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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
377/621

episode 377 「決着、そして……」

二人の力はほぼ互角。相手を葬ることだけを考えた戦いは、もはや剣と剣のぶつかり合いではなかった。己が持てる全ての武器で相手に挑み、己が持てる全ての武器でそれを打ち返す。


三日三晩続いた戦いは、突如終わりを迎えた。


島の残骸のちりが風にのり、アテナの目に入った。ほんの一瞬の隙だった。だが今の二人にとってそれは大きな差となった。


アテナの右手を自慢の爪でえぐりとるレヴィ。めちゃくちゃな切り傷からおびただしい量の血が溢れ出す。



「あがっ!」



痛み、そこにまた新たな隙が生まれる。


左手に向けて爪を伸ばすレヴィ。アテナも浄化の力で必死に抵抗する。


相討ち。アテナは両手を失い、レヴィもその代償として魔獣化は完全に解け、攻撃を仕掛けた爪は粉々に砕け散る。



「はぁはぁ、どうやらもう限界のようだな。そこが俺たち魔族とお前たち人間との絶望的な実力差だ。神などともてはやされてはいるが、その力は所詮我らが母の絞りカス程度。その母の力を存分に引き継いだ俺に勝てる道理は無い!」



両手を失い、剣も握れなくなったアテナに向かって吐き捨てるレヴィ。彼自身もまた限界はとっくに通り越しており、体にはまったく力が入らなくなっていた。



「人間に限界など……ない! それが貴様ら魔族との絶対的な差だ!」



アテナは最後の力を振り絞り、浄化の力を解き放つ。彼女の体に押し込められていた力が一気に放出され、彼女を包んでいく。その神々しさは正に。



「神……か」



「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」




アテナはレヴィに向かって突撃していく。進むにつれてアテナの体はどんどん光と一体化していく。肉体は形を失い、魔を滅ぼすという意思へと変換されていく。



「アテナ、お前は強い。敵ながら感服する。生涯最後の相手としてこれ以上は無いだろう」



レヴィもまた、自分の中に眠る魔を全て解放する。体と自我を完全に失い、魔という総体と一体化する。



地図には載っていない、名前もない、いまでは形すらないその島で、光と魔が激突する。その衝撃はかつてミカエルによって組織本部が滅ぼされた時を遥かに上回っていた。島があった場所は完全に消え去り、海は荒れ、生き物たちも全て死滅していく。残されたのはかつて人だった神と魔族。両者とも瀕死に陥っていた。




「「終わらせてやる!!」」




もはや意地だけで立ち上がっていくふたりは同時に叫ぶ。二人の力が再びぶつかろうとしたその時、またしても同時に倒れる。世界の崩壊を予感させるような被害を残し、二人はそのまま海の中へと沈んでいった。


二千年にも渡る長き戦い、マリンとレヴィ二人の魔族が逝ったことは十闘神側からしたらとてつもない出来事だったが、それが霞むほどアテナが死んだことは彼らに深い悲しみを与えた。



「そんな、アテナちゃんが……」


十闘神モルガナはアテナを姉と慕っており、特に深く悲しんだ。その瞳には大粒の涙を溜め込み、顔は赤く腫れている。



「魔族を二人も、それもレヴィとメディアを葬ったか。お前のような働きは人類にとって確かな一歩となるだろう。安らかに眠れ……アテナ」


十闘神ミカエルはアテナに対して黙祷をささげる。



他の十闘神たちがそれぞれアテナへの想いを馳せていた時、ただ二人の神は激しい怒りに身を震わせていた。


「おい、ハデス。わかってんな?」

「ああ、ルイン。もはやアスラのやり方では遅すぎる」


二人の神が魔族に対して殺意をむき出しにする。


「人への被害を考え、複数人での戦闘を避けてきた結果がこれだ。あともう一人でもアテナへ援軍に向かっていればこうはならなかった」

「ああ、だがもうかんけぇねぇ! やるぞハデス! 二人であのクズどもをブッ殺す!」



十闘神ルインはその拳を握りしめる。わずか170程の肉体からほとばしるエネルギー。その熱気で足元の草花は消し炭とかす。


十闘神きっての肉体派の二人が魔族を滅ぼすべく、動き出した。



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