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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 528 「ローズの苦悩」

ヨハンの死体は陸に打ち上げられた魚のようにピクピクと動き始めた。



「お、おい、そいつまだ生きてんのか!?」


ルインが若干怯えた声で尋ねる。ヨハンは完全に白目を向いておとても生きている風には見えないが、ひょっこり起き上がりそうでもある。


「心配するな。それはただのモノだ。もう二度と起き上がることはない。無論、この欠片を埋め込めば話は別だがな」


マリンは手のひらに怠惰の力を乗せながら答える。



「あとはこれらの欠片をメイザース大神殿に安置されている母に戻せば封印は解ける」

「待て、まだ話は終わっていない」



早速神殿に向かおうとするマリンを呼び止めるミカエル。殺意は感じられないが、敵意は今でも剥き出しにしている。



「そもそもなぜわざわざ復活させる必要がある? 封印されているのならそれを破壊すればいい」

「確かにそうだよ。なんで?」



ミカエルの意見にネスが賛同する。その表情をみたマリンは思わず吹き出してしまう。



「ふっ、何を言い出すかと思えばそんなことか」

「何がおかしいのじゃ?」


ルナが前髪に隠された目を光らせる。



「封印された母を破壊したところでまた直ぐに復活する。ま、そもそも封印した母すらお前たちには破壊できないわけだが」


蔑んだ口調と目線で神々を見下すマリン。バカにされた神々は再びマリンに突っ込んでいこうとするが、一足先にアスラが前に出る。



「確かに貴様の言うとおりだ。俺たちは二千年前、魔女の力に全く歯が立たなかった。だから封印を施すしか無かったんだ。だが今は違う。俺たちは二千年間鍛え続けた。今なら魔女にも抵抗……いや勝利できると信じている」

「悪くない。だがまだ足りんな。魔女の封印を解くと言うことは私たち魔族の力を全て母に返すと言うことだ。私にすら勝てん貴様らでは到底母には届かない」



アスラの自信と決意を真っ向から打ち破るマリン。



「ではまず貴様を打ち破れということか?」


拳を握りしめながら立ち上がるハデス。その行動を嘲笑うマリン。



「相変わらず愚かだな、お前は。先程までの争いから何も学んでいないと見える」


ハデスがブチ切れるのではないかと心配した他の神々は直ぐに止めようとするが、ハデスは黙ってまた座り込む。



「じゃ、じゃあどうすればいいの?」


他の神々が失言をしないうちに喋り出すモルガナ。




「決まっている。教えてやろう、魔の力の弱点を」













マークが目を覚ますと、レイアが心配そうに覗き込んでいた。



「あ、目覚めました!」



後ろに向かって叫ぶレイア。するとぞろぞろと集まってきた。


「目が覚めたか、マーク。傷の具合はどうだ?」


一番最初に駆けつけたゼロがマークに尋ねる。



「ああ、自分でも信じられないくらい好調だ。傷の方ももうすっかり良くなったよ」

「それは良かった」



ゼロに対しての返しに答えるワルター。



「もし君に後遺症でも与えてしまったらどうしようかと考えていたんだ」


そんなことなど一切考えていない顔をして答えるワルター。


「いえ、例えそうだとしても俺はあなたを恨んだりはしません」


マークは起き上がり、ワルターに頭を下げる。



「一体どうしたんだい?」

「お手合わせ頂き、ありがとうございました。おかげで自らの力の無さを痛感いたしました。このままでは兄上の助けにはなれません」


胸が痛む。強くなったつもりでいたが、ワルターには全く敵わなかった。今のままガイアのところに行ったとしても、完全に足手まといだ。



「わかってくれたか、レオグール中佐。心配するな、あとの事は我々に……」

「俺を鍛えてください!!」



マークがようやく付いてくるのを諦めたかとホッと胸を撫で下ろすローズ。しかしマークの考えはそうではなかった。



「レオグール中佐? 何を……」

「俺を鍛えてください! 兄上の助けになれるように、魔族と戦えるように!」


ローズとワルターに向かって頭を下げ続けるマーク。ローズとワルターは困った顔をでそれを眺める。



「悪いけどマーク、俺は教えるのは苦手なんだ」

「構いません! 見て覚えます!」


手を目の前につきだして拒絶するワルターに対して意見を貫くマーク。



「中佐、君に教えられることなど何もない。君はもう充分……」

「では俺は一生ヴァルキリア大佐やフェンサー大佐に勝てないということでしょうか!?」


なだめようとしたローズの発言が仇となり、さらに詰め寄ってくるマーク。




「む、わかったよ。でも俺にできるのは実戦だけだ。痛いのは覚悟してもらうよ?」

「はい! 望むところです!」



ワルターは仕方なくマークの弟子入りを承認する。めんどくさいという気持ちも勿論あるが、ちょうどいい練習台を欲していたワルターにとってはそこまで悪い話でもなかった。幸いアカネの薬もまだまだあり、多少の無茶もできるだろう。



「大佐、安請け合いするものでは……」

「いいじゃないか。彼が望んでいることだしね」


ローズの不安は更に膨れ上がる。戦闘狂であるワルターが戦いを挑まれて断れる筈もなく、望まれたとなれば手加減する訳もない。



笑い合うマークとワルター。


(ああ、また私の負担が……)


人知れず頭を抱えるローズであった。










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