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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
385/621

episode 385 「お前に任せた」

徐々に、本当に徐々にだが、魔獣はその体積をすり減らしていた。魔獣の攻撃手段は体の一部を弾丸にして飛ばすことだ。魔獣のいってもその体積は無限ではない。当然いつかは弾切れが訪れる。



(はたしてそれまで俺の身が持つかどうか……いや、なんとしてでも持たせるしかない)



ゼロは攻撃をこちらに集中させるため、攻撃の手を緩めずに敵の攻撃を避け続ける。無傷というわけにはいかない。致命傷は避けるが、体には赤い線が無数に刻まれていく。


「ロミー! こいつ小さくなってんぞ!?」

「うん。きっとゼロはこれを狙ってるんだ」



ゼロの意図を読み取ったロミーが攻撃の手を強める。


「ゼロ! 君のやりたいことはわかった! こっちからも攻撃する!」

「なっ……!」


ゼロは再びロミーを批判しようとするが、彼女の眼差しを見て言葉を飲み込む。


「……頼む」


ゼロの返事を聞いてロミーはにっこりと笑う。ピースサインを見せつけ、元気よく叫ぶ。



「もちのろん!!」



ロミーの重たい拳が魔獣にめり込む。先程まではほとんど効いていなかった攻撃も、僅かではあるがダメージを与えられているような気がする。


だがその攻撃によって攻撃の矛先もロミーに向いてくる。至近距離からの攻撃は正に光速で、避けるのは非常に困難だ。しかしロミーはその常人離れした反射神経によってそれを回避する。


「ひえー! どんな身体能力してやがるっ!」


レックスが悲鳴にも似た歓声を上げる。


「こいつ攻撃の瞬間、もぞもぞ動くの。だから避けるのは難しくないよ!」

「そう言ってもよ……」


そういうロミーだが、レックスにはなんのことだかさっぱりわからない。魔獣は常に身体中がうねっており、その攻撃の瞬間とやらはレックスには判断できない。


「ゼロ、お前わかるか?」

「いや、だから俺は避けきれない」


完全に攻撃が放たれてから避けているゼロにとって、ロミーのその感覚は信じがたいものだった。



「なんにせよロミー、お前は大丈夫なんだな?」

「うん、任せて」


ゼロはロミーに任せることにした。実際ゼロ自身かなり限界まで来ており、ロミーの手助けは非常にありがたかった。


「レックス! 君は洞窟の中のワンちゃんたちを!」


ロミーは洞窟の奥からの小さな気配も見逃しては居なかった。魔獣同士が助け合うかは不明だが、合流されては厄介だ。



「よ、よし!」



レックスはゼロとロミーへの攻撃を続ける魔獣の背後に回り、その後ろの洞窟へと足を踏み入れる。灯りがないので自分自身の感覚だけを頼りに、魔獣の位置を把握する。


「うじゃうじゃいやがる……」


先程の戦いで何匹かはマグマの底へと沈んでいったが、それでもまだかなりの数が洞窟の中には潜んでいた。だがレックスたちを警戒しているのか、なかなか姿を現さない。


(それならそれでいいぜ。俺の役目はこいつらを食い止めること。戦わなくていいならそれに越したことはないしな)


レックスは洞窟の入り口に仁王立ちする。



ロミーの助けもあり、魔獣の体積は明らかに減っていた。


(しかしロミー、こいつはいったい何者だ? 単なる兵士というわけではないだろう。この反射神経、おそらくアーノルトにすら肩を並べるだろう)


ゼロはロミーの力に脱帽する。


(しかしその答えはロミー本人すら覚えてはいない……)


ロミーの横顔を見ながら複雑な感情に襲われるゼロ。あれほど憎かった彼女の笑顔にも別の感情が芽生え始める。


(とにかく、余計なことはここを片付けてからだ)



ロミーの攻撃はかなりのダメージを魔獣の与え始めた。明らかに魔獣のようすも代わり、攻撃頻度もその威力も鋭さを増してきた。


「わ!」


さすがのロミーも後ろへ引く。


「あともう少しなのに……これじゃ近づけないよ!」


まったくもってその通りだった。ゼロ側もロミー側も魔獣の攻撃がすさまじく、反撃はおろか、近づくことすらできない。


(くっ! あと少し、あと一押しだというのに……!)


苦い顔をするゼロ。



一方子犬型の魔獣も、仲間を助けるべく洞窟の入り口へと走り始めた。驚いたレックスは急いで両手を広げるがその勢いに驚き、思わず後ろに飛び退いてしまう。



「ひっ!」


ドン!


すると背中に何かが当たる。


「え?」

「え?」

「え?」


声を合わせる三人。当たったのは例の魔獣だった。魔獣は抵抗することもできず、そのままマグマの中へと落ちていった。


何とも言えない空気が流れる。


「ま、まあ、やっつけた!」


レックスが手を上げる。


「う、うん、そうだね」


ロミーも無理やり笑顔を作る。


「……」


ゼロは無言で座り込んだ。



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