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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
390/621

episode 390 「ルイン」

攻撃をまともにくらったゼロの腹は抉れ、海上を跳ねまくったおかげで全身がズタボロになっていた。意識はなく、命の灯火も消えかかっていた。



「……へぇ」



破滅の神、ルインはそんな死にかけのゼロに感心していた。


「まだ握ってんのか」


ゼロは気を失いながらも、エクスカリバーを握りしめていた。


「魔族に対抗するだけはあるじゃんか」


ルインはゼロの取れかけの手を握る。するとゼロの手はみるみるうちに修繕を開始する。


「無理やり奪ってもいいけどよ、やっぱそれって神らしくねーだろ?」


そう言ってルインは、大方回復したゼロの体を空中に打ち上げる。ゼロの体は凄まじいスピードで上昇していき、その過程で意識も復活する。



「……なっ!」


抗うことのできないスピードで、身動きのできない空中にて目を覚ますゼロ。それでもパニックにならないように必死に気を保つ。


(ここは空中……それもなお上昇中。考えられるとしたらあのルインと名乗る女の攻撃……)


下を確認するゼロ。そこには既にルインの姿は無く、彼女が飛び立ったと思われる衝撃だけが海上に残されている。


(くっ! もう!)


上を見上げるゼロ。ルインの姿はそこにあった。



「よう。渡す気になったか?」


打ち上げられたゼロを捕まえ、問いかけるルイン。触れられて改めて実感する。とても対抗できる相手では無いということを。だがそれでもエクスカリバーを失うということは、魔族に対抗する手段を失うということ。それだけは死んでもできない。



「断る」

「アタシに二度も口答えするなんてな。よっぽど死にたいらしい……破滅させてやるよ」



ルインは空中で体を捻り、ゼロの頭上からかかと落としを繰り出す。エクスカリバーで受け止めようとするゼロだったが、とても威力を殺すことはできず、上昇時よりも遥かに速い速度で落下していく。



「何度でも繰り返してやるよ。お前がそれを渡すまでな」



拳を握りしめるルイン。ゼロは激しく海上に叩きつけられ、身体中を打撲し、骨を粉々に砕く。ショック死しかねないその威力に屈し、沈んでいくゼロ。しかし気が付くとまたしても上空に打ち上げられていた。



「幻覚か!?」

「いや、現実だ」



ゼロの脇腹にルインの指が食い込む。


「かっ……!」


食い込ませた指で体の中を掻き回すルイン。ゼロは気絶しそうな激痛に襲われるも、エクスカリバーだけは離すまいと握りしめる。


「しぶといじゃねぇか」


ルインは食い込ませた指を下半身に向けて一気に下へと落とす。


「うぉぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


ゼロの体は脇から爪先にかけて真っ二つに裂け、泡を吹きながら落下していく。しかしそれでも聖剣は離さない。



「……むかつくぜ」



それからゼロは何度も何度もルインによっていたぶられ、何度も何度も生き死にを繰り返した。しかし何度繰り返そうとも、その手からエクスカリバーが離れることは無かった。


「いい加減にしろや。てめぇにその剣は必要ねぇ! てめぇが魔族と戦ってんのは知ってる、オルフェウスに捕らえられた連中を救いたいって事もな。だったらアタシが全部やってやる。てめぇは家に帰って震えて寝てな!」


海にぷかぷかと浮かぶゼロに向かって叫ぶルイン。


(こいつの体は何度でも再生できる。死にはしねぇが、精神までは修復できねぇ。そろそろ崩壊してもおかしくないはずだが……)


それでもゼロの眼差しは死んではいなかった。



「お前が救う? 冗談じゃない。俺はここに来るまでたくさんの犠牲を払ってきた。それをお前が救うだと? ふざけるな」



ゼロは握りしめたエクスカリバーをルインに向ける。


「魔族を滅ぼす前の肩慣らしだ。まずはお前を葬ってやる」


ルインの怒りは頂点に達した。


「調子に乗るなよガキ。アタシは神だ」


ルインからとてつもない殺気が放たれる。海は荒れ、波がたち、ゼロの体を大きく揺らす。エクスカリバーは効果を発揮しない。これは神の力などではなく、ルイン本人の生体エネルギーだからだ。



「殺して殺して殺してやるぜ」


音速を越えるルインの蹴りがゼロに向かって放たれる。その衝撃は足がゼロに届く前に訪れ、ゼロの体は遥か彼方へと吹き飛ばされる。


やがて陸が見えてきた。このまま陸にぶつかれば身体中バラバラになってしまう。


(くっ! 動け……!)


激しい空気抵抗の中、受け身をとろうとするゼロだったが、そのかい虚しくほとんどそのままの勢いで地面に叩きつけられた。エクスカリバーを握っていた右腕も完全に折れ、かろうじて体と繋がっている状態だ。当然剣を握る力も残されておらず、エクスカリバーも地面を転がっていく。


(く……そ……)


ゼロが薄れゆく意識の中で最後に見たのは、それを拾って立ち去るルインの姿だった。





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