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スティールスマイル  作者: ガブ
第二章 モルガント帝国
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episode 47 「ワルター」

帝国軍は元帥が新たな弟子をとったとの噂でもちきりだった。


元帥といえば軍最高戦力、帝国の要だ。その中でも四十年近くその座に君臨し続けるイシュタル元帥は、正に生ける伝説だった。今までにとった弟子は一人残らず将校となり、指導者としても優秀だった。全線で戦うことはほぼなくなった今でも弟子入りを志願する者たちは留まることを知らない。


ここ数年は弟子らしい弟子をとっていなかったイシュタルが、急に弟子をとったのだ。噂にならない訳がない。しかもそれにはヴァルキリア家次女、ローズ大佐も絡んでいるらしい。それもあいまって、イシュタルとローズは皆の注目の的だった。




帝国軍本部。


以前帝都近くの海岸でのレイリーとの戦いで生じた被害報告と今後の対策を話し合う兵士たち。




「それで?ローズ、実際のところはどうなんだい?」


一人の兵士が報告で疲れきったローズに話しかける。



「賊の事か?悔しいが確かにあいつは強かった。万全の状態でも勝てたかどうか。」



ローズの返事に納得がいかないのか首を振る兵士。


「そうじゃない。わかるだろう?元帥の弟子の話さ。どんなやつなんだい?」


ローズは男を睨み付ける。



「その事についてはノーコメントだ。持ち場にもどれ、フェンサー大佐。」



「何度言わせるんだい、フェンサーではなく、名前で呼んでくれよ。ワルター大佐とね。」



ローズはワルターの話を無視してその場を去る。



「相変わらずツレナイ女性だ。しかし俄然興味がわいたな。ローズにも、イシュタル元帥の弟子にも。」




イシュタルの家を知っているのはごく一部の者だけだった。ローズもその一人だ。ローズは姉ジャンヌと共に、イシュタルの弟子として日々訓練を受けていた。


ワルターは以前イシュタルに弟子入りを志願したのだが、全く相手にされず悔しい思いをしていた。同期のローズが弟子になったと聞かされたときも深く落ち込んだ。自分の何がいけなかったのか。ローズにあって、自分にないものとは何だったのか。いくら考えても答えはでなかった。



ある日、任務中に捕らえた一人の男が奇妙な話をしていた。


自分に手を出したら大変なことになる。自分はある組織の一員だ。


男の話に興味がわいたワルターは、男を見逃すのと引き換えに組織の事を聞き出した。


組織とは影で世界を操る謎の集団。中でも特にワルターの興味を引いたのは、戦闘部門の殺し屋集団の話だった。その集団の中でも最強と呼ばれる二人の殺し屋、アーノルトとゼロ。裏の世界でトップに立つ二人に惹かれた。彼等なら自分に無い何かを知っているんじゃないか、ローズやイシュタルを見返せるじゃないか。ワルターはすぐに組織について調べあげた。



組織について詮索する間何度もそれらしき者たちに襲われたが、既に軍で大尉として活躍していたワルターにとって、エージェントでもないただの殺し屋は相手にすらならなかった。


やがて組織から使者が現れた。ワルターは使者を倒そうと勝負を挑んだが、全く歯が立たず逆に半殺しにされてしまう。その使者こそ最強と名高いあのアーノルトだった。



「従うか?死ぬか?」



アーノルトはただそれだけの言葉を告げ、ワルターは従った。



組織の一員となったワルターは指令をこなし、組織の邪魔になるものを殺しまくった。表では軍人として民を守り、裏では殺し屋として民を殺めた。善か悪かそんなことはどうでもよかった。


組織に忠実で、なおかつ実力も兼ね備えたワルターが組織のエージェントになるのにたいして時間はかからなかった。



軍でも大佐となり、充実した日々を送っていたワルターにある指令が下る。



裏切り者惨殺のゼロを抹殺せよ



ワルターは心踊った。以前全く歯がたたなかったアーノルト。そのアーノルトと双璧をなすゼロに勝負を挑めることを。組織の情報によると既に何人かのエージェントが、ゼロによって返り討ちにされているらしい。


ワルターは腕を磨き、念入りに準備を進めた。そしてそろそろゼロに挑もうとした矢先に、ゼロが軍人の手によって葬られたとの報告が。よりにもよってその軍人はローズだった。ますますローズに引け目を感じてしまうワルター。ゼロという目標を失い途方にくれていたところに今回の報告だ。次なるワルターの目標はイシュタルの弟子となった。


「ああ、待ち遠しいな決戦の日が。」



ワルターは今日も腕を磨く。




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