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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
397/621

episode 397 「祈り」

世界の破滅と再生、破壊と構築。その衝撃によってゼロは目を覚ました。


そこにある全てが破壊され、飲み込まれていく。



「ちょっと! まずいわよ!」

「退避……退避!」


それはオルフェウスの屋敷のをも飲み込む勢いで広がっていく。その様子を目の当たりにしたリラとパーシアスが慌てて脱出を図る。


今目覚めたばかりのゼロには状況がつかめなかった。ここがどこかすらわからない。




激しい崩壊音とともにオルフェウスの屋敷が崩れ落ちていく。


「きゃぁぁぁぁぁ!」


檻の中のレイアが叫び声を上げる。揺れと砂埃がレイアの恐怖を促進させていく。


「おいおいまずいんじゃねぇーか!?」

「リース……」


フェンリーとワルターも非常事態だということを理解する。


「何が……起きているんだ」


リザベルトも息を飲む。



「早くしなさい! 置いていくわよ!」

「笑止!」



レイアたちの檻の前をリラとパーシアスが通りすぎていく。


「お待ち下さい! 一体何があったのですか?」


レイアが声をかけるが、リラたちは聞こえていないのか、無視して去っていく。


「いよいよヤバイぜ」


フェンリーは立ち上がり、手のひらを檻の入り口にピタリと付ける。すると檻は一瞬で凍りつく。


「フェンリー、そんなことをしたらオルフェウスが……」

「知るか! 逃げるなら今以外にねぇ!」


それを思い切り蹴り飛ばすフェンリー。だが檻はびくともしない。代わりにフェンリーの足が悲鳴を上げる。



「がっ! くそ! ただの鉄じゃねぇな……」


何回も何回も蹴り飛ばすが、まったくびくともしない。


「もうおしまいさ」


ワルターが大の字になって寝そべる。


「諦めんじゃねぇ! 俺はこんなところで死にたくねぇんだよ!」


フェンリーは繰り返し繰り返し檻を蹴り、殴り、体当たりする。それでも檻はびくともしない。



「リースは帰ってこない。きっともう手遅れなのさ」


ワルターは目を閉じる。そしてなにもせず、うずくまる。


「ざけんじゃねぇ!」


フェンリーは鉄格子から離れ、ワルターを殴り付ける。その手は血だらけで既に力を失っていた。


「死んだって決まったわけじゃねぇだろ! それに俺たちも生きている! 生きているうちに諦めちまったら……あっちにいった奴らに、どんな顔して会うつもりだよ!」


サングラスをしていても分かるほどに、フェンリーの顔は濡れていた。



「……わかったよ。悪かった」



ワルターも立ち上がり、一緒になって檻に攻撃を仕掛ける。


隣の檻の音を聞きながら、レイアも自分に出来ることはないかと考えていた。


「レイア、気持ちは分かるが、無駄なことというものはある」


それに水を指すようにリザベルトが告げる。


「そんなの、やってみなければ……」

「わかるんだよ。それが経験というものだ。フェンサー大佐があれだけやってもびくともしない、つまりは加護のような特別な力が働いているということだ。私たちが行動しても結果は変わらない」


あくまで冷静に答えるリザベルト。


「それでも出来ることはあります」


そう言って、レイアは手を目の前で組む。


「なんだ? 神にでも祈るのか?」

「いいえ。神様ではありません」



目をつぶり、あの人のことを思い浮かべる。最後には必ずやって来てくれる、あの人のことを。







崩壊していく屋敷を黙って見つめるゼロ。だがなぜか、二つの目からは涙がこぼれてくる。


「レイア……」


自然と口からその名前が出てくる。確証はない。だが、今立ち上がらなければ全てが終わってしまう。そんな気がした。


ゼロは治りかけの体を起こし、ルインの足元に転がっていたエクスカリバーを持ち上げる。



「あ! おい!」


それに気がついたルインが声を上げる。


「ルイン! 気を抜くな!」


オルフェウスが残していった衝撃を緩和するため行動するハデスがルインを咎める。二人がかりで対処しなければ、被害はおさまらない。



ゼロは走っていく。今まさに崩壊中の屋敷に向かって。そこで最愛の人が助けを求めて待っていると信じて。









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