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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 509 「呼び覚まされた恐怖」

ゼロたちは町を出発した。アカネからはまた数本の小瓶をもらった。これでしばらくは病気や怪我に悩まされることは無いだろう。自警団団長からせめてものお詫びとしていくらかの金銭も受け取り、弾丸などのそうびも整えることができた。



「行ってしまうのね」


ルーチェが寂しそうにレイアの手を握っている。



「はい。わたくしたちは行かなければならないところがあるのです」


その手をとるレイアも新しくできた友達との別れを惜しんでいる。




「レイア、それにゼロ。あなたたちは私の、私たちのヒーローよ。この恩は忘れない」




ルーチェは二人に深々と頭を下げて感謝の気持ちを伝える。







「なんかすっかり大所帯になっちまったな」


フェンリーが歩きながら呟く。確かに出発したときはフェンリー、ワルター、ローズ、ゼロ、レイアの五人だったが、今ではジャック、クイーン、ケイトも一緒だ。



「確かにね、でも仲間は多い方が楽しいじゃないか!」



ワルターはこの旅を楽しんでいる。念願であるマリンとも戦うことができた。これからどんな強敵と出会えるのかワクワクしてしかたがない。



「死にかけてて良く言うわね」



ワルター同様に眠り続けていたクイーンが呟く。あれほどの大きな怪我だったというのに今では全く痛みが無い。アカネという人物の力に恐れすら感じていた。





「で、どこにいくんだ?」


事情をいまいち把握してないジャックがゼロに尋ねる。それについてはクイーンもケイトも知りたいようで、ゼロの言葉に耳を傾けている。




「パルテノンだ。そこでアーノルトと合流する」




ゼロの言葉に耳を疑う三人。



「はぁ? なんでアーノルトの名前が出てくるんだよ!」

「そうよ! その口ぶりだとまるで仲間みたいじゃない!」



動揺するジャックとクイーン。ケイトは驚きで言葉を失っている。


三人にかいつまんで説明するゼロ。ある程度魔族に関して知識のあるジャックとクイーンとは違い、それについて全く知らないケイトの驚きようは尋常では無かった。



「か、神様? 魔族? なにそれ!?」

「驚くのも無理はない。だが全て事実だ」



直ぐに受け入れることは出来ない。だが、他ならぬゼロの言葉なら疑う余地はない。



「わかった。私も、協力する」



ケイトはぐっと拳を握りしめながら答える。





「一つ、思ったのだが」


ローズが口を開く。



「パルテノンへ向かうのはマリンの情報を得るためだろう? だが私たちは直接マリンに会った。はたしてそれ以上の成果は得られるのか?」


ローズの言葉にゼロの足が止まる。


「確かに。だが現状他に手がかりはない。それにアーノルトたちを放置しておくわけにもいかない」

「そうですね。今回の事を報告する必要もございますし」


ゼロの言葉にレイアが続ける。



会話を聞いていたジャックとクイーンはまたしても目を丸くしてゼロの方を見ている。



「……なんだ?」


少し不機嫌になりながらゼロが尋ねる。まるで見世物になった気分だ。



「いや、なんつーかさ……」

「まさかあんたがアーノルトの事を気遣うなんてね。変わったわね」



二人の感想を聞いて笑顔を浮かべるレイア。ゼロは対照的にそっぽを向く。



「だが、俺たちは相当遅れをとってるぜ? あいつらがいつまでもあそこに居るとは思えねぇぞ?」


フェンリーの言うことももっともだった。予定ではパルテノンに直行するはずだったが、マリンと出会い、村でのいざこざに巻き込まれ、ゼロたちの予定は大幅に狂ってしまっていた。





そして、その考えの通りアーノルトたちは戻ってきてしまっていた。




「あれがそのオルフェウスってやつの屋敷があった場所か? 」



跡地を見たレックスがすっとんきょうな声を上げる。そこは見渡す限りの平地であり、とても屋敷があったとは思えない。しかしアーノルトもガイアも神妙な表情で頷いており、確かにここには屋敷があったようだ。



「神のレベルってわけだね」



まるで戦いを見ていたかのような感想をのべるロミー。



「そうね。私たちはあの時逃げることすらままならなかったわ」


実際に戦いを見ていたリラとパーシアスは、恐怖で身が震える。



「で、ゼロはどこに居るんだよ。ここじゃねぇんだろ?」

「そうだな。リラ、案内を頼む」


ガイアもアーノルトも戦いの最中ワープしたため、ゼロたちがどこを拠点にしていたのかは知らない。ガイアはリラに案内役を頼む。



「ええ、こっちよ」




リラはゼロたちが拠点としていた町へと皆を案内する。そこに居るセシルがアーノルトを仇とし、ヴィクトルとシェイクがガイアを憎んでいるとも知らずに。





町へと入り、ゼロたちが宿泊していた施設を目指すリラ。セシルたちはまだそこに居た。



「あ、お帰りなさい。まだ夕食できていませ……」


扉を開けると、セシルが声をかけてくる。どうやら外出していたシオンたちが帰ってきたと思い込んだようだ。



「あら、リラさん! パーシアスさん! そちらは……」



リラとパーシアスの姿を見て近づいてくるセシル。だが、アーノルトの姿を一目みるなり動きを止める。



「……嫌」



小さく呟くセシル。激しく体が痙攣し、うずくまる。




「嫌ぁぁぁぁぁぁ!!!」




叫び声を上げるセシル。アーノルトを直接見たことはないが、本能で彼が何者なのか感じ取ったのかもしれない。



セシルはそのまま意識を失った。





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