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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 506 「毒の真実」

ローズとケイトは小さな村を訪れていた。この村にも食料を運ぶためだ。



「その、ありがとう」


ローズに礼を言うケイト。


「きにするな。これは私たちヴァルキリアがすべきことだ」



見慣れないローズの登場に警戒する村の人々。しかしケイトの姿が見えると安心して村長が姿を現した。



「おお、ケイト……! 無事だったか」

「うん。みんな、これ」



ケイトはポケットから果物を取り出す。あかくておいしそうな果物だ。村の人々は皆腹を空かせており、その果物は宝石にすら見えただろう。だが、村長はその果物を受け取らない。



「ケイト、それはお前さんが食べなさい。私たちはその気持ちで充分だ」


にっこり笑って差し出された果物を押し返す村長。




「ほんとうに?」


ケイトはそう言って体を逸らす。すると彼女の背後からは大量の果物を積んだ帝国の荷台が顔を覗かせた。



「ケイト……お前さんってやつは……」



それを見た村長の顔には涙が光る。


「お礼なら、そこのローズに言って」


ケイトが出辛そうなローズを前に突き出す。





「ありがとう。本当に……!」


村長はローズの腕を握ると、何度も何度も頭を下げた。







一方、ゼロたちは再び大きな村を目指していた。


「でもよ、なんでまたあそこに行くんだ? 忘れもんでもしたのか?」


ゼロに尋ねるジャック。


「いや、結局毒について団長は関わっていなかった。少し気がかりでな」


ゼロはあの村で見た毒におかされた人物を思い出した。とても演技とは思えないほど男は弱っており、毒におかされたというのは本当なのだろう。隊長が言うにはあの毒は団長の村で開発されたらしい。しかしそれは真実ではなかった。真偽について隊長が知っていたかは分からないが、知っていたとするならば彼は嘘をついたことになる。嘘をついたということは隠したいことがあるということだ。



(あの場で俺を退けるための嘘ともとれる。それならそれで納得はいくが……)



男の存在によって毒が存在しないという線は無い。つまりどこかに毒は存在している。その存在がある限り、恐らくまた戦争になるだろう。その種は摘んでおく必要がある。




「なるほどな、その隊長とやらが怪しいわけだ」

「そういうことだ」


フェンリーの言葉に頷くゼロ。村が見えてきた。




隊長はすぐにゼロの存在に気がついた。敵意は向けられていないと感じたものの、仲間をつれたゼロの姿は隊長にたしかな恐怖を与えた。



(やつめ……なぜ戻ってきた。まさか我々に報復をするつもりか!?)



牢獄で息絶えていた兵士を思い出す隊長。犯人は未だに見つかっていないが、十中八九ゼロの仕業だと考えられている。あの死体を見てから、隊長はいつ報復されるかとビクビクしていた。



(そもそもやつらに我々の村を守る義理など無いのだ……他の村の連中とグルになって襲ってくることも考えられる)



考えれば考えるほど追い詰められていく隊長。不安そうに見つめている部下に指示をだせないまま、ゼロたちの侵入を許してしまった。





「お前に聞きたいことがある」


到着していきなり隊長に尋ねるゼロ。


「聞きたいこと? それよりもそこの二人を紹介してもらえないか?」


なんとかゼロの話を繋ぎ止め、対策を練ろうとする隊長。しかしゼロには通用しない。



「お前は俺に嘘をついたな。毒はあの村で作られたものではなかった」


ゼロの質問に顔が曇る隊長。嘘を見抜かれた事もそうだが、そこから予想される会話から導き出されるものが隊長にとって都合が悪かった。ゼロの表情からして嘘だということに確信を持っていると感じられる。しらを切ったり、誤魔化したりすることは不可能だろう。




「確かにその通りだ。毒はこの村でたまたま出来上がったものだ」



恐れながらも真実を告げる隊長。ここで嘘を塗り重ねれば、ゼロの怒りを増幅させることになるだろう。



「たまたまだと? それでは解毒剤は……」

「ああ、まだ存在していない」


それも嘘では無かった。



「ならばその毒は早々に破棄しろ。そんなものがあっては他の村の驚異に他ならないからな」


そう言って村を去ろうとするゼロ。何かしらの報いを受けると思っていた隊長は、ゼロのあっけない対応に拍子抜けする。



「あ、ああ。もちろんそうする」


ここでおとなしく言うことを聞いていれば隊長自身もこの村も被害を受けずに済みそうだ。


だが、そううまくもいかない。




「最後に一つ聞く」

「なんだ?」



ほっとする隊長の後方に居る人物を指差すゼロ。




「なぜあの男が生きている?」




指を指されたのは、あの時毒を盛られたと言っていた男だった。その質問に隊長は答えられず、硬直する。



「あ、あそれは……解毒剤が」

「解毒剤は無いと言っていただろう。それともまた俺に対して嘘をついたわけか?」



殺気を纏ったゼロの言葉に激しく首を振る隊長。



「ち、違う! 自然回復だ!」免疫力の高い男だったのだ!」

「また、嘘を重ねたな」



腰の銃に手をかけるゼロ。



(考えろ、考えろ! あの女の事を知られるのは何としても阻止せねば! しかしこのままでは……くそ!!)



隊長は後戻りできなくなり、一番してはいけない選択をする。



「全員戦闘体勢! ゼロおよびその部下二人を抹殺しろ!」



隊長の声で待機していた部下たちが一斉にゼロたちに襲いかかる。それを呆れた顔で受けるフェンリーとジャック。



「なぁ、おい、部下だとよ」

「まったく困った連中だぜ。ゼロ、お前は手ぇ出すなよ」


フェンリーが冷気を発しながら告げる。ゼロは言われた通り、一歩下がって腕を組む。



「殺すなよ」

「凍らせてやるぜ!」



ジャックとフェンリーは向かってくる隊長の部下たちを一方的に蹴散らした。



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