれている。



「ワルター、わかっていると思うが」

「勿論わかっているさ。罠だってね。でも、足が動いてしまうんだよ」



言葉通りワルターは一歩ずつゲートに近づいていく。




「さあ、進め。その先に神が待っている」




その言葉を聞いた瞬間、ワルターはゲートに飛び込んだ。



「ワルター!」

「直ぐに戻る」


叫ぶゼロを置いて、マリンは何処かへと消えていった。

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