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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 527 「マリンの恐ろしさ」

「気がついた?」



最初に起き上がったハデスに声をかけるモルガナ。まだ他の神々はアスラも含めて倒れたままだった。


「ああ、どうやら俺たちは暴れてしまったようだな」


モルガナが処置を施したものの大地は荒れ果て、向こう数十年は草も生えてこないだろう。


ハデスはアスラの体を優しく抱き抱える。



「またお前の世話になってしまったな、アスラ」



戦いの続きが始まってしまわないかドキドキしていたモルガナは、ひとまず安心して他の神々の手当てに移る。皆こっぴどくやられていたが命に別状はなく、手当てをしなくても自動的に回復していった。



だが、神々が目を覚ます中、アスラだけはその瞳を固く閉ざしていた。




「力を使い果たしたんだ。俺たちを止めるために」


ホルスがそっとアスラの体に手を当てる。どうやら自分の力を分け与えているようだ。


「うむ、わらわも力を貸そう」

「アスラ、死なないで」


ルナとネスも同様に手を当てる。気がつくと7人の神全員がアスラの周りに集まっていた。





「……」


程なくしてアスラは目を覚ます。そしてそこに居た全員が無事なのを確かめると、小さく安堵のため息をつく。



「手荒な真似をした。謝罪ならいくらでもしよう」


神たちに頭を下げるアスラ。だが誰一人としてそんなことは望んでいなかった。



「やめろよ。悪いのはアタシらだ。前が見えなくなっちまってた」


申し訳なさそうに頭を下げるルイン。


「まさか未だにここまで感情に突き動かされるとはな。我ながら呆れる」


ミカエルも膝を折り、アスラに許しを請う。



重くなる空気。それに耐えきれなくなったモルガナが大きく叫ぶ。



「はい、喧嘩はそこまで! もう無し! それより今後について話し合おうよ、魔族ついてさ!」



モルガナの提案で神々は地面に円を作って話し合う。それを見計らってか、その外円にマリンとヨハンが姿を現す。



「喧嘩は終わったんだね」

「全員生き残っているとは上々だ。こんな下らないことで戦力が削られていたら目も当てられない」



怒りが大分収まっておるとはいえ、それでも二人の魔族の姿がその目にはいると、怒りがまた込み上げてくる。




「おい、アスラ……説明してもらおうじゃねぇか。そこのゴミどもをぶん殴っちゃなんねぇ理由をな」


怒りに震えた拳を必死に押さえながら呻くように口を開くルイン。スサノオを救えなかった事を今でも悔やんでいる。




「私は母を殺す」




マリンが自ら口を開く。



「は? 頭いかれてんのか?」


ルインはマリンの話を全く信じず、バカにされたのかと更に怒り狂う。


「待てルイン。こいつを殴るのは話を聞いてからでも遅くは無い」


殴りかかろうとするルインを制止するホルス。



「いくらでも話してやろう。それが私の望むところだ」



マリンは自分の生い立ちをできるだけ丁寧に神たちに説明した。




「……というわけだ。私が母を憎む理由は充分伝わったと思うが?」


神々はマリンの話を聞いて一同に黙る。しかし、一人だけはその話に納得がいかずに騒ぎ始めた。



「ちょっと待ってよ! お姉ちゃんはママを殺すつもりなの!? 何でよ!」

「今説明した通りだが? 理解ができないのならしなくてもいい。協力する気が無いのなら怠惰の力を返してどこかへ消えろ 」



ショックを隠しきれないヨハン。それもそのはず、彼ら魔族には母である魔女を蘇らせるという使命が予めインプットされている。母に歯向かうことすら考え付かない。最初に生まれたマリンを除いて。



「嫌だよ! 僕はママを蘇らせるんだ!」

「蘇らせはするさ。その後で殺すがな」



マリンの言葉にヨハンは完全に反抗する。



「ふざけないで! 僕は協力もしない、力も返さない!」

「それは許さん。お前の命などどうでもいいが、お前のその力だけは必要だ。それがなければ母の封印は解けないからな」


マリンの形相が変化する。弟に向けられた視線はとても姉弟のものとは思えない。まるでゴミでも見るかのような冷たい視線がヨハンを貫く。



「へへ、やる気? 今の僕に敵うつもりなの?」


絶対無敵の力である怠惰を手に入れたヨハンは強気な態度をとる。今なら誰にも負ける気はしない。




「最後の警告だ。力を渡せ」

「嫌だ!!」




マリンの警告を無視し、ゲートを開くヨハン。そしてその中に逃げ込み、瞬く間にマリンの前から姿を消してしまった。




「で、どうすんだよ。てめぇの言う計画とやらにはあのクソガキが必要なんだろ? とっとと連れてこいよ」



ルインが興味なさげな顔でマリンに告げる。



「その必要はない」

「は? やっぱりてめぇ……」



ルインがマリンに殴りかかりそうになったその時、再びゲートが開き、その中から苦しみに悶えたヨハンが飛び出してきた。


「……っ……ぁ」



言葉になら無い声でもがくヨハン。その表情をみた神たちはさすがに顔を曇らせる。




「怠惰の力を解除した。いまのこれには何も見えない、何も聞こえない、何もしゃべれない、息も吸えない」



もがいたヨハンはやがて動かなくなり、その体からは怠惰の力が吐き出される。それを吸収したマリンはヨハンの死体をつまらなげに蹴り飛ばし、再び神の方を向く。



「さて、話の続きをしようか」



神々たちは改めてマリンの恐ろしさを理解した。





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