表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スティールスマイル  作者: ガブ
第二章 モルガント帝国
44/621

episode 44 「ニコルとケイト」

八時間後、汽車は問題なくサンバーン付近の駅に到着した。駅員にお礼を行ってサンバーンへと向かう。モグラは未だ熟睡中で全く起きる気配がなかったので、駅員に任せ二人で向かうことにした。


サンバーンに到着すると以前の露店の男が話しかけてきた。


「よお、久しぶりだな。ゼロはどうした?」


「ゼロさんは今、別の用事で一緒にはいないんです。」


レイアがはぐらかす。


「そうかぁ、もう一度お礼が言いたかったんだがな。もちろんケイト、君にもだ。サンバーンを救ってくれて本当にありがとう。」


男は深々と頭を下げる。照れるケイト。


「私は、ゼロについていっただけ。お礼は、私からゼロに、伝えておく。」



もじもじしながら答えるケイト。




岩場には明日向かうことにして、宿をとる二人。


「やっぱりゼロさんは悪人ではないです。こんなにたくさんの人を救ったんですから。ローズやリースさんの勘違いです。二人にはきちんとゼロさんに謝ってもらわないと!」



プンスカしてしゃべるレイア。



「でも、よかったの?あの人に嘘をついて。手伝ってもらった方が、よかったんじゃ。」


ケイトの問いかけに首を振るレイア。


「あの人まで巻き込む必要はありませんよ。ニコルさんに期待しましょう。」




次の朝、二人は盗賊の岩場を目指してサンバーンを出発した。


相変わらず地形はでこぼこだが、以前とは違い盗賊たちの姿はなかった。程なくして岩場に到着する二人。岩場の中にも盗賊たちの姿はなかった。


「拠点を変えてしまったのでしょうか?」


「案外全員、捕まったのかも。」


不安そうなレイアに軽口を叩くケイト。よっぽどニコルのことが嫌いらしい。


仕方なくその場を後にしようとした二人に声をかける者が。


「あら?レイアにケイトじゃない?どうかしたのかしら?」



うげぇ、と嫌な顔をするケイト。声の主はニコルだった。レイアも緊張しているようだ。


二人から話を聞く前にゼロがいないことに気付き、何かあったことを悟るニコル。詳しく話を聞き、それは確信へと変わる。



「そう、そんな事があったのね。まさかゼロ君が負けるとはね、そのローズとかいう兵士はよっぽどの美人なのかしら?」


「・・・ゼロは、自分から攻撃を、受けた。・・・気がした。」


ケイトの曖昧な返事を受けてレイアの方を見るニコル。



「その話が本当ならきっとそれはレイアのためでしょうね。」


驚くレイア。


「わ、わたくしですか?」



「ええ、だってゼロ君が命を懸ける事なんて、あなたの事以外考えられないもの。」


ニコルは少し残念そうにレイアに微笑みかける。ドキッとするレイア。それは決してニコルの術にかかったからだけでは無いだろう。




「で、盗賊たちは?」


ケイトが訪ねる。


「盗賊団はあのあとすぐに解散させたわ。なんだか虚しくなっちゃって。彼らをあてにしてここまで来たのならそれは残念だったわね。」


「そうですか・・・」



うつむくレイア。それを見てニヤリと笑うニコル。


「なんてね。やつらはまだ私の術中だから呼べばすぐにでも群がってくるわよ。」


笑顔になるレイア、苦虫を噛み潰したような表情のケイト、そしてニコルは強く念じる。



野郎共!全員集まれ!



しばらくして男たちが集まってきた。その数は徐々に増し、明らかに以前よりも多くなっていた。



「こ、こんなにいらっしゃいましたっけ?」


驚きと恐怖が混在するレイア。


「そうだったかしら?モノにした男の数なんていちいち覚えてないから、わからないわよ。」



得意気なニコル。



「とにかく!これでゼロさんを探せますね!ありがとうございます!」


「何か勘違いしているようだけれど、私はゼロ君を探すだなんて一言もいってないわよ?」



ルンルン気分のレイアに不敵な笑みを浮かべるニコル。急いでロープを構えるケイトだったが、すぐに男たちに取り押さえられてしまう。


「やっぱり、お前嫌い。」


「奇遇ね、私もよ?」



レイアの方を見るニコル。


「やっぱりねぇ、私あなたたちの事を好きになれないの。ゼロ君の事は残念だけれど、むしろチャンスとしてとらえることにするわ。安心して、殺したりはしないから。ただちょっとだけイタズラさせて頂戴?」



青ざめるレイア。恐怖で声を出すことも出来ない。


男たちの手がレイアに忍び寄る。



ドゴーン!!


岩場の入り口で大きなおとがした。



「女だ。それもすげぇべっぴんさんの匂いがする。どこだ。どこにいる。」



「モグラさん!」



現れたのはモグラだった。モグラはレイアが襲われているのを一目見るなり、男たちに向かって突撃する。


「おらの未来の嫁さんに何してる!」



吹き飛ばされる男たち。ニコルは下唇を噛み締める。


「ゼロ君の次はこの毛だるまってわけ?相変わらずイライラさせる娘ね。」



ニコルは男たちをモグラに差し向ける。モグラはそれをいともたやすく退ける。


苛立つニコル。


「ずいぶんと腕がたつようね。さぞ素晴らしい手駒となってくれることでしょうね。」



「モグラ!目、見ちゃダメ!」



とっさにケイトが叫ぶが、既に時遅し。モグラはニコルの虜となってしまう。


「ふふ。さあ、これであなたは私の奴隷よ。手始めにケイトでも襲ってもらおうかしら。」


「くっ!」


ケイトは逃げようとするが、男たちに捕らえられ、身動きがとれない。


モグラはケイトの方を向く。しかし、ケイトの平坦な胸を見てすぐに視線をニコルへと移す。


「ちょっとあなた、ケイトはあっちよ。ってなにしてっやめなさい!」



ニコルへと飛びかかるモグラ。男たちはそれを守ろうとするが、誰一人としてモグラを止めることはできなかった。



「やれ!モグラ!ひんむけ!」



少々複雑な気持ちながら、ニコルがやられているのを楽しむケイト。



「ちょっと!もう術は解いたわ!この毛むくじゃら何で離れないのよ!」


モグラは離れる気配がない。不憫になったレイアが助けに入ろうとするが、それを止めるケイト。


「ケイトちゃん、気持ちは解りますけれどちょっとかわいそうです。」


「レイア、お人好しすぎ。それに、これは作戦!」


そう言ってケイトはニコルに叫びかける。



「ニコル!助けてほしければ、私たちとゼロを探して!」


「ふざけないで!何でこの私があなたに命令されなくちゃいけないのよ!」


モグラにもみくちゃにされながらもニコルは意地をはる。


「そう、じゃあ私たちは帰る。」


ケイトはレイアの手をとり、帰ろうとする。



「ちょ、ちょっと待って!わかった、わかったわよ!」



慌ててニコルが叫ぶ。ケイトがレイアの手を離すと、レイアはモグラの元へと走る。



「モグラさん!もうやめてください!」


レイアの声を聞いて我にかえったのか、モグラの動きが止まる。


「ん、嫁さんの声がしたな。」


「嫁じゃありません!」




くしゃくしゃにされたニコルをみて満足そうなケイト。


「約束。一緒に来て。」


「・・・覚えてなさい。」





新たな仲間を迎えて、旅は続く。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ