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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
392/621

episode 392 「二人の神」

ゼロから怒り以外の全ての感情が吹き飛ぶ。目には二人の敵しか映らない。相手の強さは未知数。本来ならば敵う筈もなく、撤退以外に選択肢は無い。だが今のゼロにそんな冷静な判断は下せなかった。


ゼロの殺気はさらに膨れ上がる。それは神と称された二人を身構えさせるほどに鋭く、いびつに変化していた。



「こいつ……本気でアタシらを殺る気だぜ?」



ルインは両手首をポキポキと鳴らす。



「そのようだ。最早語って諭す段階を通りすぎてしまったな」



ハデスも構えをとる。


「神二人で人間をいたぶるのは気が進まねぇが、しかたねぇな」


ルインは先手必勝と言わんばかりにゼロに向かって蹴りを放つ。


(わりぃがこれでKOだ!)


目にも止まらぬ速さで繰り出されるルインの蹴り。完全に避けきることは不可能だ。だが避けなければ間違いなく即死、辛うじて威力を殺したとしても重傷は免れない。



が、ゼロは避けなかった。カウンターに全てを懸け、ルインに向かって蹴りを繰り出す。


(バッ! こいつ!)


ルインはゼロの考えを読み取り、足を引く。代わりにゼロの蹴りがルインの顔面に炸裂した。


「っ! このガキ!」


一撃くらった驚きで、一瞬ゼロから目を離すルイン。その間にゼロは神の前から姿を消した。


辺りを見回すルイン。ゼロの気配はどこにも感じられない。ハデスの方を向くが、ハデスも同様にゼロの気配を感じ取れてはいないようだ。


「まさかアイツ逃げ……」

「るわけ無いだろう」


ルインの背後から突如現れたゼロは、ルインの脇腹にナイフを突き立てる。ナイフは深々とルインに突き刺さり、またしてもルインはゼロから目を離す。


「っ痛! 出てこいゴラァ!」


ルインはナイフを強引に引き抜き、地面へ投げ捨て激怒する。傷の方は簡単に治癒できたが、それでは怒りは治まらない。



「しかし我らからこうも簡単に気配を隠せるとはな」


ルインの怒り狂った様子とは裏腹に、ハデスは冷静にゼロを評価する。


「高々二十年程度で到達出来る地点とは思えん。よほどの鍛練と環境に置かれてきたようだ」

「るっせぇ! お前も探せ!」



ゼロは岩影に身を潜めていた。ルインへ一矢報いた事で冷静さを若干取り戻すが、それと一緒に恐怖もついてくる。


(通用……したのか? しかし、見たところダメージは入っていない。しかし我ながらなんとも危険な戦法を選んだものだな。いや、戦法とも言えん。あれはただの特攻だ。ルインが俺への攻撃を躊躇わなかったら、今頃あの世だった。そんな事になればレイアは……)


ゼロは唇を噛み締める。


(情けない……結局俺は)



「見ぃーつけた」


ゼロの頭上からルインの声がする。気がついたときにはもう遅い。腕を捕まれ、身動きが取れなくなる。ゼロは咄嗟にナイフを掴むが、次の瞬間には意識を断たれる。



「寝てろ……クソが」



ルインとハデスは姿を消した。





「ゼロさん……」


レイアは肌寒さと戦いながら檻の中で震えていた。未だにローズとガイアは目を覚まさない。セシルとリースも戻ってこない。だがレイアはもう一人じゃない。彼女の隣には先日つれてこられたリザベルトの姿があった。



「浮かない顔だな、レイア」

「当たり前じゃないですか」


そういいつつも、リザベルトの顔の方がもっと浮かない顔だった。


「ゼロさんと一緒だったんですよね?」

「ああ。彼は無事だ。だが姉上は……」


リザベルトはさらに落ち込む。


「ジャンヌさんですよ? 大丈夫に決まってます!」

「大丈夫なわけ無いだろう! 相手は魔族だ! 私たちが敵う相手じゃないんだ!」


リザベルトはレイアの肩を掴み、大声で叫ぶ。その目には涙が浮かび、彼女の感情がむき出しになっている。


「わかっています! わたくしだって心配で心配で!」


レイアも黙ってはいられない。ゼロへの思いが目から溢れ落ちる。



「前よりもうるさくなったな」

「……ああ、そうだね」


隣の檻のフェンリーとワルターがイライラとした声色でため息をつく。フェンリーはタバコが吸えないおかげで目が血走っており、ワルターはリースの身を案じ、一睡もできていなかった。


四人とも精神をすり減らしており、体力も消耗していた。



「じっくり、じっくりだ。そうして頭を垂れたとき、貴様らをコマとして使ってやる」


オルフェウスはリザベルトを手に入れたことで上機嫌だ。二人の神が近づいているとも知らずに。




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