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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
384/621

episode 384 「友の在り方」

体の大きさは三メートルを越え、あの体当たりを受ければまず間違いなく死ぬ。巨体はトロいと相場が決まっているが、その魔獣のスピードはゼロたちを上回ってきた。



「そいつはさっきの子犬どもの五倍は強いぞ?」


マリンはクッキーをかじりながら呟く。


ゼロは魔獣を近づけさせまいと銃で乱射するが、魔獣は避けることすらしようとしない。その分厚い皮膚で弾は全て弾き飛ばされ、投げつけたナイフでも傷一つつかない。


「ゼロ、こいつヤバイよ!」


猛突進してくる魔獣を青ざめた顔で見つめるロミー。


「今度は逃げるんだよな!」


またしてもレックスは壁に手を付いている。


考え込むゼロ。しかしそんな悠長にしている余裕はなかった。魔獣はすぐ目の前まで迫っている。


(あの皮膚……溶岩にすら耐えうるかもしれない。だとしたら俺たちに勝ち目はない)


ゼロたちは火口を取り囲む足場に逃げ込む。あの魔獣の体ならこの足場まではやってこれないと考えたからだ。案の定、魔獣は洞窟を抜けたところで動きを止めた。


「よっしゃ! 今のうちに逃げ……」


レックスが壁を登ろうとした時だった。その彼の頭上三センチ程のところに何かが飛んでくる。それはあの魔獣の体の一部だった。


「ひぃ!」


壁にめり込むほどの威力で飛ばされたそれに驚き、壁から手を離すレックス。魔獣はそれを連続で飛ばしてきた。


銃で撃ち落とせないこともないが、如何せん数が多すぎる。自分だけならともかく、レックスとロミーに飛ばされたぶんまで撃ち落とすのは不可能に近かった。だが二人にあの攻撃を防ぐ手段は無い、ゼロがやらなければいずれは蜂の巣になってしまうだろう。


三人はバラバラになって逃げてしまった為、合流するのはなかなか困難だ。この状況を打開するには攻撃をゼロに集中させ、その隙にレックスとロミーを逃がすしかない。


ゼロは殺気をまといながらナイフ片手に魔獣へと突っ込んでいく。魔獣もゼロの殺気に反応し、攻撃をゼロに集中させていく。


「ゼロ! だめだ!」


何をしようとしているのか理解したレックス。ゼロの自殺行為を止めさせようと魔獣に向かって石を投げつけるが、魔獣はまったく意に介さない。魔獣から最も離れた位置に居るロミーは手を出すことすらできず、もどかしさで手足をばたつかせている。


「レックス! ロミーと合流しろ!」


ゼロが魔獣の攻撃を避けながら声を張り上げる。


「よっしゃ! 来い、ロミー!」

「おう!」


ゼロとしてはレックスがロミーと合流し、魔獣から距離をとってもらいたかったのだが、レックスは逆にロミーを呼び寄せ、ロミーもまたそれに賛同する。


「レックス! 逆だ! 逃げろ!」

「ちげぇ、逆じゃねぇ! 友達見捨てて逃げるわけ無いだろ!」


ゼロは歯を噛みしめる。


「友だからこそ逃げて欲しいんだ!」

「逃げるんなら一緒だ!」


レックスは一歩も譲らない。ロミーも躊躇なくこちらに向かってくる。



「強情なやつめ……」


怒りに震えるゼロだが、なぜか心の奥で喜びにうちひしがれている自分も居る。その矛盾に頭を悩ませながらも、それはゼロの力となってその身に宿る。


「ならばこいつを片付ける! お前を死なせはしない……勝負の報酬をまだ受け取ってないからな」


競争の敗者はレックス。すなわちレックスはゼロとロミーに食事をおごらなければならない。


「はあ、こいつに勝っても地獄だな!」


レックスは魔獣のがら空きの背中に重い拳を叩きつける。しかし魔獣はびくともせず、逆にレックスの拳から血が滲む。


「くっ! かてぇ!」

「なにやってんのさ!」


今度はロミーが走ってきた勢いのまま魔獣の背中に飛び蹴りを仕掛ける。僅かだが魔獣の体が傾く。


「効いてる! 効いてるよ!」


ロミーが歓喜の叫び声をあげる。


一方ゼロは魔獣の猛攻を全て受ける形となり、かなりの体力の消耗を余儀なくされた。一撃でも攻撃を受ければ、たちまちに狙い撃ちされてしまう恐怖とも戦いながら、攻撃を避け続ける。


(あと、少し……あと少しで!)


ゼロは何かを狙っていた。勝てる希望があると信じ、攻撃を避け続けた。自分のために、レイアのために、そして一緒に戦う友のために。




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