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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
376/621

episode 376 「人と魔族」

怒りによってその強さを変化させる力をもつ魔族、レヴィ。その姿はかつてないほどにまで激変していた。


体長は十メートルを越え、全身を覆う毛は鋼のように硬く、針のように鋭い。アテナによって消し飛ばされた肉体も完全に修復し、以前よりも遥かに強力な手足を手に入れていた。その先端には人程の大きさの爪が生えており、その爪をもってすれば鉄であろうとも引き裂けるだろう。



「いくら体を変化させたところで魔であることに変わりはない。ならば私の力で葬り去ってくれる」


アテナは剣を構える。エクスカリバーは未だに、死亡したメディアが握りしめておりアテナの力を遮るものは何もない。レヴィも力を解放した今の状態でわさわさわエクスカリバーに手を伸ばすこともないだろう。


(ならば私の勝利は揺るがない)


アテナの体が光輝く。魔を滅ぼす浄化の光だ。下級の魔ならこの状態のアテナを直視しただけで滅びるだろう。



アテナの剣が振り下ろされる。その衝撃だけでも今までのレヴィなら簡単に葬りされる威力だ。おまけに今回は浄化の力もプラスされている。


レヴィはその場から動かない。諦めてしまったのか、はたまた大きすぎる力の反動で身動きがとれないのか。否、力を蓄えていたのだ。


口を大きく開け、体内の魔を一気に吐き出すレヴィ。どす黒いオーラと共に大量の使い魔が吐き出される。それはアテナの光と衝突し、互いに消え去った。



「バカな……私の一撃と互角に渡り合っただと? この力は魔女が復活したときのための切り札……通用しない筈は」


魔に対して絶対的な適正を持つアテナ。その渾身の一撃が封じられた、そのショックは計り知れないものだった。


「切り札? 笑わせるなよ人間。俺にとっては呼吸に等しい」


レヴィは再び魔を吐き出す。万を越える使い魔がアテナに向かって一直線に飛んでいく。


「くっ!」


アテナの展開する光によって使い魔たちは彼女の体に触れることすらできずに消滅していく。しかし体は傷つかずとも心の方は大分深くえぐられてしまった。


(浄化の力が互角、いや押し負けた。あり得ない、あってはならない!)



彼女の動揺は、レヴィの進行を許すのには充分すぎるほどの隙だった。


レヴィの極太の腕がアテナに向かって突き出される。


(速い! だが私の力をすり抜けることなど……)


レヴィの拳がアテナに迫ってくる。その風圧でこの拳がどれ程の威力を持っているかは容易に想像がつく。


拳はアテナの浄化の光とまともにぶつかり合い、少しずつその体をすり減らしていく。だが、止まらない。



「食いしばれ、人間!」



人の大きさにまで縮んでしまったが、レヴィの拳は神へと届いた。アテナの頬を確実に捉え、確かな感触が拳を伝う。光の鎧を打ち砕かれ、血を吐き出しながら吹き飛ばされるアテナ。


「うっ!」


神として天空に降臨していた女性が地面を転がり回る。体全身泥だらけになり、体全身擦り傷だらけになる。


(私が、この私が魔族に……!)


体に刻まれる敗北感。擦り傷とは違い、癒えることは難しい。


だがそれでもアテナは直ぐに立ち上がり、剣を片手にレヴィに突進していく。



「貴様に、貴様らに負けるわけにはいかぬ!」

「悔しいか? 悲しいか? 怒りに満ちているな。だが俺の怒りはそれ以上だ!」



半分人型に戻ってしまったレヴィがそれを迎え撃つ。




そこから先はまさに人の踏みいる領域ではなかった。




互いに互いの信念をかけ、命をかけ、魂をかけて打ち合った。何度切り刻まれようとも、何度辛酸をなめされられようとも、二人は戦いをやめなかった。


魔族のために作られたこの土地が崩壊しても二人の戦いは終わらなかった。メディアを含め、魔族たちの死体は海の中へと飲み込まれていく。



「うらぁぁぁぁぁぁ!」

「でやぁぁぁぁぁぁ!」



何もなくなった島で二人の怒号だけが鳴り響く。どちらかが滅びるまで戦いは終わらないのだろう。これは人と魔族、二千年にもわたる因縁の戦いなのだから。






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