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スティールスマイル  作者: ガブ
第二章 モルガント帝国
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episode 41 「ゼロ探し」

残った兵士たちは仲間の遺体を弔った。



「じゃあね、妹たち。一応私忙しいの。」


ジャンヌは特に妹たちと会話を交わすこと無く、去っていった。



「あれが中将、そしてモルガント帝国三剣士の一人、ジャンヌ様か。」



兵士たちが噂している。

リザベルトとローズは姉に深々と頭を下げて見送る。


「流石だな姉上は。」


ローズはレイリーの死体を見る。とても幸せそうな顔をしている。そのポケットからリースの髪を取り戻し、レイリーの死体を兵士たちの方へ投げる。



「あとは好きにしろ。」



兵士たちはよってたかってレイリーの死体をいたぶる。仲間を殺された恨み、ぶつけようのない恐怖、自分たちの不甲斐なさ、そのすべてを無抵抗の死体にぶつける。



「姉上、ゼロ殿の件ですが。」


リザベルトがローズに訪ねる。ローズは観念して事のいきさつを全てリザベルトに語る。



「・・・そうですか。レイアには何と?」


「何も。レイアには申し訳ないことをしたと思っている。たが、私はこれが二人のためだと信じている。」



ローズとリザベルトは屋敷へと戻る。


何やら様子がおかしい。誰一人として出迎えにあがらない。嫌な予感がする。争った形跡は無いものの、誰もいない。ローズは慌ててレイアの部屋のドアをあける。そこにいるはずのレイアの姿はなく、代わりに使用人たちが縛られていた。


ローズはロープをほどく。



「何があった!」


使用人たちは申し訳なさそうに告げる。


「レイア様に逃げられました。何でもゼロを探すとか。」


くっ、と歯をくいしばり膝をつくローズ。慌てて使用人たちがローズを支える。


「大丈夫、ただの貧血だ。」


ローズはベッドに腰かける。最悪の事態に頭を悩ませる。


(レイアが逃げた?どうやってだ、協力者がいるのか。それともさらわれたのか。どこへ向かった。ゼロはもういないんだぞ!)



リザベルトも駆けつけてきた。使用人たちから話を聞き、状況を把握する。



「姉上、私が捜索に行って参ります。姉上は体をお休めください。」



ローズの体はすでに限界を通り越していた。気力でなんとかもっていたものの、レイアの失踪によって一気に疲れが押し寄せる。



「済まない、頼む。ゼロと約束したんだ。必ず保護してくれ。」


そう言ってローズはそのままベッドに倒れ込む。ローズの事を使用人たちに任せ、リザベルトはレイアの探索に向かう。




レイアとケイトはすでに帝都の外にいた。なぜか帝都内の兵士も手薄になっており、簡単に外に出ることが出来た。


「どこを探すの?」


ケイトがレイアに訪ねる。どこを探してもゼロはすでに居ないと知っていながら。



「ゼロさんの事です、きっと簡単に見つかる場所には居ないでしょう。わたくしたち二人で探せるとは思えません。そこである人を訪ねたいと思います。」


ケイトは罪悪感に押し潰されそうになる。


「だ、誰を?」


「ニコルさんです。」




思考が停止するケイト。


「ん?今ニコルって言った?」


レイアは得意顔で答える。


「そうです!ニコルさんの力ならたくさん仲間を集められるはずです!きっと協力してくださいますよ。」



「ニコルだよ?いやじゃないの?」


何をいっているんだといった感じで聞き返すケイト。


「正直ニコルさんの事は好きにはなれません。ですがゼロさんを探せるのならわたくしのことなど関係ありません。何でもいたします。」



ケイトはニコルのことが大嫌いだった。ゼロのためなら多少は我慢できたかもしれないが、いくらニコルの力を借りたところでゼロは見つからない。


しかし希望に満ち溢れたまっすぐな目をしたレイアに、今さら真実を告げることはできなかった。



「・・・わかった。行こう。」



ニコルが拠点にしている岩場は遥か彼方、サンバーンの近くだ。とても歩いていける距離ではない。


「船は嫌。」


ケイトは船旅を断固拒否する。と、なると残された手段は汽車しかない。



「ですが汽車は危険だとゼロさんが仰っていたではありませんか。」


レイアは汽車での移動に抵抗を覚える。


「そもそも私たちだけ、危険なのは同じ。」



そう言って無理やりレイアを引っ張って駅へと向かうケイト。しぶしぶレイアも付き合う。



駅は帝都から五キロほど離れた地点にあるようだ。土地感の無い二人は行き交う人々に道を訪ねながら進む。


駅は想像より大分小さくこじんまりしていた。どうやらさほど使われてはいないらしい。


「嬢ちゃんたち汽車に乗りたいんか?すまんね今燃料が切れちまっててな、動かないんだわ。」


駅員らしきおじさんが話しかけてきた。通りで駅に人が居ないわけだ。駅員の話によると人手が足りず、燃料を十分に調達できないらしい。


「燃料とはなんでしょうか?どこで調達できるのでしょうか?」


レイアが駅員に訪ねる。


「ん?燃料は石炭さ。近くの炭鉱で採れる。」


嫌な予感がするケイト。



「レイア、やめよう。」



レイアは詳しく炭鉱の位置を駅員に聞く。



「石炭はわたくしたちが採って参ります。ですのでサンバーンまでお願い致します。」


ケイトの嫌な予感は的中した。


「そりゃ構わねぇが、危険だぞ。」


「ご心配頂きありがとうございます。行って参ります。」


レイアは駅員から採掘の道具を借りて、炭鉱へと歩き出す。


「レイア、本気なの?」


ケイトは後ろからついていきながら、レイアの行動に疑問を呈す。


「汽車に乗るためです。それとも船がいいですか?」


意地悪に笑うレイア。ケイトはため息をついてレイアについていく。









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