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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
395/621

episode 395 「神に挑みし者たち」

アーノルトのクナイがルインに向かって飛んでいく。ルインは手刀で、難なくそれを弾き飛ばす。当然彼女の手には傷ひとつ付いていない。


「これで仕舞いか? あぁ!?」


ルインが拳を前に突き出す。それによって起きた衝撃でアーノルトの体が後ろに吹き飛ばされる。抉れた腹からはおびただしい量の血液が溢れだし、辺りを赤く染めていく。


「がっ!」


口からも血を吐き出し、起き上がることがでこなくなる。


身に付けていた衣装と鎖かたびらは弾け飛び、その鍛え抜かれた肉体が露になる。


「なかなかいいじゃねぇか。だがな、その体じゃ受けきれるのはせいぜい人の攻撃までだ。魔獣や魔族、当然神の攻撃には無意味だ」



ルインの言葉を聞き終える頃には、アーノルトのダメージはさらに膨れ上がっていた。意識が途切れないように必死に歯を食いしばるが、力が入らない。



(予想外だ、規格外だ! これが神の本気なのか!? まるで歯が立たない……まるで戦いにならない)



地面と一体化しそうなアーノルトを横目で見つめるオルフェウス。



「心配か?」


彼の目の前に立つハデスが声をかける。


「この俺様がか? まさか」


オルフェウスは視線をハデスへと戻す。



「だろうな。貴様が心配すべきは貴様自身なのだから」



ハデスが体に力を込める。膨れ上がる肉体。その力強さはルインの比ではなく、まるで巨大な山を相手にしているようだった。



「貴様個人に恨みはない。だが貴様らは魔族は根絶やしにする。人類のためにな」


拳に力を込めていくハデス。一点にエネルギーを溜めたその拳は、世界そのものを破壊できるほどの力を有していた。オルフェウスの肉体にまともに当てれば、再生することなど到底不可能なほどにバラバラにくだけ散るだろう。


(なんだというのだ……この力は! この俺様が恐怖するほどの力など、マリン以外に存在する筈が……!)


その力は、オルフェウスに死を明確に予感させる。



「ハデス! 片付いたか? ほかの魔族が来ると厄介だぜ」

「もう、終わる」



ルインがハデスを急かせる。ここに来てから既に三十分ほど時間が経っていた。他の魔族に気づかれていてもおかしくない時間だ。ほかの魔族、特にマリンが現れるようなことになれば、二人とも本気で対処しなければ勝つことはできないだろう。被害も、半径数十キロの生物は死滅するほどの甚大なものになるだろう。そうなるのはルインらにとっても良くはない。


オルフェウスは死を覚悟した。ワープホールを開く力も残されていない。仮に残されていたとしても逃げきることはできないだろう。


(これが母を撃退した力か……)



こちらに向かって打ち込まれたハデスの拳を見つめながら、死を待つオルフェウス。その風圧だけで、彼の周りに漂う闇の力はすべて吹き飛ばされていく。


アーノルトが必死に手を伸ばし、オルフェウスを救出しようとするが、体が動かない。


(く……そ!)



オルフェウスを守るものは何もなかった。その時までは。




ハデスでさえ気がつかなかった。彼の腕の目の前に突如亜空間への扉が開く。魔族の気配は感じられない。ハデスの攻撃と衝撃はその空間へと吸い込まれ、何処かへと消えていく。


「何者だ? 魔族ではないようだが」


ハデスがその扉の向こうに現れた人物に声をかける。



「アーノルトが戦っている。誘った俺が戦わないわけにはいかないだろう」

「質問の答えに……な!!」



ハデスの背後からあの亜空間への扉が開き、そこから先程の攻撃と衝撃が襲いかかってくる。世界最強の肉体を持つハデスだが、その肉体に襲いかかるのは、同じく世界最強の攻撃だ。その攻撃を背中にまともに受けるハデス。流石に無傷とはいかず、腰を折り、膝を折り、地面へと付ける。



「質問の答えがまだだったな。俺の名はイルベルト。移殺のイルベルトだ、地に堕つ神よ」



イルベルトは神であるハデスを見下ろしながら、そう言った。





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