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スティールスマイル  作者: ガブ
第二章 モルガント帝国
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episode 45 「再びの帝都」

ニコルの提案で帝都まで行き、そこで手下を集めて探すことになった四人。再び汽車の元へと向かう。駅員を早速悩殺し、意のままに操るニコル。モグラが駅員に手を出せないことをいいことに、駅員の力を借りてモグラを貨物庫に幽閉する。



「こんな回りくどいこと、しなくても、直接モグラを、誘惑すればいいのに。」


「野獣を飼い慣らす気はないの。」


ケイトが意地悪そうな顔でニコルに話しかける。 ニコルは先刻の一件が相当堪えたらしく、あれ以来モグラと目を合わそうとしない。



ニコルにとっての不幸は、ケイトにとっての幸福と同義だ。しかしそれも長くは続かない。



ガタンゴトンガタンゴトン



「何やら揺れが大きいですね。」


レイアが異常を察知する。確かにレイアの言うとおり、以前汽車に乗ったときよりも揺れが大きく、スピードも出ているようだ。



「それはそうでしょう?私こんな汽車に何時までも乗っていたくないもの。全速力で走らせるように運転手に命令しておいたのよ。」


ドドドドドドド


スピードはますます上がる。ケイトの小さな体はカーブに差し掛かる度に左右へ揺られる。


「う、えぇ、気持ち、悪い・・・」


ケイトをまたもや激しい酔いが襲う。


「それにしてもこれは速すぎますよ!」


行きの倍は出ているだろうスピードに、レイアも恐怖を覚える。



「心配性ねぇ。大丈夫よ。」




ガタガタガタガタ




「大丈夫よねぇ?」





わずか五時間で到着した列車の車内で、まともに立っているものは一人もいなかった。


身を削りながらも、二人にダメージを与えられたことで、少しプライドが回復したニコル。ついでにモグラの様子も見ておこうと、ふらふらしながら貨物庫へと向かう。


「さぁ、惨めな姿を見せてちょうだい?それとも勢い余って死んじゃったかしら?」



期待とは裏腹にモグラはグースカと寝息をたてて熟睡していた。



「・・・どんな神経してるのよ。」



モグラを叩き起こして帝都へと進む四人。


レイアはローズたちの事が気がかりだった。誰にも何も告げずに出てきてしまった。きっと大慌てで自分の事を探しているだろう。もしかしたら屋敷の使用人たちは、責任を問われているかもしれない。それとも自分は死んだものとして扱われているのかも。


いづれにせよローズたちは決して悪人ではなく、友達だ。それが余計にレイアを苦しめる。





(もうレイアが消えて四日だ。まだ見つからないのか。)



脇腹の傷以外はほぼ完治したローズが、屋敷の自室で頭を抱える。脇腹の痛みがゼロとの約束を思い出させる。


(なんとしてでも保護しなければならない。あの青年との約束を破ることは、あってはならない。)


捜索の範囲を隣国へと広げようかと考えていたその時、リースが部屋に飛び込んできた。



「なんだ。騒々しいな。」


「し、失礼しました!緊急連絡です!レイア様をお見かけしたとの報告が入っております!」



立ち上がるローズ。



「どこだ!」






帝都の門でローズが待ち構えていた。

ローズはその目でレイアの姿を確認すると急いでこちらに駆けてきた。



「どこで何をしていた!どれ程心配をしたか!」


「ごめんなさい、ローズ。ですが、わたくしはどうしてもゼロさんが死んだなんて信じられないのです。」


「信じたくないだけだろう。ゼロは死んだんだ。ケイト、お前もわかっているだろう。おとなしく屋敷に戻るんだ。そちらの妙な女性もお帰り願おう。」


ニコルは先程からローズを虜にしようとしているのだが、効いている様子がない。


「女とはいえ私の虜にならないなんて、随分と意思が強いのね。うんざりしちゃう。」



「言葉の意味はわからんが、どうやら奇妙な術が使えるようだな。何かが私のなかに介入してくる感覚がある。これ以上妙な真似をすれば命の保証は出来ないぞ。」


ローズの言葉を聞いて、しぶしぶ抵抗をやめるニコル。



「お前その軍服、佐官か。若いのによくやる。おらの嫁さん候補に入れておこう。」


ずっと黙っていたモグラが口を開く。


「ほお、獣だと思っていたがまさか人間だったとはな。しかもこの私に求婚だと?ふざけた男だ。そのおふざけに免じて見逃してやる。とっとと失せろ。」



「お前、何様。おら、モグラ様。」


一触即発の二人。慌ててレイアが間にはいる。



「とにかく、わたくしはゼロさんの死体でもこの目で見ない限り諦めません!」



困り果てるローズ。



「なぜそこまであいつにこだわるんだ。男なら他にもいくらでもいる。私が貴族の殿方を紹介してもいい。」


怒るレイア。



「ゼロさんは、一人しか居りません!」



「私も、ゼロの死体を、見た訳じゃない。」


「軍人さん、諦めなさい。ゼロ君が絡むとこの娘、諦め悪いわよ?」


「おら、ゼロと戦いたい。嫁の邪魔するなら容赦はしない。」



四人はローズを睨み付ける。


ローズは抜こうとした剣を再び鞘に納め、レイアたちに真実を伝える。



「本当はこのまま死んだものとした方が互いに幸せだったろうに。いいだろう、付いてこい。」


ローズは四人を帝都外れの小さな小屋に案内した。





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