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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
379/621

episode 379 「仕返し」

ゼロは衛兵から銃と弾を受け取り、牢から出ていく。衛兵たちの隊長はゼロの行動に対して最後まで非難し、最後まで反対した。


「ふざけるな! 貴様一人に何ができる? うぬぼれるんじゃない!」


どうしても自分自身で娘の敵をうつと聞かない隊長。そんな隊長を他の衛兵たちが取り押さえる。


「隊長、我々では悔しいですがどうすることもできません。ここはあの男に任せるしか……」

「任せられるか! あの男がもし失敗して死ぬようなことがあれば手がかりが無くなるんだぞ! もう犯人を捕らえることが出来なくなるかもしれないじゃないか! 待て!」


必死に抵抗し、叫び声をあげる隊長を無視し、先を急ぐゼロ。


(悪いがお前に構っているほど余裕はない。時間的余裕も、戦闘的余裕もな。だが、必ず魔族は滅ぼす)


とは考えてみたものの、ゼロとて何か手がかりがあるわけでもない。


(帝国の連中の情報を奪うしかないか……だがあそこはヨハンに潰されたはず、ジャンヌもおそらく未だにヘルメスの元だろう。ガイア、ローズに関してはヨハンの件以来消息不明……)


ゼロが頼れる帝国の人間はことごとく居なくなっていた。


(ロミーが居るには居るが記憶がない。そして仮に記憶があったとしても何の期待ももてない。そもそも俺はあいつが嫌いだ)


ロミーという選択肢は早々に却下される。



(思えば俺と関わった帝国の人間は皆不幸なめにあっているな。こんな時、少しでも笑えたら気が紛れたろうに)


黒い感情がゼロの中で渦巻く。


(光が見えない。お前への道が続いていないみたいだ)


目の前が真っ暗になる。


(もしお前が既にこの世に居ないのだとしたら、もし二度と光が灯らないのだとしたら、俺は一体どうなってしまうのだろうな)


世界の終わり、彼にとってはそれと同義だった。レイアのいない世界なんて考えられなかった。



(もしそうなら、力の限り暴れて死ぬのも悪くないかもな)



悪しき場所へと沈んでいこうとするゼロを引き戻すかのように彼の肩に手が乗っかる。すぐさま反応し、その相手に向かって銃を構えるゼロ。だがその顔を確認してあわてて銃を下ろす。



「よ! 久しぶりだな!」

「レックス……! 目が覚めたのか!?」



そこにいたのは昏睡状態に陥っていたレックスだった。


「悪かったな、詳しい話は衛兵の連中から聞いたよ。まさかマスターが悪だったとはなー! おまけに記憶を消し去る加護とか、神様もえぐいことするよな!」


まるで他人事のように語るレックス。



「レックス、お前記憶は……」

「ん、ああ。それ俺の名前なんだな。衛兵の連中も頻りに呼んでたよ」


レックスの記憶は戻ってはいなかった。記憶がない。それがどれ程心細いか、どれ程恐ろしいか、ゼロにはそれが痛いほどわかっていた。だが目の前のレックスはそれを微塵も感じさせないほど堂々と振る舞っていた。



「済まない、俺と関わったばかりに……」


うなだれるゼロの肩をさらに叩くレックス。


「謝んなよ。悪いのはマスターなんだろ? それにそんな悪かないぜ? なあ?」

「おうとも!」


レックスが声をかけた方を向くゼロ。そこにいたのはあのロミーだった。


「何もかもが新鮮で逆に楽しいよ! 私はなんて名前なの?」


ロミーは相変わらず元気だった。その笑顔が少し癇に障ったが、そのイラつきもどこか心地よかった。



「ロミー、お前はロミー・チルッタだ」

「ロミーか! いいね!」



ロミーは手をゼロに差し出す。


「私は君に協力するよ。命狙っちゃったしさ、それになんだか君と居ると記憶を取り戻せそうな気もするしね」


にんまりと笑うロミー。ゼロがその差し出した手をいつまで経っても握ろうとしないので、もう片方の手で無理やりゼロの手を握らせるロミー。



「もちろん俺も行くぜ。それになんだかな、感じるんだ。たぶんこれが俺たちをやった魔族ってやつの気配なんだと思う」

「なんだと!」


レックスの言葉に激しく反応するゼロ。


「ああ、そうだ。いるぜ、奴ら」


顔をしかめるレックス。ロミーにもそれが感じ取れているようで、同じく嫌な顔をする。



「いこうよ! 仕返しに!」


ロミーは再び手を差し出す。だが今度は笑顔ではなく、悔しさに満ちた顔だった。ゼロはその手をとる。



「頼む、俺に力を貸してくれ」

「やり!」


ゼロがそういうとロミーは再び笑顔になる。なのでゼロはすぐにその手を離したのだった。




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