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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 520 「神王アスラ」

『五月闇!』



剣をアスラに突き立てるガイア。だがまたしても剣先がアスラの体を避けていく。


「知能も低いとなると救いようがないな」


アスラはよろけたガイアに拳を突き出す。一撃でも食らえば即死の攻撃だ。



『氷槍!』



シオンの拳から放たれた氷の槍がアスラに向かって突き進んでいく。それはアスラの拳に直撃し、バラバラになりながらもガイアの窮地を救う。



「すまない少佐、助かった」

「大丈夫、でも……」



シオンの渾身の一撃。それが拳に直撃したにも関わらず、アスラにダメージは一切ない。バラバラになったときに破片が食い込んだはずだが、やはり体に纏ったエネルギーが一瞬で氷を蒸発させている。



「神様っていうのは本当かもしれませんね」

「ああ、ヘルメスとは比べ物にならないエネルギーを感じる……」



二人の様子を悲しそうに見下ろすアスラ。



「よもやこの俺をヘルメス程度の存在と比較するとはな。その認識の甘さでお前たちは死ぬ」



一人一人を順番に見ていくアスラ。その中の一人に目が止まる。



「お前はアテナの縁者か。ならばこちらに来い。お前ならば俺と魔族を庇う者、どちらが悪だか理解できるだろう」



言葉を投げ掛けられたリザベルトは困惑する。確かに目の前の男の話はよく分かる。彼が神かどうかはわからないが、アーノルトが正義の使者では無いことはよく分かる。きっとこれまでの人生で何人もの罪の無い命を奪ってきたのだろう。それは命ですら償えない行為だ。



「あなたの、言うとおりでしょう」



リザベルトはアスラに向かって答える。そして一歩一歩前へとでる。




「ですが、私は神の使いでも正義の使者でもありません。一人の軍人です。ならば従うべきはあなたではなく上官であるレオグール准将です 」




リザベルトはきっぱりと言い切り、アスラに剣を向ける。




「それが、神の教えに背くことになってもか?」

「神に刃を向けるとしてもです」






アスラは体に纏ったエネルギーを吸収していく。頭に生えた角も引っ込んでいき、見た目的には普通の人間と見分けがつかなくなる。




「よく、わかった」




その言葉がリザベルトの耳に入るよりも早く、アスラの姿が目の前から消える。次の瞬間にはリザベルトの後ろに回り込み、彼女が振り返るよりも早く首に一撃を加える。



「中尉!」



リザベルトが倒れたことでようやくアスラの存在に気がついたガイアが急いで駆けつけるが、そこに既にアスラの姿は無い。



「お前たち人間を殺すことは神の教えに反する」



声だけがガイアの耳に届く。次の瞬間にはガイアは地面に叩きつけられていた。



「なっ!」



体を起こすよりも早く次なる一撃が上から加えられ、ガイアの体も動かなくなる。



『絶氷!』



ガイアに攻撃を加えているアスラの背後から特大の一撃を浴びせるシオン。だが、アスラの体はピクリとも動かない。



「お前たちの口ぶりからしてヘルメスと戦ったらしいが、その技はヘルメスに通用したか?」

「そ、それは……!」



答えを聞く前にシオンの腹に蹴りを加えるアスラ。



「ごふっ!」

「答えなくていい。決まっていることだ」



一瞬で意識が飛ぶほどの攻撃。しかし倒れる瞬間、確かにシオンは笑っていた。



「何を……」


ふと足に違和感を感じるアスラ。シオンに触れた部分が凍りついている。その氷は徐々に回復しながら体を這っていき、右足は完全に凍りつく。




「いくぜロミー!」

「うん! レックス!」




レックスとロミーはその隙を見逃さず、左右から攻撃を仕掛ける。


「頭を狙え!」

「え、こかんでしょ!?」


いまいちコンビネーションは良くないが、タイミングは完璧だ。





「こざかしいっ!!!」




アスラは残った左足を地面に叩きつける。するとアスラの足元が隆起し、右足の氷も砕け散る。そしてそこから放たれた覇気がレックスとロミーを吹き飛ばす。




「があっ!」

「凄い風だよ!」



アスラの圧力に二人は踏ん張ることができずに吹き飛ばされる。



「はぁぁぁぁぁ!」



唯一アスラの攻撃から耐え抜いたアーノルトが再び立ち上がる。


「やはり残ったのは貴様か。言うまでも無いことだが、魔族である貴様は殺す」


アスラは再び力を解放する。が、先程まで力は引き出せていないようだ。それもそのはず、アスラの周りの草木は全て命を吸いとられた後であり、もう人間以外の生命はそこに存在していなかった。もちろん人間からも命を吸い上げることはできるが、今のガイアたちからそれをやってしまえば間違いなく命を落としてしまう。それはアスラとしても避けたい。



だが、それでもアーノルトがアスラを越えるには至らない。魔族の力を持たないアーノルトではせいぜい身体能力の高い人間止まりだ。アスラたち神々は、その段階を二千年前に越えている。




「今度こそ終わりだ」



地面を這うことしかできなくなったアーノルトの上から拳を叩きつけるアスラ。アーノルトの背中には直径十センチ程のクレーターが出現し、鈍い音と共にアーノルトの叫び声が辺りに響き渡る。内蔵はぐちゃぐちゃに破壊され、背骨にヒビが入る。もう立つことすら出来ず、死を待つだけの生ける屍と化す。



「さて、後はマリンだけだが……」



アーノルトから目をはずし、マリンが倒れていた箇所を見るアスラ。しかしそこに既にマリンの姿は無い。



「逃げたか……だが、逃がしはしないと言った筈だ」



アスラがマリンの気を探ろうとしたその時、アスラの背後に魔族のゲートが開く。アスラの背後だけではない、ガイアたちが倒れているそれぞれの場所にも同様にゲートが開き、ガイアたちはその中に引きずり込まれていく。



そして、マリン一人だけがその場に残る。




「なぜ連中を逃がす? 貴様にとって連中など何の価値もない存在だろう」


なぜ逃げなかったのか疑問に思いながら尋ねるアスラ。



「確かに私にとっては価値はない。だが、奴等が死にでもしたらアーノルトが悲しむだろう?」



マリンは右手の紋章をかざす。するとその紋章の中からありとあらゆる魔獣がわんさかと沸いてくる。




「悪いがやつらは殺させない」

「どうでもいい。貴様さえ葬れるならな」



両者は再び激突する。












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