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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
396/621

episode 396 「イルベルトVSハデス」

背中をさすりながら立ち上がるハデス。世界最強の肉体にはくっきりと攻撃の痕が残されている。


「魔族に似た力だ。だが何かが違う。それはどこかとどこかを繋ぐゲートではなく、何処かへと通ずる扉といったところか」


攻撃を受けたハデスは冷静に分析する。


「その通りだ。俺は亜空間へと通じる扉を作り出すことが出来る」


イルベルトは自分とオルフェウスを囲むようにして扉を無数に展開させる。



(この扉の力は充分に理解した筈、そう簡単に攻撃を仕掛けてきたりはしないだろう)


「はたして常識の通じる相手かな?」

「え?」


オルフェウスがイルベルトの考えを見通して呟く。その言葉の通り、イルベルトの扉は直ぐに何かを吸収し始める。



「バカな!? 攻撃してきているのか?」



イルベルトは急いでハデスの後方に扉を出現させる。その扉からはハデスが送り込んだ攻撃が溢れ、彼の背中を攻撃していく。無慈悲なる威力の攻撃がハデスを襲う。しかし先程のように膝を付くということは無く、たいしたダメージも受けてはいないようだ。



「調整しているんだ……自分ではダメージを受けず、かつ俺たちを殺せるレベルに!」



恐怖が一気に押し寄せるイルベルト。絶対的な自信を持っていた自分の加護に対して不安が生じる。




考えてもみれば、加護とは神に与えられた力だ。神本人に通用する筈もないのだ。




きしきしと扉が音をあげ始める。イルベルトの力が崩れ落ちていく。


(通用しない、俺の力では……無理なのか?)


諦めの一文字が脳裏に浮かぶイルベルト。扉が一つ、また一つと崩壊していく。


(なぜオルフェウスなんぞの為に命を懸けているのか、俺は)


放出するエネルギー量に耐えきれず、ハデスの背後の扉もバラバラに砕け散る。攻撃される心配の無くなったハデスは、さらに力を込め始める。


(組織によって飼い慣らされた人生。組織の崩壊によって、ようやく自由を手にした。だが今度は得体の知れない魔族とやらの手下だ)


後ろに匿うオルフェウスをちらりと見るイルベルト。オルフェウスは微動だにしない。諦めているのか、絶望しているのか、考えは読めない。


(このまま逃げれば俺は本当に自由になれる……のか?)


今度は倒れているアーノルトを見るイルベルト。アーノルトはまだ諦めてはいない。こちらの様子を眺めているルインに対して必死に手を伸ばしている。




「行け」




葛藤するイルベルトの耳にオルフェウスの声が飛び込んでくる。


「聞こえなかったのか? 行け。アーノルトを連れてな」


聞き間違いかと思われたが、オルフェウスは確かにそう言っていた。イルベルトは言い返そうとしたが、その口を閉じた。代わりにアーノルトの足元にゲートを開き、こちらへと呼び寄せる。



「うおっ! おいハデス!」


その様子を確認したルインが声をあげる。ハデスはさらに力を込め、扉の破壊を目論む。


アーノルトがこちらにやって来たことを確認すると、オルフェウスは魔族のゲートを開く。


「オル、フェウス……」

「口を開くな。そもそも俺様はお前たちに助けを求めてなどいない。そして万が一俺様がお前たちに救われるようなことがあれば、俺様のプライドがそれを許さない」


オルフェウスは最後の力を振り絞り、扉の周りを闇で覆う。


「ちっ! やろう、まだ力を残してやがったか!」


ルインがオルフェウスの闇に攻撃を仕掛ける。オルフェウスはそれを必死に耐え、二人に告げる。



「最後だ! 行け!」



オルフェウスの言葉と覚悟を受け取った二人は、それ以上何も言わずにゲートに飛び込んだ。二人が行ったのを確認すると、オルフェウスは力を解く。イルベルトの扉も同時に破壊され、オルフェウスを守るものは一つもなくなった。



「驚いたぜ。てめぇだけはそういう人間みてぇなことやらないと思ってたからよ」


一人残ったオルフェウスを見て、ルインが驚愕する。



「俺様が助けたとでも? 冗談にしても笑えんな」



オルフェウスは再び霧状に変化する。霧は辺り一面に拡がり、空を覆い、光を遮る。


「切り札を使わせてもらおう」


オルフェウスの台詞の直後、突如空間にとてつもないエネルギーが発生し、そして消滅する。



「なに狙ってやがる」

「……まさか」


二人の神は闇の中心を見つめる。



「これを使えば、俺様は間違いなく死ぬ。だが、お前たちも道連れだ」


それがオルフェウスの最後の言葉だった。


その場に存在するすべてのものは、その中心へと吸い込まれていった。



「ブラックホールか!」



ハデスは足を踏ん張り、それに耐える。しかしブラックホールは、ハデスのいる地面ごと根こそぎ吸い込もうとする。



「しゃーねぇ、アタシたちも本気で行くぞ!」

「そうだな、いまさら被害についてとやかく言っても仕方がない」



二人の神は、拳に己の全エネルギーを集中させる。



「うぉぉぁぁぁぁぉぁぉ!」

「はぁぁぉぁぁぁぁぁ!」



そして集めた全てのエネルギーを中心に向かって一気に突き出す。



「「食らえ!」」



世界を破壊しかねないその凄まじいエネルギーが吸い込まれていく。が、当然それはオルフェウスの限界を越えた力だ。吸い込みきれず、闇そのものが崩壊していく。


魔女の第四子、魔族オルフェウス。彼は二人の神によって滅ぼされた。




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