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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 513 「ワルターVSマーク」

ワルターは一切の容赦をしない。マークを一人の剣士として認めているのもそうだが、万が一大ケガをさせてしまったとしてもアカネの薬があることを知っているからだ。あの薬の効果は自分自身で体験している。



(もっとも、飛ばされた四肢までは生えてこないみたいだけれどね)


義手をちらりと見ながら考えるワルター。



「ハハ! マーク! 手加減はしないよ……君も殺す気で来るんだ!」



目にも止まらぬスピードで距離を詰めるワルター。ただでさえ眼帯で片目を覆っているマークにとって、ワルターの素早さは驚異だった。


(目に見えるものに惑わされるんじゃない……大佐の敵意、気配、それを読み取るんだ。きっと大佐もそれを伝えるためにわざわざ俺と戦ってくれている)


マークはワルターの想いに応えようと集中する。一方そんなことは一切考えておらず、ただただ

己の欲求を満たしたいが為のワルターは容赦なくマークに剣を振るう。



「反応が鈍いよ!」

「くあ!」



ワルターの剣に何とか食らいつくものの、完全に受けきれず左腕に傷をもらってしまう。それでもその左腕でウォーパルンを抜き取り、ワルターに反撃する。


「おっと、その剣は食らわないよ」


水で刀身を固めた剣を受けずに避けるワルター。あの剣のことも当然調べをつけている。



「さすがはフェンサー大佐……そう簡単には斬り込ませてもらえませんか」

「それには元帥でさえ手を焼いたらしいからね。慎重にいかせてもらうよ」



ワルターは再びマークから距離をとり、雷剣を振る。剣先からはまたしても雷撃が放たれ、マークに向かって一直線に進んでいく。


(ここで受ければ先ほどと結果は同じだ。だが避けきれるスピードじゃない)


そこでマークはあえて突っ込む事にした。単純に剣の腕でワルターに劣るマークができることはワルターの虚をつく事だった。



「うぉぉおおおお!」



右手のエクスカリバーで雷撃を両断し、左手のウォーパルンでワルターを狙う。ワルターはじっとしてその場を動かない。



(まさか、作戦が読まれ……)



ハイになっているようで、ワルターは至って冷静だった。そしてマークのことを一つも甘く見ていなかった。



「君なら同じ手は二度と通用しないと思っていたよ。だからどんな方法で攻めてくるか楽しみにしていたんだ。でもね、その作戦じゃ俺には勝てないよ」



マークはエクスカリバーを弾かれる瞬間、確かにそう聞いた。ウォーパルンで斬りかかると、既にそこにはワルターの姿はなく、後頭部からは強い痛みが襲ってくる。



負けた。そう直感した。





「とどめだよ」





マークは既に意識を失っていた。しかしそれでもワルターは止まらない。このままではマークの顔面に剣を突き立ててしまうだろう。急いでフェンリーとローズが止めに向かうが、間に合いそうにない。



「ワルター、てめぇ目ぇ覚ませや!」



フェンリーが必死で叫ぶが、ワルターがこちらに気がついた様子はない。が、ワルターの剣はマークの目の前で止まり、その刃が肉体に食い込むことはなかった。




「何を慌てているんだい? 本当に殺すわけがないじゃないか」



飄々とした顔で答えるワルター。フェンリーとローズはほっとした表情を見せる。


「脅かすんじゃねぇ!!」

「ごめんごめん」



だが、ゼロだけは見逃さなかった。もしフェンリーが声をかけなかったらワルターは攻撃をやめなかっただろう。ゼロは銃にかけていた手を離しながらマークのもとに向かう。



「レイア、手伝ってくれ」

「はい!」



レイアは包帯を取り出し、アカネの薬を包帯に染み込ませていく。それをマークの斬られた腕に巻き、後頭部にも薬を垂らす。



「これで腕の傷は問題ないだろう。少し休めば目を覚ますはずだ」


ゼロの説明を受けて安心するローズ。


「良かった……だがフェンサー大佐、少しばかりやりすぎじゃないか?」


いわれた本人はけろっとしている。


「そうかい? これでも優しくした方さ。魔族は攻撃の手を止めてくれたりしないだろう?」


ワルターの言うことは確かにその通りだ。だが、現にマークは目の前で昏倒している。もしこの場にガイアが居たならワルターをただでは済まさないだろう。







このままマークをおいていくわけにもいかないので、一行は近くの村へと立ち寄る。



「なぁ、やっぱりこのままここに置いて行っちまった方がいいんじゃねぇか?」



ジャックがベッドに寝かされているマークを見ながら提案する。ジャックとクイーンにとってはマークは単なる軍人だ。おまけに目の前でワルターにやられたところを見ているため、とてもこれからの戦いについていけるとは思っていない。


「ジャックの言うことはわかるわ。でも兄を助けたいっていう気持ちも、私はわかるのよ……」


置いてきた弟のサンを思い出すクイーン。もしサンが自分を助けに来てくれたらどれだけ嬉しいかということもよくわかっている。だがそれと同時に危険な場所には来てほしくないという気持ちもある。



「それとこの子はもうついてくるって決めたんでしょ? なら私たちがとやかく言っても変わらないわ」

「まあ、確かにそうだけどよ」



クイーンにそこまで言われたらなんの反論もできない。



「とりあえず目が覚めるまでは待っていようぜ」


フェンリーはタバコに火をつけようとしながら口を開く。しかしそのしぐさをケイトに睨まれてしまったため、ばつが悪そうに宿を出ていく。



「私はちょっと村を見てくるわ。ここにいても退屈だし」

「しゃあねぇな。俺もついていってやるよ」


クイーンは少し嫌な顔をしたが、突き放すようなことはせずに最終的にはジャックの同行を許可する。



「そうだな、私たちも少し休憩しよう。ケイト、少し髪が伸びているようだな、私で良ければ揃えよう」

「うん、ありがとう」



ローズはケイトを連れて別の部屋へと移動する。



部屋にはマーク、ゼロ、レイアが残された。少しの間沈黙が続いたが、なんの取っ掛かりもなくワルターが口を開く。



「何か言いたい事が有るんだろう?」


ゼロは組んでいた腕を崩し、ワルターに詰め寄る。



「ワルター、俺たちは仲間だ。それを忘れるな」

「もちろんさ」



ワルターはゼロの鋭い視線をひらりと避け、部屋を出ていく。そのゼロの背中を見ていたレイアは、悲しみと少しばかりの怒りを感じていた。

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