表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スティールスマイル  作者: ガブ
第二章 モルガント帝国
48/621

episode 48 「前へ」

ローズが会議から戻ると、屋敷の中は騒然としていた。レイアがまた抜け出したのだ。


「なぜ抜け出す必要がある。真実は伝えたはずだぞ。」


ローズは頭を抱える。


「リザベルトはどうした。まだ戻らないのか。」


使用人に尋ねるローズ。


「はい、レイア様がお戻りになられたことはお伝えしたのですが。」


「いったい何があったのだ。」




レイアはイシュタルの小屋を訪れていた。扉を開けるイシュタル。


「あ、あの、ゼロさ、リンさんに会わせていただけませんか?」



イシュタルはレイアを見つめる。



「すまんがお引き取り願おう。」


小屋に戻ろうとするイシュタルの裾を引っ張るレイア。


「・・・離しなさい。女性だからといって容赦はせんぞ。」


僅かに発せられた殺気にあてられ、手を離してしまうレイア。扉が閉められたあともレイアはそのまま立ち尽くした。


「お願いします。わたくし、こんな別れ方嫌です。わたくしが、何をしたというんですか!こんなことってないです!」


扉を叩きながら涙混じりに訴えかけるレイア。



「あの声、この間の女性ですよね?泣いているのでしょうか?」


リンがイシュタルに問いかける。


「下がっていなさい。」


イシュタルは一言リンに告げ、レイアから遠ざける。



駆けつけてきたローズがレイアの肩を叩く。その手を弾くレイア。


「触らないでください!こんな気持ちになるならあの時、殺されていればよかった!」


パチン!



思わずレイアの頬を叩いてしまうローズ。



「済まない、だが。」



ペチン!


ローズの頬を叩き返すレイア。


「みんな嫌いです!」



どこかへ駆け出すレイア。ローズは追いかけることができなかった。


「すまない。レイア、ゼロ。」



涙を散らしながら走るレイアを見かけるケイトとモグラ。


「レイアだ!追いかけよう。」


モグラの方を見るケイト。だがモグラは既にレイアを追いかけていた。ムッとするケイト。


「先に気づいたのは、私!」



石につまずき、転びそうになるレイアを受け止めるモグラ。


「何で泣いている。誰が泣かせた。」


モグラは心配そうにレイアの顔を覗きこむ。追い付いたケイトはなんとなくその理由がわかったが、だからこそ安易な言葉を掛けられずにいた。



「お二人ともこれまで、ありがとうございました。感謝してもしきれません。でも、もう終わったんです。もう、わたくしは立ち上がれません。」


また泣き出してしまうレイア。



「レイア、ゼロはまだ生きてる。」



レイアの背中をさするケイト。


「あれはリンさんです!ゼロさんじゃありません!」


泣きじゃくるレイア。


「でも、ゼロだよ?」


「わたくしのことを全く覚えていないではないですか!」


「泣いてても、しょうがない。記憶を取り戻す方法を、さがそう。」


「そんな方法はありません!いい加減にしてください!これ以上わたくしを苦しめないで!」


「いい加減にするのはレイアの方!」



モグラもビックリするほどの怒鳴り声をあげるケイト。レイアも泣き止む。



「悲しいのはレイアだけだと思ってるの?私だってゼロが好き。私だって悲しいんだよ!自分ばかり悲観にならないでよ!」


感情を吐き出すケイト。


「それでも私は諦めずゼロを探すレイアがいたから頑張れたんだよ?なのに記憶を失った程度でなに諦めてるの!私は諦めない!一人でも方法を探す!ウジウジしていたいなら勝手にして!」


ケイトはポカンとするモグラとレイアを置き去りにして、イシュタルの小屋の方へと歩き出す。



モグラはレイアを立たせる。


「そんなことを言われても、わたくしは、どうしたらいいのか。」


「そんな顔をするな。涙をふけ。やることは決まっているだろ。前を向け、挫けるな、諦めるな。おらの嫁さんだろ。」


モグラは小さなレイアの両肩に手を置く。モグラの真剣な顔が一瞬、似ても似つかないゼロの顔に見えてしまい、思わず吹き出すレイア。


「フフ、モグラさん、ありがとうございます。でも、嫁じゃないです。」


「今はだ。はやくゼロとやらの記憶を取り戻せ。はやく勝負させろ。そしてはやくおらと結婚しろ。」



レイアは涙をふき、再び前を向く。そして先を行くケイトを追いかけるのであった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ