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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 529 「魔族の弱点」

「弱点……だと?」



ハデスがマリンの話に眉をひそめる。


「そう、弱点だ。当然私にも母にも弱点がある。それを今からお前たちに伝えよう」


マリンからの提案は信じられないものだった。それは長年神々が追い求め、そして発見できなかったものだからだ。確かにその力のいくつかについては解明している。だが、マリンの持つ怠惰の力については全く攻略法が見つからなかったのだ。



「何を驚いている? 先程の愚弟の様子を見れば弱点があることは明白だろう」


確かにマリンの言うとおりだった。あれほど手も足も出せなかったヨハンだが、マリンが干渉を止めただけで簡単に滅ぼすことができてしまった。



「そんな言葉を簡単に信じると思っているの?」

「信じるも信じないも、お前たちは私の言葉に頼るしかない。そうだろう?」


不審な眼差しのネスを一蹴するマリン。他の神々も思うところはあるようだが、何も言わずにマリンの話に耳を傾ける。




「まずはヨハンの暴食だが……」


マリンは右手にヨハンの欠片を乗せながら語り始める。



「知っての通り、この力はありとあらゆる攻撃、衝撃を吸収し、自分のものとすることができる。加護さえもその対象だが、使用者の限界を越える量の攻撃を与えれば吸収できずに崩壊する」


マリンは手のひらの欠片をパラパラとチリ状にしながら体の中に吸収する。


「術者がヨハンならばまだ対策のしようがあっただろうが、相手が母の場合は許容量は桁違いだ。そこは充分に覚悟しておくことだな」


マリンの言葉に息を飲む神々。マリンは次の欠片を手のひらに出現させる。



「メイザースの嫉妬。これは平たく言えば超回復だ。たとえ四肢がバラバラになろうが、心の臓が潰れようが関係ない。いくらでも、何度でも再生できる。単純だが強力な力だ」


ルインをちらりと見ながら告げるマリン。ルインは生首になりながらマリンに逃げられた事を思い出して舌打ちする。


「攻略法はその回復力を上回る破壊力を浴びせることだ。現にそうしてメイザースも人間相手に敗北している」

「その回復力とは嫉妬の力のことか? それともメイザース自身のことか?」



いつの間にか話に聞き入っているホルスが質問する。


「シットノ欠片の事だ。故にメイザースであっても、私であっても、勿論母であってもそれは変わらん。続けるぞ」



マリンの手のひらの欠片がまた変化する。今度はヘルメスの欠片だ。



「強欲の力。これは魔族の空間とはまた違う異空間を作り出し、そことここを繋ぐ力だ。移動にはこの紋章を使用する」


マリンは右手の甲についている紋章を神々に見せつける。


「この手で触れたものは物質は勿論、意思や精神までもを奪い取ることができる。足に触れればその足の所有権を奪うことができ、脳に触れればその人物そのものを奪うことができる。抗う術はない」


唾を飲み込むモルガナ。


「逆に言えば触られさえしなければ何の驚異でもない。ただの模様だ。ただし、触られれば終わりだと思え」



マリンの腕から紋章が消え、代わりに黒く染まっていく。次第にそれは全身へと回り、体が霧状に変化していく。




「オルフェウスの傲慢の力。それがこの闇だ。体を闇と化し、物理的な攻撃を完全に無効化する。攻略法はお前たちが知っているだろう」


闇となりながらハデスとルインに問いかけるマリン。二人はオルフェウスとの戦いを思い出す。



「ああ。確かに物理攻撃は効かないが、衝撃や精神への攻撃は無効化できない」

「その通り。お前たちなら充分に対応できる能力だ。物理さえ無効化すれば無敵だと考える、実に傲慢な力だな」



ハデスが正解を導き出すと、マリンは姿をもとに戻す。



「さて、次はレヴィの憤怒だ」


マリンを包む空気がかわり、その姿までもが獣のように変化していく。


「能力はご覧の通りだ。怒りに応じて姿が変化し、戦闘力も格段に上昇する。偽りの怒りでさえもこの変化だ、母を怒らせればどうなるかはこの私にも想像がつかん」


マリンの姿がもとに戻る。



「対処法だが、じつはこの力が一番簡単だ」


マリンは拳を突き出す。



「正面から叩き潰せ。簡単だろう?」

「なるほど、確かに簡単だ」


ミカエルが反応すると、拳をもとに戻すマリン。



「さて、最後はこの私の力だな」


マリンの心臓から欠片が浮かび上がってくる。神々もそれに注目する。怠惰への対処法が一番に気になるところだ。



「怠惰の力。これはありとあらゆるものを術者に近づけさせない力だ。故に私は必要なものだけを近づけるように力をコントロールしている。光や空気がその代表格だ」


そこまでは神々も理解している。



「ならばそれを利用すればいい。空気に毒を混ぜ、光に威力を与える。それだけでこの力は攻略できる。もっともその程度では魔族も母も死なんがな」


ニヤリと笑うマリン。攻略法とは言えないほどのものだが、それでも神々には一筋の光だった。



「ならば食事に毒を混ぜるのも有効か?」


アスラが尋ねる。


「勿論有効だ。だが、お前は母と共に食事をするつもりか?」

「ぷっ!!」



思わず吹き出すモルガナ。ぎろりとアスラが睨む。



「そして弱点はこの他にも存在する。怠惰の能力は理解を越えるものは止められない。お前たちも神ならば人智の1つや2つ、越えて魅せろ」



マリンの言葉に神々の心が熱くなる。そして思い出す、魔女と戦ったあの時の事を。




「やってやる! ね、皆!」


モルガナが大きくジャンプして皆に拳を突き上げる。神々もそれに応え、頷く。その様子を満足げに眺めるマリン。しかしそこでルインがあることに気がつく。



「ん、まてまて。そういやメディアの色欲について聞いてないぜ?」

「あ、たしかに!」


モルガナもくるりと向きを変え、マリンの方を向く。




「色欲、色欲か。それについては語ることはない。耐えろ、以上だ」

「そうか。簡単だな」


そう言うハデスだったが、ルインは不安で仕方がなかった。だが、そう深く考える性格でも無かったので、直ぐにその不安は吹き飛ぶ。



(ま、いいか。そうなったらぶん殴れば)



勝手に解決したルインは、そう心に誓った。









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