表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スティールスマイル  作者: ガブ
第二章 モルガント帝国
50/621

episode 50 「作戦会議」

リンは先日会った少女の顔がなぜか頭から離れずにいた。


リンには一週間前以前の記憶が全くなかった。自分が何者なのか、何をしていたのか、これからどうするのか。全くわからなかった。とてつもない不安がリンを襲う。なので、目が覚めたときに側にいたこのイシュタルという老人にすがるしかなかった。


リンは笑顔は創れても、なぜか心のそこから笑うことができなかった。それが悔しくて人の笑顔も好きにはなれず、どちらかというと悲しい顔の方が安心できた。だからあのレイアという少女の泣いている顔を見たとき、なぜかとても辛い気持ちになったことが信じられず、頭から離れなかった。



「今日はあの女性現れませんね。」



書斎で資料を読み漁るイシュタルに声をかけるリン。



「その方がありがたい。ワシも暇ではないんでな。」



資料には兵士を何人か集め、隣国セルフィシーへ侵行する計画が記されていた。


資料を覗きこむリン。


「戦争ですか?楽しみですね。」


「リン。大事なことを教えておこう。この世でもっとも愚かで虚しいことが戦争だ。戦争が生むのは利益や恵みではない。争いだけだ。」


不満そうな顔のリン。


「戦争したくないのですか?力を示すチャンスですよ?」


「ワシは軍人だ。提督の命令には逆らえん。戦争となればいずれ戦場に出ることにもなるだろう。さすれば嫌がおうにも力を振るわざる得ない。したい、したくないではないのだよ。」


イシュタルはリンの頭をポンと叩く。リンは不思議そうな顔をして、目の前の老人を見つめる。いつの間にかレイアの事は頭から離れている事に気がつかずに。




レイアとケイトはモグラも交えて宿をとっていた。当然のごとくモグラは別室にされる。



「それでいつを狙いますか?やはり睡眠中でしょうか?」


レイアがケイトに提案する。


「それは、厳しいと思う。ゼロも寝てるとき、いたずらしたら、すぐ起きた。」


「いたずらって、そんなことしてたんですか!」


「それよりも、糞してるときのが、いいと思う。」


「くそって!女の子がはしたないですよ!せめてうんちとおっしゃってください!」


「あんまり、変わらないと思う。」



女性陣がガヤガヤしている間、モグラはふかふかのベッドが気に入らず床で熟睡していた。



空が赤みを帯始めた頃、レイアはローズの言葉を思い出した。


「わたくし、一度ローズのところに戻ります。」


「え、律儀。」


驚くケイト。


「ローズはわたくしたちに歩み寄ろうとしているのです。無下にすることはできません。大丈夫です。すぐに戻って来ますよ。」



その言葉の通りレイアは一時間後、戻ってきた。


「ただいま戻りました。」


レイアが戻ってきてほっとするケイト。


「よかった。ローズやリースにまた、閉じ込められちゃうかと、思った。」



「その節は、すみませんでした。」


レイアの後ろから声がする。レイアの後ろへ回り込むケイト。そこには下を向くリースの姿があった。


「リースさん!」


レイアはリースを前へ押し出す。頭を下げるリース。


「ゼロさんの事はローズ大佐から聞きました。本当にすみませんでした。ゼロさんは私が思っているような人ではありませんでした。少なくとも我々を脅かすような人ではありませんでした。こうなってしまったのには私にも責任があります。是非協力させてください。」


リースの思いもよらぬ言葉に驚くケイト。


「リースさんにも協力してもらいます。もちろんローズも承諾済みです。さあ!みんなで元帥さんを倒しましょう!」


「お、恐れ多いことを!元帥殿を倒すだの、不可能です!少し気を引くだけです!それしかないです!」


荒ぶるリース。その滑稽な姿に笑いを隠せないレイアとケイト。一方その頃、モグラは床で熟睡していたのであった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ