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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
538/621

episode 531 「嫌な予感」

神と魔族のやり取りを木陰から観察する三つの影。その一つが大きく身を乗り出す。



「危ないわよ! まだあいつらが仲間と決まったわけではないわ!」

「で、ですが、アーノルトを連れ戻すなら今が絶好のチャンスですわ」


身を乗り出したセシルをリラが引き戻す。今出ていったところで問答無用で殺されることは無いだろうが、アーノルトを連れ帰ることは難しいだろう。そもそもアーノルト自身があの場から動くとも思えない。



「とりあえずもう少し様子を見るとしよう。なに、アーノルトは無事だ」

「……そうですわね」


三人はそのまま木陰から様子を伺う。






神の力による影響か、ガイアたちは続々と目を覚ました。最初に目を覚ましたアーノルトはアスラの姿を視界に捉えると直ぐに身構えるが、その周りに七人の同等の存在を確認するとその戦意も失われる。



(まさか……他の神々か!? それにあの男……間違いなくあの島にいた化物……!)


その中の一人、ミカエルに特に意識が持っていかれるガイア。ミカエルもどうやらガイアの様子に気がついたようだ。



「先程のマリンの言葉……信じざるをえんな。あそこに立っている人間、あれは間違いなくあの場にいた。それも俺のすぐ近くにな」


生存者がアーノルトだけではないことを確認するミカエル。確証はないが、他の倒れている面々もきっとそうなのだろうと確信する。


ガイアは警戒しながらも冷静に状況を分析する。今ここに居るのは瀕死のアーノルト、まだ目覚めることの無い仲間たち、アスラ、そして見知らぬ七人の化物。ミカエルの気配には覚えがある。そしてもう一人……



(あそこの帽子を被った少女、あれは帝国でヨハンと戦っていた子供か?)


じろじろとモルガナを観察していると、モルガナの方からガイアに声をかけてくる。



「なあに? 私がかわいいからってあんまりじろじろ見ないでよね」



モルガナが少し満足げな表情でガイアを見上げる。



「あなたも、いや、あなた方も神なのか?」


ほとんど答えがわかっている事をあえて尋ねるガイア。モルガナは自信ありげに、そして誇らしげに大きく頷く。



「もちろん! 私は十闘神モルガナ! モルガナ様って呼んでね!」


ガイアにピースサインをするモルガナ。


「モルガナ、今はふざけている時ではないぞ」

「いいじゃんアスラ。これから一緒に闘うんだから自己紹介くらいしておこうよ!」



一緒に闘う。その言葉がガイアの耳に引っ掛かる。


(たたかう? 戦うと言ったのか? だとするならば相手は間違いなく魔族。ならばアーノルトも戦う対象のはず……なのになぜ手を出されていない? いや、勿論出されていない方が良いのだが、気がかりだ)



頭を悩ませるアスラ。するとシオンが目を覚ます。



「うう……いたたた」

「ナルス少佐、よかった」


頭をおさえながら立ち上がるシオン。アスラとの傷は癒えてはいないようだが、重傷という訳でもなさそうだ。



「准将……どうなったんですか? ってわっ!!」


神々を前にしてしりもちをつくシオン。



「あの人たち絶対神様ですよ! どどどどうしよう……アスラ様に喧嘩をうったから仕返しに来たんだ」


ブルブルと震え出すシオン。ガイアと同様に立ち向かうという思考がわいてこない。シオンが震えているとリザベルトとレックス、そしてロミーが次々に目を覚まし、シオンと同様の反応を起こす。



「か、神だ……」


一目見て神だということを理解するリザベルト。



「おいおいほんとに十闘神っていたんだな」

「そりゃそうだよ、でなきゃこの世は滅んでる」


恐怖よりも感動や驚きが上回るレックスとロミー。



次々と現れる人間たちに少しずつ苛立ってくるルイン。ルインとしては直ぐにでも魔女を滅ぼしに行きたいのだが、マリンが帰ってこなければそれもできない。だがマリンは帰ってこず、代わりに人間たちばかりが押し寄せてくる。まさか逃げられたのではないか? そんな考えが次第に大きくなってくる。



「うるせぇぞ! あたしは今イライラしてんだ! 騒ぎたいならどっか消えちまえ!」

「ひいぃ!」



神の本気の怒りに身を縮まらせるシオンたち。あれだけ騒いでいたのにすっかり黙り混んでしまった。




何とも言えない時間が流れる。神々は何故ここに居るのか? 何故アーノルトに手を出すのを止めたのか? マリンは何処へ行ったのか? 自分たちは何故戻されたのか? 何一つわからない。神々に聞けば何か分かるのだろうが、とても聞く気にはなれない。どの神々も非常に殺気だっており、つまらないことを口走れば殺される危険すらあった。



(ここにフェンサー大佐が居なくて良かった。居たら間違いなく神々に突っ込んでいってしまっただろうな)


本気でそう思うリザベルト。もしここで戦いが始まってしまったらとても生き残れる自信はない。


(もし姉上が居たら……)


またしてもジャンヌの幻影にとらわれるリザベルト。頭ではいけないことだとわかっていても、こんなときだからこそすがらずにはいられない。



「リザベルト……」


リザベルトが幻想にふけていると、隣に居たガイアご耳打ちしてきた。


「いつでも逃げられる準備をしておけ。チャンスがいつ来るかわから……」





ガイアがそう言いきる前に神とガイアたちの間にゲートが開く。



「マリンか!」


タイミングを崩されたガイアが出てくる人物に注目する。しかし現れたのはマリンではなかった。



「やあ! 俺はワルター! 少し手合わせをお願いするよ!!」


現れたのは雷剣を手にしたワルターだった。リザベルトは悪い予感が的中し、頭を抱えると同時に逃げる準備を進める。ガイアは状況を理解し、ワルターの突撃を止めようとするも既に時遅し。ワルターはわき目もふらずにアスラたちに突っ込んで行った。





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